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下校—コースケの場合

コースケは気づけば視界は真っ暗だった。

感覚的に、担がれているのが分かった。

おそらく、視界が真っ暗なのは黒い布でも被せられているからだろうと概ね予想がついた。

ガチャッとドアの開く音がするとともに少し肌寒い空気に包まれる。


「イテッ、イッタァ……」


コースケは乱暴に降ろされ、手足を固定された。

背中とお尻に硬くて冷たい感覚が伝わる。

どうやら椅子か何かに固定されたようだった。


「あのー、すみません。あなたたちはどこの誰で何者なんですか?何でこんな事するんですか?僕たち何も悪いことしてませんよ?ていうかこの布?取ってもらっていいですか?息しづらいんですけど……」


少しパニックになっているのか、柄でもなくよく喋ってしまうコースケ。

何も見えないが、金属や何かが擦れる音、カタン、コトンと物が置かれるような音と時々荒くなる鼻息の音が静かな部屋に満ちている。


「スルーすか……まあそうっすよね」

「るせえなあ、さっきからベラベラ喋ってんじゃねえぞクソガキ!!!」


ボソッと呟いたコースケについに我慢していたのか男はキレた。

あまりに理不尽過ぎるんじゃないかと、コースケはもう何も言うことはなかったが大きなため息をついた。

しばらくして物音が静まると、男がコースケの方に歩いてくる音がする。


「ほら顔上げろ」

「えぇ……(ボソッ)」

「顔上げろつってんだクソが!!!」

(ひどい……)


被されている布を男はぐっと掴み、コースケの頭を思いっきり後ろにやった。


「ぐぅっ」

「おーらよっ」


そして反対の手に持っていた薬をコースケの首に打ち込んだ。


「が……あっ、あぁ……」

(何だ?何された?分からん、でもなんかやだ、キモい!助けて誰か!!!)


薬を打たれたコースケは暗い視界ながらも次第に目がぼやけて頭がクラクラしてくるのを感じた。

固定されていると分かっていても、このまま後ろに倒れてしまいそうな感覚だった。

だが、数分してからコースケは全く初めての感覚を体験することになる。


「なんだよ、力作だとか最高傑作だとか言われてたクセに何も起こらねえじゃねえかよ。あの——」

「「科学者気取りのヘッポコクソジジイが」」

「はぁ?!今お前……何で、どうやって……?!」


コースケは最後の言葉を一言一句外さずに男と被せて全く同じことを言ったのだ。

しかも布を被されて周りは何も見えていない。


「なんだこれぇ……すごい」

「何言ってんだ……まさか、あの薬は成功だったのか?あのクソジジイのやつがうまくいったってのか……?」


コースケには全てが聞こえていた。

目の前の男が思っていること、別の部屋にいるシュウやリク、ナオヤが感じていること、その思い全てがハッキリと聞こえてくるのだった。


「面白いなぁ……ねえ、そんな怖がんなくていいっすよ。それより、これ解いて布取ってくれません?そろそろきついっす……」

「何だ……気持ち悪い、人間じゃねえ。お前人間じゃねえよ……」

「ふーん。上に命令されたとはいえ高校生4人誘拐して意味わかんない薬打って最後は人外呼ばわり……すごく自分勝手というか、それってちょっと違うと思いません?あなたたちがやってることは紛れもない犯罪ですよ?」

「あ、ああぁ……」


自分が思っていることをそっくりそのまま言われてしまい男は焦りに焦る。


「と、とりあえず成功ってことで……」

「あ、また無視。そうやって部屋出てって俺取り残されるんでしょ?だからせめて布取って手足解いてってば」


焦る男の息が静まり、男は静かにコースケのところに歩いていく。


(あれ、何も聞こえなくなった……?)


足音が止まり、視界が一気に開け、手足も自由に動くようになったコースケは素直に驚いた。


(急にどうした?まあ助かったからいいけど)

「ありがとうござます……」


男は無言でコースケをじっと見つめている。


(怖いな。こんな人と喋ってたのか、俺)

「あのー、どうやったら外に出れます?」


すると男はやはり無言で部屋を出ていき再びコースケの方を見た。


「なるほど……?とりあえずついて行けばいいってことすかね?」


コースケは恐る恐るついて行くことにした。

どうやらあの部屋は地下だったらしく、エレベーターもあったが使えなかったので階段で上に上がるとよくわからない液体や動物が見受けられた。


(さっきいた部屋が実験室なら、ここは研究室ってところか?気持ち悪いなぁ……)


物が多い割に誰もいない所を歩いていく男とコースケ。

研究室と思わしき部屋のドアを開けて出ようとすると、室内にも関わらず突風が吹き抜けたかと思うと、さっきいた地下から爆発音のような音が聞こえた。

そのすぐ後に男が叫んでいるのが聞こえる。


(うわぁ……これマズいやつなのでは?)


段々と大きく聞こえてくる多くの声が聞こえてくる。

それがこっちに向かってきているのが分かると、コースケは適当に机の下に隠れた。

そしてドアが勢いよく開く。


「おい!何ボーッと突っ立ってんだ!聞こえなかったのか?早く地下の実験室に向かえ!」

「え……あ、はい!」


急に意識を取り戻した男は多くの男たちに紛れて地下に戻っていった。


(バレなかった危ねえ……にしても何がどうなってんだ?もう訳分からんて)


とりあえず早く外に出たかったコースケはそのまま研究室を抜けて外に出る道を探すのだった。

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