表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラッドカーストファンタジア  作者: 十三番目
第二章 飼い主の実力

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/50

第四十六滴 迷宮


御門(みかど)さん。少しお時間よろしいかしら」


 別棟の入口付近に到着した天璃(あめり)は、百目鬼(どうめき)に声をかけられ、向き合うように足を止めた。傍らでは瞳を揺らした兎々(とと)が、不安げな表情で天璃を見ている。


「予行練習の際に、怪我をされたそうですね。その後の経過はいかがかしら?」


神領(しんりょう)先生のおかげで、すでに完治してます。競技に出ても問題ないそうです」


「それを聞いて安心しました。床が崩れるなんて、さぞ驚いたことでしょう」


 穏やかな雰囲気と柔和な物腰。百目鬼に対する二組の生徒の態度からも、慕われているのが伝わってくる教師だった。


「別棟は地下室の上に建てられていて、中には骨董品が保管されています。珍しい品や壁画も残されているようですが、何か見かけたりしませんでしたか?」


「いえ、それらしい物はなにも」


「そうですか。何にせよ、御門さんが無事で良かったです」


 微笑んだ百目鬼が、「時間ですね」と呟いた。

 百目鬼の視線を背中に受けながら、天璃は別棟の扉を開くと、兎々と共に足を踏み入れた。




 ◆ ◆ ◇ ◇




「お、きたきた」


「御門殿、有栖川(ありすがわ)殿。今日はよろしく頼むでござるよ!」


 先に着いていた音夢(ねむ)千莉(せんり)が、天璃たちに気づき話しかけてくる。後から入ってきた百目鬼は、参加者が集まっているか確認しているようだった。

 

「皆さんお揃いのようですね。予行練習でルールはご存知でしょうから、追加のルールについて説明いたします」


 辺りに緊張した空気が漂う。本番直前まで分からない追加ルールの内容に、誰もが耳を傾けていた。


「今回はとある猛獣の力を借りて、別棟の中を迷路にしていただきました。要所ごとに通路が分かれており、片方の道は安全に次の場所へ進めます。ただし、もう片方の道にはトラップが仕掛けられており、正解の道よりも時間がかかる仕様になっています」


 ただの宝探しと思いきや、別棟を迷宮にしてしまったらしい。もし不正解の道を選び続ければ、タイムリミットにより敗北する可能性も出てくるだろう。


「正解の道は、前もって決められています。どのように選ぶかは、獲物の皆さん次第です。こちらは北口ですが、私は南口を出た先のゴールで待っています。時間内であれば、いつゴールするかは自由です。ゴール付近に仕掛けはありませんので、安心してくださいね」


 不安を滲ませる生徒たちとは違い、天璃の表情は冷静そのものだ。

 説明を終えた百目鬼が、開始の合図を口にする。いち早く宝を探すため、他のチームは左右に分かれると、小走りで通路を進んでいった。


「なあ、どっちにする?」


「うーん。麿(まろ)さんは、どっちがいいと思う?」


「拙者でござるか!?」


 急に話を振られ、千莉が素っ頓狂な声をあげる。


「最初は運みたいなものだし、誰が決めてもいいのかなって。そこから先の分岐については、多数決で決めていくのはどうかな?」


「確かに、多数決なら妥当か」


「わたしも、それで良いと思う……!」


 音夢と兎々が同意したことで、千莉もそれならと頷く。

 どこかソワソワした様子の千莉は、少し悩んだ後に左側を指差した。


「拙者は、左がいいと思うでござる」


「決まりだな」


 四人で左側の通路を進んでいくと、すぐさま分岐した場所に行き当たった。


「ここはただの一本道でござったような……」


 以前の下見を思い出し、千莉が不思議そうに呟く。


「さっそくかよ」


「どっちかが正解、ってことだよね……」


 不安げな兎々が、視線を彷徨わせた。沈黙する天璃を、横目で音夢が覗き見る。

 

「……これはおそらく、右でござるな!」


 突然、千莉が確信めいた様子で右の通路を差した。早く進もうと声をかける千莉の姿に、天璃たちが視線を重ね合わせる。


「反対意見はない?」


「様子見ってことで、とりあえず右でいいかな」


 コクコクと頷く兎々に微笑むと、天璃たちは千莉に続いて右側の通路を進んでいった。

 ふと上を向くと、天井の隅にカメラのような物が光っているのが見えた。天璃の視線を辿った兎々が、ハッとした顔で口を開く。


「おっ、屋内の競技も観戦できるように……カメラが設置してあるんだよ」


「そーそー。外のモニターに繋がってるんだよな。そんで、横にある数字は残り時間になってる」


 教師や猛獣たちは、別棟の中に入ることができない。そのため、所々にカメラを設置し、外からでも観戦できるようにしているのだろう。

 カメラ横の数字は徐々に減っており、残り時間は四十分ほどになっていた。


「特に仕掛けらしきものはないみたいだな」


「拙者の見立ては、正しかったでござる!」


 訝しむ音夢の隣では、千莉が自信満々に胸を張っている。

 そのまま道なりに進んでいると、左手側に開けたスペースが見えた。壁際には扉があり、正面には通路が続いている。


「ここって、スタート地点だよね」


 見覚えのある光景に、天璃が目を瞬く。

 左側の通路に進んだはずが、右側から戻ってきてしまったようだ。


 状況に気づいた音夢が、ジト目で千莉を見つめた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ