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ブラッドカーストファンタジア  作者: 十三番目
第二章 飼い主の実力

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第四十九滴 神算鬼謀


「やはり、阿留多伎(あるたき)殿の人気は凄いでござるな」

 

珠羅(しゅら)ちゃんは可愛いからね」


「かわいい……?」


 どこか呆然とした顔の千莉(せんり)が、しみじみと呟く。当然の如く返事をした天璃(あめり)に、千莉は益々ぽかんとした顔になると、口の中で可愛いという言葉を反芻(はんすう)していた。


「あたしからすれば、御門(みかど)さんも負けてないと思うけど」


 音夢(ねむ)の言葉に、兎々(とと)が大きく頷いている。

 思えば、天璃が兎々と知り合ったきっかけは、白うさぎのような外見を兎々が気に入ったからだった。


「拙者も、初めて御門殿を見た時は驚いたでござる」


「見た目だけなら、猛獣と勘違いされてもおかしくないしな」


 先祖返りには、珍しい色合いを持つ者も多い。しかし、天璃のそれはアルビノという体質によるものだ。

 細い指が、雪のような髪に触れる。天璃の様子に気づいた音夢は、「色もそうだけど──」と口にしながら、記憶を思い起こすように眼鏡の縁を押し上げた。


「強い猛獣ほど血が濃い影響で、外見も引っ張られるんだってさ。昔話に出てくる傾国の妖怪とか……あとは、神話に出てくる神様なんかが先祖にいると、とんでもなく綺麗な容姿になるって爺ちゃんが言ってた」


 先祖返りの強さには、血の濃さも関係しているらしい。別棟の地下で目にした“ブラッドカースト”という文字が、じわりと脳裏を侵食してくる。


「そうは言っても、御門さんは雰囲気が猛獣って感じじゃなかったし、制服が獲物用だったからすぐに見分けはついたんだけどね」


「私って、そんなに弱そうに見える?」


「弱そうっていうか……儚いって感じ? ま、性格は儚いどころか、その真逆だけどな」


 雪のように溶けやすそうな姿をしていても、内側には鋭利な牙を潜ませている。揶揄いをこめて笑った音夢に、天璃も小さく笑みを返した。


「お帰り、みっちゃん。どうだった?」


 不意に、何かに気づいた様子の天璃が足を止めた。

 廊下の陰からひょっこり腕を出したみっちゃんは、手にぎっちりとコインを握っている。


「ありがとう、みっちゃん。おかげで何とかなりそうだよ」


 その場に屈んだ天璃が、嬉しそうに手を握った。照れくさそうに手のひらを掻いたみっちゃんは、ジェスチャーで何かを伝えようとしている。


「そっか。やっぱり、そうなるよね」


「なんか問題でもあったの?」


 含みのある態度の天璃に、音夢が疑問を投げかける。立ち上がった天璃が、三人の方に視線を向けた。


「宝探しの開始前に、百目鬼(どうめき)先生が言っていたルールを覚えてる?」


「あー、なんだっけ。分かれ道のどっちかが正解で、どっちかが外れ。スタート地点は北口で、ゴールは反対の南口……ってことくらいかな」


「えっと、いつゴールするかは自由で……ゴール付近に、仕掛けはないって……」


 さっぱり覚えていませんという顔の千莉をよそに、音夢と兎々が記憶を引っ張り出していく。兎々の話が終わったところで、天璃はそれだと言うように人差し指を立てた。


「時間内であれば、ゴールのタイミングは自由。しかも、ゴールの近くに仕掛けはされていない。違和感があったの。百目鬼先生は、どうしてわざわざそんなルールを説明したのかなって」


「言われてみれば……」


 初めから、この競技に時間制限があることは分かっていた。ゴール付近の事情についても、あえて説明するようなことではなかったはずだ。


「この競技の勝利条件は、ゴールに到達したチームの中で、最もコインの所有数が多いこと。にも関わらず、別棟内にあるコインの総数は明かされていない」


 段々と仕組みに気づき始めたのだろう。不安そうな兎々の隣では、険しい表情の音夢が眼鏡を弄っている。


「この競技で勝つためには、一つのチームにコインを集めるしかない。そして、二組や三組の中に同じような考えの人がいた場合、自ずとどこかのチームがコインを多く所持することになる」


「かと言って、どのチームが何枚コインを所持しているかも分からない状況で、安易にゴールすることはできない……ってわけか」


 眼鏡から手を離した音夢が、眉間の皺を増やしていく。


「しかも、別棟内が迷路になっていることで、どこかで集まるという手段は取れなくなってしまった。コインの数を予測しようにも、それさえ難しい状況になってるはず」


 もし他のクラスに、天璃と同じように頭の切れる者がいたとすれば、この状況に焦りを感じているだろう。

 そして同時に、唯一の打開策に思い至ったはずだ。


「だから、百目鬼先生はこう言ったの。──ゴールの近くに、仕掛けはしていないって」


 淡々と続けた天璃に、音夢がハッと息を呑む。


「まさか……」


「ゴール付近で待ち伏せして、後から来たチームのコインを奪う。この競技で()()()勝つためには、この方法しかない」


 

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