集合 3
部屋の空気が少しざわつく。
「えっ、どういうことなんですか?」
花一はシュウ、リク、コースケ、ナオヤの顔を順に見た後、短く息を漏らした。
「政府もバカではないということです。用心棒とでも言いましょうか、あちら側もかなり強力な能力者を多数揃えています。こちらが仕掛ければ間違いなく衝突は避けられないでしょう」
トキマサは眉間にシワを寄せた。
「その能力者についての詳細はないのかね?」
花一は仕事用の鞄からファイルをいくつか取り出すと、紙をめくりながら説明を始めた。
「まず能力者には3つのタイプがあります。こちらの4人方は博士の頭文字を取ってTタイプと言い、脳波、思考と能力の結びつきが強いという特徴があります。またレイさんのような政府が開発した薬によるものは政府の頭文字からSタイプと呼び、感情と能力が強く結びつきがありますが、これには適合率といった個人差もかなり含まれるとのこと。そして最後はナチュラル、生まれつき能力を持っている人を指します」
「「「「「え?」」」」」
トキマサも含めて、ピッタリとそのタイミングが重なった。
「ど、どういうことなんだ、生まれつき能力を持っている、だと?」
「ええ。これはやはり自然の力なのでしょうか、薬で得た力とは比べものにならないパワーを持っています。力の種類に差はあれど、最低限大型のビルを簡単に破壊することが可能なぐらいにはその差は桁違いです」
実際にそんなことがあり得るのだろうか。
科学を突き詰めてきたトキマサにとっては理解しがたい話だったが、いくら考えたところで今重要なのはそこではなかった。
「話を戻しますが、政府は特別に4人の能力者を厳選し、これを4強と呼んでいます」
花一はそう言ってファイルから取り出した4枚の紙を全員に見せた。
その紙は実験施設か何かのデータだろうか。
左上側に顔写真と、右側には大まかなプロフィールやグラフ、下には詳細がズラリと書かれている。
それを見せた後、簡易的にまとめた紙を全員の見えるところにそっと置いた。
――久賀真希斗
・2003/6/21,male
・tipe:natural ability:psychokinesis rank:s (1)
――豊川由貴
・2009/8/19,female
・tipe:natural ability:air control rank:s (2)
――郷悠河
・1997/5/9,male
・tipe:T ability:super speed,electricity rank:s (3)
――半田善美
・2001/9/13,female
・tipe:S ability:temperature control rank:s (4)
「英語分からねぇ……」
シュウがボソッと呟いた。
トキマサは指をさして花一に括弧内の数字の意味を尋ねた。
どうやら括弧内の数字は順位を表しているらしく、まさに政府の能力者を強い順に4人引き抜いているということを意味している。
「特にナンバーワンのマキトさんは笑ってしまうぐらいの化け物です。こちらも入念な準備が必要かと」
トキマサは頭をボリボリと掻いた後、椅子からゆっくりと立ち上がった。
「製造期間と出荷の日程を教えてくれないか。それまでにウイルスを根絶やしにする」
「予定では3週間後に製造が終了し、その2日後には航空機経由で各地方へと運ばれる予定です。いますぐに完成はしませんが、政府はテストや実践を繰り返し、それを経過観察として世に放つので、今もなお感染を繰り返し被害は広がっていると思っていたほうがよろしいかと」
タイムリミットは約3週間と2日。
それを過ぎてしまえば、この国は終わる。
「大丈夫なのかな、俺たち」
「ちょっと……実感が湧かないっていうか」
「何言ってんだ、もともとそういう話だっただろ。ここにきて急に弱気になってんじゃねえよ」
シュウとリクの弱音にナオヤが苛立ちを抑えきれない様子をコースケはじっと見つめる。
「俺だって怖くない訳じゃない。でも俺らがやらないと……」
「分かってんだよ、リーダーぶってカッコつけてんじゃねえよ」
「いいよな、攻撃全部すり抜けるんだし怖くねえよなぁ」
コースケの堪忍袋の緒がブチンと切れた。
「黙れ」
それでも3人の勢いはなかなか収まらない。
コースケは目を大きく見開き、3人の頭の中に入っていった。
(それ以上喧嘩するなら神経を焼き切る)
少々やり過ぎたのは否めないが、これには3人も一気に大人しくなった。
「あのね、俺たちはチームでしょう?ここで仲間割れしてバラバラになったら元も子もないよ?」
「「「ごめんなさい」」」
コースケはため息を大袈裟に吐いた。
(俺だって怖いに決まってるだろ……冗談抜きで死ぬかもしれないってのに……!)
3人は歯を食いしばって黙り込むコースケを見て、言葉を失った。
そのコースケの強く握られた手が小刻みに震えているのを見ると、さっきまでの自分らがバカバカしくてならなかった。
「ホントにごめん。気をつけるよ」
「コースケの言う通り俺らはチームなんだから、しょうもないことで喧嘩するのは確かに良くなかった。反省するよ」
「終わったか?」
トキマサがつまらなそうな顔でぼーっと見つめているのに気が付かなかった。
「ひとまず、次の実証テストまでにはまだ余裕があります。なるべく早く出回っているウイルスと感染者を排除するのを優先しましょう」
「よし、そうとなれば話は早い。とりあえず今日は帰ってよく寝ることだ。これから忙しくなるぞ、死なないように」
今となっては笑えないジョークだが、トキマサもそれぐらいしか言うことができなかった。
4人は各自家に帰ると、家族との時間がいかにかけがえの無い素晴らしいものかを噛み締めながら、今日の夜を過ごしたのだった。




