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帰宅 2

シュウを連れ戻す考えは至ってシンプルだった。

残高は少し惜しいが、交差点側の駅から順に家側の駅で降りてシュウを探す、というものだ。

電車内で、ナオヤとコースケは少し打ち合わせをしていた。


「二人で一緒になって探すか、手分けして探すか、どうする?」

「手分けしたほうが効率よさそうだけど、なんか怖いなぁ……一応スマホも持ってるけどさ」


ナオヤは少し考えた。


「まあ、大丈夫だろ。一応俺らは特殊能力があるわけだし。俺はすり抜け、コースケは人の心読めるんだろ?」

「ま、まあそうだけど……」

「よし決まり、なんとかなるって」


念の為交差点付近の駅に降りた二人はそこから手分けして随時連絡を取りながら探すことにした。


「じゃあまたな」

「おう……」


ナオヤは走ってシュウを探しに行こうとするも、あまりに無謀すぎると今になって気づいた。

さっきまでの勢いは完全に失せ、コースケと別れてからすぐにその足を止めた。


「あれ、これ普通に無理じゃね?」


いざ探すとなると、目の前にただ広がる建物や道を見るだけでも気が遠くなってくる。

交差点付近だけでも探すのに骨が折れそうだ。


「おーいコースケー」


そう言いながらナオヤは戻ってきた。


「あれ、どうしたんだよ」

「ごめんやっぱ無理だわと思って」

「やっぱりな……実は別れてからすぐナオヤの声聞こえてきてたから結局ダメなのかなって」


ナオヤはそのコースケの言葉を聞いて一つ閃いた。


(別れた後でも俺の思ってることが分かった……離れていてもコースケの力は通用するってことか?それなら——)


「「シュウの心の声が聞こえる方へ行けばいい」」


コースケは思わず拳で手を叩いた。

ナオヤもそのコースケの能力の精度の高さに肝を抜かれた。


「すげえよナオヤ!それは名案だ!……と言っても具体的な使い方分かんないしどれぐらい離れてても大丈夫かとかもわかんないけど」

「ものは試し、当たって砕けろって言うだろ。コースケだけが頼りなんだよ」

「うぅ……やってみるか」


少し照れながらも気持ちを切り替えたコースケは目を閉じて頭と耳に集中する。

薬を打たれてからというもの、常に聞こえてくる人々の心の声。

それは初めは面白くても次第に辛いものとなってくる。

静寂のない世界、そんなところにいきなり放り込まれたコースケだったが、悲観することはなかった。

目を閉じて深呼吸をすると、ありとあらゆる感覚や神経が研ぎ澄まされていくのを感じる。

そしてその能力も感度を徐々に上げていく。

雑音程度に聞こえていた人々の心の声が少しずつ大きくなって、まるですぐそこで会話しているぐらいの大きさに聞こえてくる。

それが夜も人だらけで賑わう交差点付近では、コースケにとってはもはや大音量の騒音でしかなかった。


『は?コイツ顔はあんま可愛くねえな。まあ目つぶってりゃ関係ねえか』

『コイツ金は持ってるんだろうけどブサイク……上手いこと利用して帰ろ』

『あーいい女の子いないかなぁ。やりたいなぁ』

『あっ!イケメンいる!男なんてチョロいんだから取り入ろーっと』

『ウザ、しねよカスが』

『っしゃあ!やっとお目当てのキャラ出たぁー!』


「あ……あ、うぅ……」


聞きたくもない、汚い思いや不快な声が積み上がるように大音量で聞こえてくる。

でもシュウを早く探すためだと、コースケは諦めない。


(落ち着け、シュウの声をイメージしろ。それ以外の声は聞くな)


そう自分に言い聞かせながら、再び集中する。

次第にさっきまでの嫌な声は聞こえなくなっていき、一つだけか細い声が聞こえてくる。

この声は男の声のようだが、音がかなり小さくあまりよく聞き取れない。


「ん?何だ、誰だ……」

「頑張れ、コースケ」


その男の声だけを聞き取ろうと全神経を耳に集中させたコースケはついにその声を聞き取ることに成功した。


『あぁ……ここどこ……?帰りたい……何でこんなことに?リクは?コースケ……ナオヤは大丈夫なのかな……?』


声質、内容、全てがシュウと一致した。


「よし、やった……シュウを見つけたよ、ナオヤ」

「おぉ!上手くいったか!」


コースケは目を開くと、真っ直ぐに指を突き指す。


「こっちの方向に、シュウがいる」

「よっしゃ、行こうか」


二人はやっと掴んだ手がかりをもとに、シュウを探しに行く。

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