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"普通" 2

4限目も終わり昼の時間になると、一瞬にしてかなりの長い行列ができる。

そう、購買一の評判を誇るこの学校の名物であるハニーシュガーブレッドの争奪戦が起こるのである。

限定50個のハニーシュガーブレッドを全校生徒360人が狙うことになるわけだが、これがまた凄いことに最後尾の生き残りし50人目のところでピッタリ列が終わるのである。

購買のおじさんおばさんたちはなるべく出来立てをと、作り置きはしていないらしく4限目が終わるのを見計らって1から作り始めるのだとか。

それによりかなりの列ができ、一人一人がお昼休憩の大半(特に後列)を待ち時間に使うことになるが、そんな大きな犠牲を払ってでも味わいたいと言う人が続出するほど、その味は並んだ50人中50人が星5の評価を付けるほどにウマいのである。


そしてシュウはあらかじめ他の3人からお駄賃を預かっていた。

4限目終わりのチャイムがなった瞬間、校内の生徒たちは教材を片付けもせず一目散に購買を目指して走り出すが、シュウの前では焼け石に水だった。

どれだけ早く立ち上がることができても、どれだけ無駄なく走ったとしても、残念ながら"持っていない"普通の生徒達は"持っている"普通じゃない生徒には勝つことは不可能だった。


「っしゃ!鳴ったぞ!」

「行け行け行け早く!!!」

(哀れな者どもよ……)


少しだけ力を使っているシュウは、途端にその場から動かなくなるクラスメート達を横目に堂々と歩いて購買へと向かう。

購買の手前まで来ると誰もいないのを見計らって力を解除し、徐々に聞こえてくる足音を聞きながらなんとか笑いを堪えようとしていた。


(((勝ったな)))


リク、コースケ、ナオヤは確定演出にこれもまた笑みをこぼしていた。

これから毎日一番早くにハニーシュガーブレッドにありつけるのだ、こんなに素晴らしい事はないとウキウキだった。


4個ブレッドを買ったシュウは力を使わず余裕の小走りでいつもの場所に向かい、4人で集まって昼ご飯の時間を堪能する。


「ありがたいありがたい。いっただっきまっすー」

「なんだかんだ初めて食べるかも……」

「ついに伝説のパンにありつけるぞ」


力のことや悩みなど全て忘れて今の時間を目一杯に楽しむ4人は、力を手に入れる前の明るい男子4人組そのままだった。


だがそんな時間もあっという間に終わる。


「うまかったぁ……これから毎日頼むよシュウ君……」

「マジで便利だな」

「人をなんだと思ってんだ?まあこれに関しては全然パシられてやるけどな!」

「あっは、自ら行ってくれるならこっちも安心だね」


少し沈黙が流れる。

そして昼の時間も終わりが近づき、後始末に入る。


「手洗ってくるわー」


リクが席を外す。


「ちょっとトイレ」


シュウも席を外す。


「じゃあ俺もトイレ行こっと」

「おお行ってらー」


コースケも席を外し、ナオヤが留守番状態となった。

コースケはシュウに駆け寄っていき、トイレまで歩く途中に突然シュウの肩に手を置いた。


「ねえ、何隠してるの?」


シュウは少し背中がビクッと無意識に反応した。

そういえばコースケが思考を読めると言うことを完全に忘れていたのだ。


「何だよ急に、その力で分かってんじゃねえのかよ」

「いやーシュウの口から聞きたいかなー。今となってはあんまり無視できない内容だよね?」

(クソ、こうして見るとコースケのは中々に厄介な力だよなぁ……嘘とか一切通用しねえのか)

「うん、文句は俺に言わないでね。薬作ったのは俺じゃないし打ったのも俺じゃないんだから。思考だって読みたいわけじゃなくて勝手に聞こえてくるんだし」

「うっ……」


既にバレていた事もあり、とりあえずコースケにはおばあさんとその孫の話を打ち明けた。


「うーん……他にも能力者がいるのは気になるね。どうやって力を得たんだろう?」

「マジでそれしか分かってない。何で力を持ってるのか、どんな力なのか……」

「リクとナオヤには言わないの?」


シュウは言葉を詰まらせた。


「なんつーか、確証?というか……ちゃんとその存在というか、情報を掴んでから言いたいと思ってたけど」


コースケは頷きながら手を組んだ。


「なるほどね。あることないことハッキリさせときたいってのは確かに分かるかも」

「それに今は博士も忙しくてそういう専門的というか、大きな行動が出来ないから、こっちで何かしら出来ることないかなって思ってたんだよな」


2人はトイレで用を足した後も、席に戻るまで黙ったまま考え込んでいた。

席に戻るとリクはもう戻ってきており、ナオヤと深刻そうな顔をしてシュウとナオヤの方を向いた。


「どうしたすげえ顔してるけど」

「まだ見てないのか?」


ナオヤがそう言うと、シュウとコースケは顔を見合わせた。


「たった今出たニュースが結構ヤバい」


ナオヤはそう言ってスマホを手渡してきた。


"千葉県の80代女性が不審死"


「えっ」


シュウとコースケは絶句した。


"とある民家に住む80代女性が腹部から上下に両断されるという事件が発生しました。現在千葉県警が捜査を進めています。"


もしかして——

そんな予感がシュウの頭をよぎった。

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