力の封印(カース)5 アンチカース
神父の手から溢れたのは、自分たちと同じ色の血であった。
神父は優しそうな笑顔を浮かべた。それは、慈愛に満ちた親が子へと見せるような、温かい笑顔。
神父は、三人が強くなったこと、知恵をつけたこと、その全てが嬉しそうであった。そして、静かに口を開き
「こんなことで倒れてしまうとは情けない。」
「悪魔を見たんだな?…そうだ、私は元々『悪魔』だ。だが、今はもう悪魔ではない。この民族の神にこの身を捧げた『導き手』だ。古くからの民は、私が元悪魔であることを知っている。今ある塩の交易も、ツテのある悪魔と私が話をまとめたものだ」
「結界は、悪魔が地上を奪っていった技術の象徴だ。悪魔には悪魔の神の加護がある。それは、お前たちこの民族に神がいるのと同じように」
「お前たちが戦った悪魔は弱かったかもしれない。だが、悪魔は強い。少なくとも、お前たちをこんな風に封じてしまうぐらいにはな」
「お前たちは、もう一度、結界の中に入らなくてはならない」
「強くなれ」
神父は優しそうに、そう語った。
その翌日。神父は民族の主だった者たちと話し合いを重ねた。三人が見つけた岩塩地帯は僅かではあるが、今後この地の生命線となる。そこまでの道を運搬可能なように開拓すること。結界の境界線である滝までの道を整備すること。そして、準備が整い次第、三人は再び塩を求めて結界の中に再挑戦すること。
このような話がまとめられ、計画は民族全体のものとなったのだ。
訓練が始まった。結界での体験は3人に更なる強さを必要と感じさせたのだ。道の整備まではしばらく時間がかかる。出発までに少しでも結界に抵抗できるようになっておきたかった。
リアムは、畑の守護者として竜の炎を見てきた。「竜が吐けるものを自分が吐けない理由はない」と、リアムは口から炎を吐いた。アトラは棍棒でそれを振り払う。
その刹那、二撃目の棍棒がリアムを襲う。リアムは肩で受け、ダメージを最小限に抑えた。その直後、彼は「吐息」のような息を吐いた。アトラはそれを吸い込み、思わず意識が飛びそうになった。
リアムは、口の中に痺れ薬を仕込んで息を吐いたのだ。
「眠りの術」である。搦手を使い、有利に戦う。それは、彼が戦士として何を大事にしているのかをよく表していた。かたやアトラは、自分自身と自分の得意とすることを信じ抜くことにした。
この民族で、彼ら三人に敵う戦士は、もはや誰もいなかった。
葉月は、ひと睨みして竜の息の根を止めた。相手に「殺気」を直接送り込んだのだ。そして、今まさに炎を吐こうとする竜を気絶させた。
目を覚ました竜が咆哮を上げて葉月に迫る。鈍い音と共に、竜は爆ぜた。
葉月は古い書物を読み漁り、究極とも言える魔法を見つけていた。これまでの魔法は、その究極の魔法を体得するための「回り道」で覚えたに過ぎない。
これならば、もしかして…
結界、それをどう攻略するべきか。
葉月はある可能性を掴んだ。
そして、一人その決意を固め、胸に押し込んだ。
読んでいただき、ありがとうございます♪




