帰宅 1
ナオヤはシュウ、リク、コースケのバッグをどうするか迷い始めた。
というのも、まず荷物が多すぎてナオヤが疲れ切ってしまうということ。
あと、家に行っても誰もいなければ荷物を外に置きっぱなしにすることになるので、大事を取って全てのバッグをナオヤの家に持ち帰ることにした。
ここからまた外に出るのも疲れるし、ナオヤは学校に行くときにまた頑張ってバッグを全部持っていけば学校で直接渡せるのではないかと考えたりもした。
「いや、でも待てよ。あいつらちゃんと家に帰れたのか?俺は優しいアキオさんだったから難なく帰れたけど、他のは物騒な奴らなんだろう?そもそもあいつらが生きてる保証あるのか?一応優しいアキオさんと言えど犯罪は犯罪だったわけだし?」
もしもの不安がナオヤの脳裏をよぎる。
「そんなまさかな……」
居ても立ってもいられなくなったナオヤはバッグを置いてひとまずシュウ、リク、コースケの安否確認を優先することにした。
ナオヤは走ってそれぞれの家に確認に行った。
「シュウ帰ってきてますか?」
「それがなかなか帰ってこなくてね……メールも既読つかなくて……」
「……」
「リク帰ってきてますか?」
「メールの返事は来たんだけど、まだ帰ってきてないの。ホントにもう……」
「……」
「コースケ帰ってきてますか?」
「ついさっき帰ってきたわ。すごく心配したけど特に問題もなさそうだったしひと安心ってとこかな」
「ほんとですか!ちょっと、話してもいいですか?」
「もちろん。コースケ、ナオヤくん呼んでるよー」
コースケが奥から飛び出してきた。
「ああナオヤぁ、無事だったか……良かったぁ本当に」
「なあ、シュウとリク知らない?コースケん家来る前に寄ったんだけどまだ帰ってないって」
「え、マジかよぉ……まだあの部屋に閉じ込められてるとか?」
やはり皆あの地下室に連れ込まれていたようだと、ナオヤは確信した。
そこで変な薬を打たれたことも一致した。
(体が物をすり抜けるようになったことは……まだ言わなくていいか)
「えマジ?!」
「何が?」
「体が物すり抜けるようになったって?」
「……?!」
コースケもナオヤも互いに開いた口が塞がらない。
「コースケ、それはお前も変な薬打たれてそうなったのか?」
「お、おう……ナオヤこそ薬のせいなのかよ?」
「そうだけど……」
ということはシュウとリクも薬を打たれている可能性が高く、それにより特殊な力を持っているかもしれないということだ。
そこにコースケの母の声が聞こえてくる。
「ねえちょっとコースケ?このテレビ映ってるのシュウくんじゃない?」
「「え?」」
コースケとナオヤはへばり付くようにテレビをじっと見る。
今日の昼過ぎ、大きな交差点の中央辺りに立ち尽くす、うちと同じ制服を来た男子が立っている。
制服はボロボロで、靴を履いていなかった。
今はもう夕方で日も落ちてきているが、確かに昼過ぎのニュースのあの映像はシュウ以外の誰でもなかった。
「良かったぁ……生きてたぁ……」
「荷物もなしにあそこから家帰るのは結構な距離だぞ。そりゃまだ帰れてないわけだ」
シュウの定期がバッグに入っていたことから歩きで帰っているとすぐに分かったナオヤはシュウにメールを送る。
だがもちろん既読はつかない。
「何でだろう、スマホはバッグに入れないはずだからずっと持ってるはず」
「壊れたとか無くしたとかじゃないのか?」
「それもありうる」
ナオヤは考えた。
「コースケ、こんな時間に悪いけどシュウのところ行くぞ」
「当たり前だ。母さん、ごめんだけどちょっと出かける」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
二人は一旦ナオヤの家に行き、それぞれの定期を取りに戻った。
「バッグはまた今度返す」
シュウの家と交差点をスマホの地図で見て直線で結び、そのどこかにいると信じてナオヤとコースケはシュウを探しに出かけた。