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初任務 2

(てか、こういうの絶対にナオヤの方が向いてるだろ……なんで俺なんだ?)


署長室の扉を開けたシュウは目線を右に左に揺らしながら目当ての物を探す。

長机の奥に座る署長らしき人物が手に取っている紙には、シュウにとっては難しいことがズラリと書かれている。

その文章にシュウは目を凝らす。



"日中友好記念の祝賀会開催について"



(何だ……?)



"医療開発研究センター本部の移転について"



(どういうことなんだ……?何か関係あるのか?)



"CZ0016ウイルス検証結果の現状報告"



(これは間違いない……けど、どうする?普通に奪って戻ればいいのか?手元から無くなってたら気付くだろ……)


書類の内容から、まさに今起きようとしている何かについて会議が行われているということを察したシュウは呼吸が浅くなっていくのを感じた。

今目の前にいるオジサンたちも、"侵略計画"の関係者たちだということを裏付ける光景だった。


だがシュウは違和感を覚えた。

一部のオジサンたちは浮かない顔をしていたのだ。

気になり長机を回るようにして書類に一通り目を通してみる。



"黙秘に対する報酬の確認について"



"取引についての確認及び誓約書"



(ダメだ。完全にクロだ……俺でも分かる)


一通りの書類を見て躊躇うことすら危険だと感じたシュウは、見当たる書類を片っ端から根こそぎ取っていき、綺麗にひとまとめにすると署長室から出ていき、3階の証拠資料保管室に向かう。


(今俺……強盗と同じようなことしてる……正義のため?だとしても、なんか気が引けてくる……)


証拠資料保管室の前に立ち、ノブに手を掛けるシュウだが、そっと力を入れてみるもビクともせず、眉をしかめた。


(鍵がかかっているだとォ……?!やっぱりナオヤが来れば良かったじゃねえか!!!)


少し頭にきたシュウは力の加減もせず、普通にノブを回してしまった。

するとノブは壁に対しておかしい角度に傾き、ドアにはゆっくりと亀裂が走っていく。

そして徐々に聞こえてくるドアの木材の割れる音が、シュウの平常心を乱していく。


(あっ………………ヤバっ…………)


シュウは今常人の約30万倍以上の速さで動いているため、普通に力をかけると常人の何万倍もの力がかかってしまうのだ。

よっていちいち気を遣って行動しなければドアですらまともに開けられないのだ。

シュウはその亀裂が広がっていくのを見て、すぐさま証拠資料保管室に入り込むと、何となく部屋を見回し、床に落ちている袋に目をやった。

額に滲み出る汗を拭いながら、その袋を拾うと見覚えのある道具が入っていることに気づく。


(これ……俺が打たれた注射器じゃん)


他にもまだ何かあるかと部屋を漁っていくシュウ。

部屋は意外に散らかっており、沢山のダンボール箱や資料、証拠品といったものが散乱している。

注射器が入った袋の近くにはクリアファイルにクリップで固定されたものが落ちており、よく見てみるとそれはトキマサが言っていた薬について書かれたものだった。


(あ、これもだ。何だよ、普通にあるじゃねえか)


クリアファイルの中には恐らく当時の防衛大臣に提出するつもりだったであろう薬についての詳細な説明が事細かく記されていた。

分子の構造から仕組み、研究データのグラフ、使い方など、ありとあらゆる情報の全てを一人で研究し、開発を成し遂げここまできちんと書類にまとめたのかと思うと、シュウはトキマサを尊敬せずにはいられなくなった。


シュウは他にも何かあるのかと、ここからは完全な好奇心から部屋の中を調べ始めた。

そこでシュウが見たのは、錆びた血のついたナイフや拳銃、弾丸、白い粉など、普通に生きていれば目にしないであろう代物を見たとき、シュウの中には何とも言葉にし難い感情が渦巻いていた。


(本当にこんなものあるんだ。テレビでしか見たことなかった……殺人とか、本当に起こってるのか。今この瞬間も世界のどこかで、誰かが……)


シュウはさっきまでの輝いた目は消え、暗く重い現実を宿した目で部屋の中を見渡すようになった。

大きなバッグが、シュウの目に留まる。

サイドポケットからはみ出る紐が気になったシュウは紐を引っ張り確認すると、それはカードだった。

身分証明の為のものだろうか、トキマサの顔と名前が書かれたカードが出てきた。

シュウは持っているクリアファイルに書類を全部入れ、注射器もろともバッグに入れると真っ直ぐ出入り口に直行した。


コースケはほぼ瞬きほどの速さで背中にバッグが増えていたシュウを見て、成功を確信した。


「おつかれ。シュウにとってはまあまあ長かった?」


シュウはいつにもなく暗い表情をしている。

皆がよく知る明るく元気で能天気なシュウが、今はどこにもいない。


「ああ、まあ長かったよ。やる事はやったし早く車に戻るぞ」


その声は絶望に包まれたかのような低い声だった。

コースケは思考を読むもシュウの脳内は荒れ果てた砂漠のように静かかと思いきや、たまに吹き荒れる暴風による砂嵐で許容範囲をはるかに超える思考が渦巻いている。


(何だこれ……警察署の中で何見てきたんだ……?!)


「こっちは成功しました。今から戻ります」

「おぉ、ご苦労ご苦労。よくやってくれた」


様子がおかしいシュウに困惑するコースケだったが、あまり深く詮索はしないようにした。

コースケは先々と歩いていくシュウと少し距離を取りながらトキマサの車に戻っていく。

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