不安 1
帰り道、4人はレイについて少し話をした。
「あんだけ敵だって言っといて、何で色々教えてくれたんだ?嫌々やってるとはいえあまりにもその丸メガネってやつを裏切りすぎてないか?」
シュウはまだレイを疑っていたため、何で友好的なのかがあまりよく分かっていなかった。
「それにずっと真顔で何考えてるか分かんなかったし、もはや怖いよアイツ」
「まだ話してないことなんていくらでもあるだろうよ。今日初めて話したんだから、これから徐々に関係を深めていけばいいんだよ」
ナオヤがシュウをなだめるように答えた。
(ただ色々心配だね……あそこまで話して大丈夫だったのか?一応相手は政府の人たちのはずだ、レイさんのどこかにマイクやらカメラやら仕込まれていてもおかしくない気もする。もしそうだった場合、今日の会話も全部筒抜け……)
コースケはあるかどうか分からない心配をしていた。
埒が明かないと分かっていながら考えることをやめられない。
もしそれで良からぬ事態を招いてしまったら。
もしゾンビ化現象を止められなかったら……?今この瞬間もどこかで感染している人がいるかもしれない。
この国の侵略を止められなかったら……?見えないところでジリジリと危険が迫っているかもしれない。
それ以外だって、何か良からぬ事が起こっているはず……それだって止められるなら止めたい。
他人の思考が読める分、コースケは他の3人よりも事の重大さをより重く受け止めていた。
そもそもただの高校生が向き合うような問題ではないのは誰の目から見ても明らかだ。
普通は勉強、行事、人間関係、将来や進路……悩むのはごく一般的な事柄のはずが、国家存続の危機となると話の次元がまるで違う。
「……ダメだよ、良くない」
コースケは斜め下を向きながらボソッと呟いた。
「え、なんて?」
「ダメだ、良くないよ、このままだと何も変わらない。俺たちで変えていかないと……変えるなら早く変えないと……気づいたときにはもう手遅れなんて嫌だよ……」
コースケは足を止めて道に立ち尽くした。
3人はコースケより少し前で足を止め、振り返るようにして静かにコースケを見つめている。
「確かに、今もゾンビの被害は増えるばっかだしな。早く行動に移したほうが良いよな……」
リクが遠い夕焼け空の先を見つめながら呟いた。
「……だからといって今何かできるかと言われたら、何もできないんだけどね。とりあえず今日は帰ろうか。博士も準備が終わり次第連絡してくれるって言ってたし、早く連絡が来ることを願おう」
そうコースケが言うと、4人は解散し各家に帰っていった。
*
そこから約1週間が過ぎた。
4人とレイの関係は少し深まり、今となっては普通の友達として接していた。
特にクラスが同じのコースケとは、休み時間や授業の中でのグループワークなんかでは毎度一緒になる程だった。
「にしても博士から全然連絡来ないな」
休み時間、またレイと話していたコースケが窓の外を見つめながら口を開いた。
「彼はそこらにいる一般人とは違うもの。彼なりの苦労があるのよ」
「……まあ、そうなんだろうけど」
レイは一呼吸置いてからスマホを取り出し、何やら画面をコースケに突きつけるようにして見せる。
「でもあんまり博士の連絡をダラダラ待ってる暇も無い気がするわ」
レイのスマホにはあるニュースの記事が映し出されている。
"東京都C区で30代男性の変死体、一体何が"
このような見出しの記事だった。
コースケはこの記事を読んでいくと、その状況や死体の状態に既視感を覚えた。
「……ゾンビ化した人にやられたのか?」
「十中八九そうでしょうね。私も上からは何も聞かせられてないから何とも言えないけど、ただの一般人が殺したにしては凶器は見つかっていないし、この前千葉であった事件と殺害方法が同じだわ」
そう、今回も腹部から上下に切断されていたという。
頭部は残っていたが、身元を特定するのにかなりの時間を要したらしく、その原形を留めているとは言い難い程に酷い有り様だったそうだ。
だが不審死で片付いてしまっており、ゾンビの事は"公な"記事ではまだ世に出回っていないため知名度が低い。
匿名掲示板やSNS等では、全体的に緑がかった人を目撃した、不気味な唸り声を上げながらボロボロの服で街を練り歩く人を見た、などという情報が出回り始めているが、現段階では陰謀論として丸め込まれてしまっている。
また一部インターネットだけで公開される企画物のニュース番組やディベート番組ではチラホラ取り扱われてきているところもあるとか。
「にしてもC区といったら都内で一番のビジネス街で人も多い……この前3人でリクを探してた時もあの辺でゾンビを多く見た。一般人が襲われてゾンビになっていくところも見たし……」
「人が多いからこそよ。多様性だかなんだか知らないけど、かえって人が多いと目立ちにくいのを上は利用してるんだと思うわ」
(どうすればいい……?早く何とかしないと本当に全員ゾンビに……っ?!)
突然、コースケの頭が割れそうなほど痛み始め、コースケは何も考えられずその場でうずくまった。
「ああああぁぁ………………」
「どうしたの?!大丈夫?!」
「頭が……痛い……」
コースケの頭でブツッと音がしたと思うとコースケは全身の力が抜け、大きな音と共に体を床に打ちつけ倒れた。




