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初任務 3

——ナオヤ


「ちょうど今シュウ君とコースケ君の任務は終わったみたいだ。次はナオヤ君だ、頼むぞ」


スタンバイして30分も経っていないだろうに、シュウの事だから秒で終わったんだろうとナオヤは短くため息をついた。


「早いっすね。にしても、俺は何すればいいんすか?」


トキマサは眉間に指を当て、ため息をわざとらしく吐いた。


「何を言っているんだ。君がリク君を助けるんだろう」

「は」


トキマサはゴホンと咳払いをしてから計画を説明し始めるが、それは意外とシンプルで驚きのものだった。


「いいか、ナオヤ君の力はただ"すり抜ける"事じゃないんだぞ?ナオヤ君の体を構成する分子が他の物質に触れることで即座にその物質の周波数と同期する、という力なんだ。これによってすり抜けが可能になる訳だが……」


トキマサはボリボリと頭を掻きながら運転席で先ほど解析したナオヤの分子構造の解析結果を眺める。


「これはついさっき気づいたことなんだが、どうやらまだ違う力があったみたいでな……」

「まさかそれって……」

(おいおい、いいのかよ?コースケ対策にわざわざ帽子まで被って秘密にしてんのに、もう言っちゃうのかよ?まだ俺に隠されてる別の力のこと……)


ナオヤはゴクリと唾を呑んだ。

なんだかんだどんな力が秘められているのか、ずっと気になって任務どころではなかったのだ。


「伝達……それがナオヤ君の別の力のようなんだ」

(ごめんよ。さっき伝えた違う能力についてはこれは関係がない……伝達よりももっとすごい力がナオヤ君には備わっており、それこそが地球を救う鍵となることは確かだが……それはこの力じゃないんだよなぁ)


トキマサは心でナオヤを騙してしまっているかもしれない罪悪感に苛まれているが、この際これで雑念が晴れてコースケ対策の帽子が不要になるなら、その方がありがたいのだ。


「伝達……そういう力なんすか?」


ナオヤはそんなことはつゆ知らず、さっき伝えられた世界を救う鍵となる力はこの今伝えられた伝達という力だと思っている。


「ああ……強力な力だ。自分の振動……つまり周波数を任意の物質に伝達することができる。つまり、ナオヤ君が触れたものもすり抜けさせることができるし、透明にもできるということだ」

「な……そんなことまでできるのか……?!」


そう、つまりは地下に忍び込み、囚われたリクをすり抜けさせて連れ帰るという、ナオヤにしかできない任務をトキマサは考えていたのだ。


「驚きだろう?そして今、シュウ君が署から色々取ってきてくれたおかげで騒ぎが起き始めている。皆慌てふためいてパニクってる隙にリク君を助け出すんだ」

「なるほど……わかりました」


シュウもこれを聞いてなぜナオヤが書類を取りに行く事にならなかったのかを理解した。

ナオヤは火力こそシュウやリクには大幅に劣るが、ほぼ全ての攻撃をフル無視でき、透明化して他人の視界に一切入らずに壁もろとも障害物をスルーできる唯一のスパイ兼サポート要員なのだ。

しかもついさっきその自分の力を触れた相手に共有できる"伝達"の力まで使えると知らされた。


「悪いけどこれイージーゲームだろ。普通にイケる気しかしねえ」


ナオヤは壁にまっすぐ進んでいく。

真っ暗どころではない、完全に光の届かないコンクリートの闇の中を一歩一歩進んでいくナオヤ。


ある程度足を動かしていると、薄暗い部屋が一瞬で浮かび上がってくるかのように現れる。


「うっ」


ナオヤはその薄暗い部屋の明かりさえも眩しいと感じるほど目が暗さに慣れてしまっており、咄嗟に目を覆った。

徐々に光に慣れてくると、ナオヤはゆっくりと目を開ける。

あたりを見回したナオヤはひとまずトキマサに報告しようとイヤホンマイクで状況を伝える。


「とりあえずよく分からないところに出たけど、こっからどう動けばいいんすか?」

「そこは警察署の地下一階だな。その階にリク君は居ないはずだ。地下一階には非常時の避難場所や倉庫なんかが設置されているからな。こっちにもしっかり防犯カメラで見えているぞ」


ナオヤはその異様に不気味な雰囲気に体を震わせていた。


「……で、どうすれば???」

「すまんすまん。とりあえず先に透明になっておいてくれ。何かあってからでは遅い」


ナオヤは頭の中で色々と考えたりイメージを浮かべてみる。

その最中に、目の前の奥に続く通路から警察が走ってくる足音が聞こえた。

ナオヤは焦りを隠しきれずに頭を抱える。


「やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい」

(バレるバレるバレるバレるバレるバレる!!!)


そう思ったのもつかの間、警察が2人目の前に現れた。


「ちょ、何?何の騒ぎ?」

「いや分かんないけど、侵入者?なのかな?署長室での会議中に書類とかが一瞬で全部消えたんだってよ」

「はぁ?何それ意味分かんねえ。超能力じゃあるまいし」

「それが、誰もいなかったのに手からも机の上からも全部消えてたんだと」


2人の警察はナオヤの方を見向きもせず、ただ慌てふためいた様子でナオヤから見て右手にある螺旋階段を駆け上がっていった。


(エェッ?????????????)


ナオヤは顔を下げ、手や足を見てみるもそこには何もない。

比喩などではなく、文字通りそこには何もなかったのだ。

ただあるのは少し古びたコンクリートの床だけだった。


(俺の体がない?!?!?!?!これが透明化ってやつなのか……?!何だコレ!!!!)


手をグーパーしても何も見えず、その手を動かしている感触しか感じられないのはとても心地の良いものではなかった。

壁をすり抜け、一切外からは見えない今の自分という存在が、ナオヤにはどうしても孤独に思えてならなかった。


(今はそんなこと考えてる場合じゃねえ。リクを助けるんだろ)


「なんとか透明化はできてるっぽいです」

「上出来だ。ワシにも全く見えていないぞ。にしてもこれはすごいなぁ」

「なら良かったです」


トキマサは深呼吸をしてから、指をボキボキと鳴らす。


「よし。今からはこっちで指示を出すから、その通りに動いていってほしい。頼むぞ」

「了解です」

(ドンと来いや。やってやんよ……)


ナオヤは自分にしかできない任務なんだと心で言い聞かせ、己を奮い立たせた。

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