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クラスメイト 3

「それで私は――」

「いやいやいやいやちょっと待てちょっと待て」


ナオヤがどうやら様子がおかしかった。 

かと言って特に悪いことがあったわけでもないが、珍しくナオヤは口を半開きにして少し眉間にしわを寄せて、驚いた表情をしていた。


「お前防衛大臣の娘?まじで?」

「そうだけど、それが何よ」


ナオヤ以外の3人も目がボロンしそうなぐらいには驚いていた。


「まあそれはいいとして。何企んでんだ?」


その冷たい真顔からは想像し難いが、レイは躊躇うことなくペラペラと色々話し始めた。


「私は政府の極秘実験にパパへ見せしめとして実験台にされたの。トキマサ博士の薬品のデータを知った財務大臣がその権力にものを言わせて極秘に実験してたのよ。実験台にされた人たちは遺伝子や神経、隅々の細胞まで焼き尽くされて完全に炭にされてしまったわ」

「「「えっ」」」


コースケ以外の3人は顔を見合わせた。

地下2階に綺麗に並べられていたアレは、炭化した人の亡骸だと分かると、思い出しただけで吐き気を催すほど酷いものだった。


「私も炭にされると思いきや、まさか初めての成功例になるなんてね……そのせいで私は冷気を操る力を手に入れたわ。別にこんな力欲しくはなかったけど」

「いいじゃん。強そうだしカッコいいと思うけど」


レイは氷のように冷たい眼差しでリクを見つめる。

リクなりに励まそうとしたらしいが、黙っていた方が良かっただろう。


「その1年後にパパは殺された。道を歩いている時、急に血を吹いて倒れたらしいわ。私は話を聞いただけだけど、いつも通り元気だったパパが急に殺されるなんて……それに――」


レイは少し落ち着いてから一呼吸置き、話を続ける。


「解剖の結果、中身がグチャグチャになっていた事が分かった……」


4人は息を呑んだ。


「そこから私はママと2人で生活するようになったけど、あの丸メガネに母親も殺されたくなければ協力しろだなんて脅されて……今はこうしてあなたたちの情報を集めてるってわけ。パパを殺したのは絶対あいつなのに、証拠がまるでどこにもないのよね……」


ナオヤが小刻みに頷きながら顔を上げた。


「なるほどな。つまり不本意ではあるが敵に協力していると……お前はどうしたいんだよ」


レイは少し視線を下げ、すぐナオヤの目を見て口を開く。


「あまり考えたことなかったわ。でもそうね……まずはパパに何が起きたのか知りたいわ。誰がどうやって、なぜ殺したのかを突き止めたい。その後であの丸メガネを――」

「あーはいはい、分かった分かった。だーいたい分かったよ。その後はまあ……ね?うん、ね?」


ナオヤは首を親指で切る動作をして、無理矢理自己規制をかけた。

そこからは少しの間沈黙が流れた。

その沈黙を破るようにシュウが口を開いた。


「じゃああれだ、えーとその、とりあえず仲良くしよう」


レイは少し首を傾げながら眉をしかめた。

気のせいか少し寒くなった気がしたが、誰もそこまで気にすることはなかった。


「話聞いてたの?私はあなたたちの敵なのよ。今はこうして情報収集を任されているところなんだから。それに、メリットが無いわ」

「いや、それはないんじゃないかな」


コースケが頭の後ろで手を組みながら答えた。


「今の段階でもう結構色々喋ってくれたし。父親を殺されて母親も同じ目に遭わないように嫌々やってるなら、俺たちはそれを敵だとは思えないな。それに――」


レイはさっきまでの真顔とは少し変わって口元が緩み、目や眉もどこか力が抜けているのか柔らかい表情をしていた。


「――多分その"丸メガネ"をブッ潰したいっていう思いは俺たちと共通するところでもある。つまり俺たちと手を組んでその目的を達成できるっていうメリットがあるってことだよ」

(確かに1人より全然頼もしいわね……しかもこの4人も能力者となると、かなりの戦力に……)


レイの思考が流れてきたコースケは、不意に口角が上がっていき、ついには吹き出してしまった。

他のメンツは何がなんだかよくわかっておらず、ついに頭がイッたのかと皆同じ自己完結で済ませていた。


(あんな真顔なのに声のトーンは明るくてよく喋るし、と思ったら普通の顔になって俺の言葉聞いてから真剣に悩んで……プッ)

「ごめん取り乱した。それで、どうするの?」


レイはすぐには答えなかったが、その数秒後にはある程度考えがまとまったようだった。


「確かに、考え直してみればかなり大きいメリットがあるわ。だけど共通する目的はあの丸メガネを潰すという1つだけよ。それに今敵同士であることは変わらないわ」


コースケは思考を読んでいて確信を得ていた。

レイは絶対に敵にはなり得ないと。

レイはどうしても悪にはなりきれないと、態度や思考ですぐに分かった。

そこでコースケは切り口を変えてみる。


「じゃあこうしよう。どっちかがどっちかを助けたら、助けた側の言うことを助けられた側が聞くようにする。ギブアンドテイクのやり方はどうかな」

「…………」


レイはまた少し頭を悩ませた後、さっきまでの冷たい真顔に戻ると芯のある声で答えた。


「分かったわ。それでいきましょう」


互いの承諾を確認すると、レイは荷物をまとめて足早に教室を去っていった。


「えーと、これってつまり……」

「レイさんが事実上仲間になったってことだね。まあ立場は向こう側だから何とも言えないけど。お互いのスパイみたいな感じかな。どちらにせよかなり絶妙な立ち位置だから、上手く使わない手はないよね」


コースケはそう言うと自分も荷物を片付け始め、帰る準備を始めた。

他の3人は結果オーライでまあいいか、ぐらいの気持ちだった。


(あいつらは思考読めるわけじゃないしな。今も俺のしたことに疑問を感じてるっぽいな……)


いつ裏切ってくるか分かったもんじゃないと、コースケ以外の3人は警戒しているが、今はまだ何も判断材料がないためどうすることもできない。


「ほら、早く支度して帰ろうよ」


どこか険しい表情が解れない3人を見て、コースケは自分の能力を少し憎んだ。

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