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ブラッドカーストファンタジア  作者: 十三番目
第二章 飼い主の実力

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第四十八滴 乙女心


 先ほどの分岐点で左の道を進み直した天璃(あめり)たちは、現在とある一室にいた。


 どうやら、正解の道は上下を問わず繋がっているようだ。仕掛けこそなかったものの、ふと窓の外を覗いた天璃は、自分たちがいつの間にか二階にいることに気づいた。


 宝であるコインを探しながら、これからどうするべきか頭を働かせる。

 別棟内にあるコインの総数。他のチームの現在位置。残り時間とゴールしたかの有無。


 初めは宝探しに奔走していた者たちも、そろそろ気づく頃だろう。たとえ宝を集め、順当に迷宮を抜けられようと、それだけで勝つことは不可能なのだと。


 何故なら、この競技は()()()()()()なのだから──。




 ◆ ◆ ◇ ◇




「死ぬーーー! あっちに行ったら死ぬでござるーーー!」


千莉(せんり)、それブーメランだからな。てか、縁起でもないこと言うなよ」


 癇癪を起こす千莉を、音夢(ねむ)が半目で睨む。あわあわした様子の兎々(とと)は、心配そうに千莉の方を窺っていた。


「多数決なんだから、仕方ないだろ。そろそろ諦めろ」


「ううう〜」


 うめき声を漏らしながらも、決め事を守らなければという意思は残っていたのだろう。抵抗を止めた千莉は、天璃たちの後を萎びた大根のような顔でついてくる。


 宝探しに迷路が追加されたのは驚いたが、結果的に良かったのかもしれない。千莉の能力があれば、他のチームよりも優位に立てる。


 部屋で見つけたコインを制服のポケットにしまうと、天璃は千莉を探知機代わりに、正解の道だけを進んでいった。



 何度目かの分岐を通り抜けた天璃たちは、ふと聞こえた声に足を止めた。


 千莉の能力が発動して以降、天璃たちは最初の遅れを取り戻す勢いで進んでいた。しかし、それは同時に、別のチームに追いつく可能性があることを意味している。


 前方の部屋から出てきた四人組は、どうやら同じ一組の生徒のようだった。天璃たちに気づくと、生徒たちは顔を見合わせ、小声で何かを相談している。


「なあ、どうする?」


 衝突を予想してか、音夢が警戒を露わに囁いた。

 天璃は生徒たちを観察しながら、相手の出方をじっと待っている。


「おーい、そちらの四人組ー。聞こえますかー?」


 突然、相手チームの一人が、天璃たちに向けて手を振ってきた。


「こちらに敵意はありません。ここは穏便に話し合いませんかー?」


「うちらは何もしないから、能力とか使うの止めてよね」


 棒読み気味に話す生徒の隣では、腕組みをした生徒が口をへの字に曲げている。


「いったい、どういうつもり?」


 訳が分からず、不信感が募っていく。思わず前に出ようとした音夢を、天璃がそっと手で制した。


「この辺に、もう宝は残ってないわよ」


「自分の能力は、取り込んだ物質が近くにあるか探すことができるもんでしてー。この情報は確かですよー」


 相手のチームが距離を詰めてきたことで、自然と向かい合う形になる。不機嫌そうな生徒は、腕組みを解くと、天璃の方へ拳を突き出してきた。


「これ。持っていって」


 ぶっきらぼうに差し出された手には、何枚かのコインが握られている。


「いいの?」


「あんただって分かってるんでしょ。この競技は、クラスで協力し合わなきゃ勝てないって」


 天璃の問いかけに、生徒の眉間の皺が増した。

 早く受け取れとばかりに、拳が押しつけられる。


「どうして協力する気になったの?」


「どうだっていいでしょ。誰にだって、知られたくないことの一つや二つあるもんよ」


「自分らも、勝てるもんなら勝ちたいですしねー。一組はだんまりだなんのと馬鹿にされて、不愉快ではありましたしー」


 不機嫌そうな生徒の隣で、棒読みの生徒が愚痴をこぼす。その後ろから、残りの二人が顔を覗かせた。


「私、本当は諦めてた。阿留多伎(あるたき)さんは学園の行事なんて興味がなさそうだったし、どうせ今回も勝てないんだろうなって……」


「分かるわ〜。いないだけで、かなりの損失だもんね」


 大人しそうな生徒に、ギャルっぽい生徒が相槌を打つ。意外な組み合わせだが、案外仲は良さそうだ。


「でもさ、珠羅(しゅら)様って最強格って言われるくらい強いのに、他の猛獣ほど態度が冷たくないんだよね。それでいてあの美貌でしょ? ぶっちゃけ、ファンクラブ入ろうか悩んでた時期もあったり」


「あの容姿は、同じ女から見てもドキッとしますからなー」


「分かる。超メロい」


 盛り上がる会話を尻目に、音夢が馬鹿らしいとばかりにため息をつく。千莉は「めろ……?」と呟きながら、兎々と一緒に首を傾げていた。


「とっ、とにかく! あんたのことは気に入らないけど、珠羅様が動いたのはあんたのためでもあるんだから、その……勝ちなさいよ!」

 

「やーい。ツンデレだー」


「うっさいわね!」


 真っ赤になった生徒が、早く行けとでも言うように天璃たちを睨む。感謝を口にした天璃に、生徒はふんと鼻を鳴らした。




 ◆ ◇ ◇ ◇




【 おまけ 】




「……どうせ無理だって分かってても、もしかしたらって思っちゃうのは仕方ないじゃない。諦めたくても、そんな簡単に割り切れないのよ……!」


「まあまあ。今日の夜は、とことん付き合いまっせー」


「私たちがいるからね……」


「ジュースで乾杯しよ〜」


 

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