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神々の塩路  作者: Janpon
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神の贄とカルマ3 悪魔の呪いと境界線


葉月にとって、この旅は驚きの連続だった。自然の脅威と、それに抗い生きるための知恵。その全てが新鮮な発見であり、部屋の中の勉強で凝り固まった自分の観念が、塗り替えられていくのを実感していた。


竜は、野生動物の中でも脅威的な個体だ。そのことを一番知るのはリアムだった。彼は幼き頃より、畑に現れる竜の対処をしていたのだ。


竜は火を吹く。それは単純な捕食能力以上に、畑にとって致命的な脅威だった。畑の守護者たちにとって、竜は「眠らせて無力化させてから狩る獲物」である。故にリアムは、「眠りの術」をひっそりと使うことができた。本来、許可なき者が特殊な能力を習得するのは御法度だ。そもそも魔法などは契約をしなければ使えないはずだが、自力での習得は可能なのである。


このリアムの話を、葉月は興味深く聞いた。竜は武装した戦士が必死の思いで挑むものだと信じていたからだ。畑に竜が訪れるのも意外だが、農民が魔法を使えるのも驚きだった。強面のこの同世代が、これほど頼りになる男なのだと心底思った。


アトラは魔法を使えない。リアムの件もあり、葉月はアトラに教えてあげようとしたが、あっさり断られた。相変わらず何を考えているかわからぬ顔であったが、魔法に関してはハッキリと断った。


葉月とリアムは、アトラの棍棒を当初馬鹿にしていた。伝統的な出立としても、それはないだろうと。


旅を続けるうちに、アトラにとって棍棒は実に最適な装備であると評価を変えていった。替えが効き、メンテナンスフリーな棍棒は、旅において驚異のコストパフォーマンスだったのだ。


殴る、投げる、受ける、すり潰す、腰掛ける。実に様々な使い方がある。現に、浅い眠りの竜が火炎を吐いた際、それを防いだのは口の中に投げ込まれた棍棒であった。


アトラは、棍棒は血を出すことなく獲物を狩れるので、臭いで他の脅威を引きつけないことを葉月に語った。棍棒を枕に寝転がりながら。


歩き、夜には星を眺めて位置を確認し、地図へと書き込む。葉月たちの旅は遅々としながらも順調だった。将来、塩を運ぶルートとしても無理のない道程を引いていると、葉月は達成感を感じていた。


木々が減り、視界が開ける。そこには小さな沢があった。取り敢えずの目的地――やがて川となり、海へと通じる「小さな始まり」だ。


葉月は安堵した。森と山岳地帯を抜け、目的地に迷わず辿り着けた。頼りなく始まった旅が、着実に進んでいくことに感動を覚えたのだ。

振り返れば、故郷の高い山が遠くに見えた。


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