血塗られた交易の裏3 破壊可能の証明
葉月とリアムが駆けつけた時、既に事態は収まっていた。アトラの棍棒は地面に叩きつけられ、彼は座り込んでいた。周囲には鼻を突く異臭が立ち込め、この状況の異常さを物語る。
アトラが、悪魔を破壊したのだ。
恐れていた悪魔との再遭遇は、ついに起こった。慎重に旅を続けていた三人だが、遮蔽物の少ない平原で、彼らは地に伏せるしかなかった。だが、体の大きいアトラは、その身を隠しきれない。
悪魔はアトラに気づくと、一目散に逃げ出した。葉月とリアムは刹那の安堵を感じたが、アトラは違った。アトラは知っている。あの動きは、仲間に危険を知らせる動物の動きだと。
アトラは駆けた。大きな目をさらに大きく見開き悪魔を追いかけた。恐怖で思考は停止しかけていたが、本能の警鐘は、目の前の悪魔を「必ず止めなければならない」と告げ続けた。そして、棍棒を悪魔に叩きつけた。
破壊された悪魔から、見慣れぬ、黒く濁った液体が飛び散っていた。それが血液なのか、気持ちの悪い色と異臭が立ち込める。何もかも自分たちとは違う、吐き気を催す存在だと三人は改めて思った。
冷静さを取り戻した葉月は、悪魔が「破壊可能」なのだと認識を改めた。何をしても抗えぬ、絶対的な敵対存在だと考えていたからだ。
リアムは、この事態に驚愕していた。アトラのとった行動は自殺行為であり、「二度と戻らない」とまで思った。アトラの勇気と、悪魔を倒した純粋な胆力に心底尊敬の念を抱いた。
アトラは放心していた。自身も信じられない行動だった。棍棒に伝わる感触が脳裏から離れない。
悪魔は思った以上に柔らかかった。




