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神々の塩路  作者: Janpon
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生命の誓約2 志道


体中の怪我が驚異的な速度で回復したリアムの前には、怒りの咆哮を上げる魔王と、その隣に魔女がいた。

リアムは軽く息を吐き、ピッチフォークを構える。


魔王が怒りの魔法を放つと、リアムは炎のブレスを吐いた。串刺しにした悪魔を魔女にぶつけ牽制し、魔王が魔法を放つ前に雷の魔法をぶつける。よろけた魔王の頭を掴み、地面に叩きつけようとするが、魔女の魔法が邪魔をしてきた。


魔女が爆発の魔法放つと、リアムも同じ魔法で掻き消した。「魔女から仕留めるか」とピッチフォークを突き出すと、横から魔王が杖で牽制する。魔法の使い手二人を相手に不利と感じたが、まるで負ける気がしないほど、リアムは高まっていた。


気づけば、アトラは右へ左へと棍棒を振り抜いていた。周囲の悪魔は、武器を構えていようが関係ない。叩き潰されるか、吹き飛ばされるかのどちらかである。


アトラの傷は癒えない。満身創痍のまま、一心不乱に棍棒を振り回す。要塞の壁は叩き壊され、瓦礫だけが増えていった。「殲滅させたい」かつて覚えた、根源的な欲望が蘇ってきたのだ。


魔王は分が悪いと感じていた。老獪な悪魔は、勝利の基準を別の場所へと設定する。


攻撃の応酬が続く中、魔王が放った魔法はリアムではなく、魔女へと向けられた。その瞬間、魔女は消えた。その虚を、一瞬の隙を魔王は逃さなかった。リアムの胴に、槍のように鋭い杖を突き刺し魔法を放つ。ニヤリと笑う魔王の顔には、魔女を逃がした安堵と、勝利を確信した愉悦が混じっていた。


が、リアムはその杖を魔王の手の上から掴み、抜けないように固定した。魔王を逃さぬためだ。優越が絶望に変わった瞬間、リアムの手は魔王の頭を掴み、首から上を消滅させた。そしてアトラの名前を叫ぶと、倒れた。意識が薄くなっていく。アトラに後を任せたのだ。


魔女の姿は見えない。だがアトラはあの魔王の行動が魔女を逃すための献身的な行動であったと確信していた。まるで親から子への愛だ。あの目は集落でアトラの旅支度を用意した父親の目と同じ。

だから、おそらくリアムも気づいたのだろう。魔女はまだ生きていると。


「あの魔女を野放しにはできない。何より殲滅させたい」アトラは憎悪に駆られる。


その時、こんなところに子犬が都合よくいるわけもない。刹那の中で魔女が姿を変えたのだと一つの目で見据えた。子犬に棍棒を振り下ろそうと掲げた瞬間、無数の刃がアトラを突き刺した。


生き残りの悪魔たちが、力を振り絞って子犬に気を取られていたアトラに最後の攻撃を仕掛けたのだ。彼らにとって魔女は、必ず守らなくてはいけない存在なのだろう。アトラは悪魔を振り払うと、何事もなかったかのように子犬に棍棒を構えた。


子犬は逃げ出していた。アトラは追いかけようとして転んでしまう。悪魔の剣が、彼の足を切り落としていたのだ。アトラは気にもせず、魔女の痕跡を探り巨体を這って追いかけ始めた。


そして――アトラは這ったまま絶命した。



山頂の民族は、なだれ込むように要塞に突入した。もう結界はない。あの砦で三人は戦闘になり、あの火球は塔を破壊したのだろう。


おびただしい悪魔の死体と、腹を刺されて倒れているリアム。そして、足のないアトラの遺体。葉月の姿は、どこにも無かった。


民族は、三人の悲劇とは別に、込み上げてくる渇望があった。「地上は悪魔のものではない。我々のものだ」。力を奪う結界はもうないのだ。民族に、本来の残虐性が瞬く間に戻ってきたのである。

次がラストです。

読んでいただきありがとうございます。

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