見えてくるもの 2
いいですか、全部フィクションですからね。
研究室は呼吸音すら聞こえないほどの静寂に包まれる。
侵略。
その言葉の裏にはどんな意図が隠されているのか。
写真をよく見てみると、各項目の中によく出てくる国名として中国が挙がる。
とりあえず中国を優遇し、こちらが下手に出て犠牲を払っても中国の為ならそれを良しとする……ような趣旨の項目ばかりだった。
「クソ……ついにここまで来たか。政府の奴ら、金に目がくらんだか?それとも、他に何か……」
世界の覇権を争うと言っても過言ではない国々……列強と呼ばれるその国々は、経済力と軍事力を総合した国力の高い国をそう呼ぶ。
かつては日本も列強でもトップ3に入るほどの国力を誇っていたが、今となってはただの先進国……もしかすると発展途上国との狭間を彷徨っているだけなのかもしれない。
それでもなお日本は今も世界を先導する国の一端として君臨しているが、この国は様々な問題点と常に隣り合わせの"危険"な国でもある。
第一に戦前から前後に掛けての国力は凄まじいものだった。
戦後にかけては特に経済力で発展を遂げたが、ある線まで来るとそこで成長は止まり、他国に差を見せつけられるザマとなっている。
ここで大きいのは何より軍事力、武力の放棄だろう。
国力に軍事力を加算できず、有事の時は自分で自分を守ることに精一杯で他国を攻めることができないのが国力の衰退の一因でもある。
だがこの国は見て見ぬふりはできない非常に特殊な国であるのもまた事実である。
「こうなってしまった以上、近い内に何かしら事が起きるはずだ。ここで君たちの出番かもしれない」
トキマサは真剣な表情で顎に手を当てる。
「侵略……コレは宿命だ。この国に生まれた以上、関わらざるを得ない戦いなんだろう……」
「どういうことなんですか?!なんで急に戦いって……戦争でも始まるんですか?!」
地政学的に、日本は非常に重要な位置にあることは言うまでもない。
ロシア、中国と太平洋を挟んでアメリカに挟まれたいわば防護壁として位置しており、今は全体的にアメリカ側についているためロシアと中国はアメリカに仕掛けることができないのである。
ミサイルでも打とうものならヨーロッパ側は言わずもがな、太平洋側に撃つならばほぼ確実に日本の領空を経由するため、この3大国は日本を掛けて争っていると言っても過言ではないのが現状である。
そして今、中国は本格的に動き出したのだ。
古くから評価されてきた日本の丁寧で高水準の精密な技術やそのクオリティの高いものづくり精神をもつ国がなんと武力を有していない!
他国からしてみれば美味しいところしか持っていないこの国は狙われて当然といえば当然なのである。
「あのゾンビとかもしかして何か関係あったりするのかな……?」
「すまん、もう一度写真をよく見せてくれ」
ナオヤはトキマサにスマホを預けると、トキマサは少し表情が緩んだ。
「フッ……危機的状況であることに変わりはないが、まさかの幸運にも侵略についての計画書の一部はこっちにもあるんだ。ここにちゃんと書いてある」
"不慮の事態や争いに備える為の生物兵器の生成方法として、人間を媒体としCZ0016ウイルスを蔓延させ、常に動員できるよう管理すること。"
"ただし、ここでいう人間は全て日本人とする。"
ハッキリとそう書かれていた。
「マジクソやん。すでにゾンビの被害は出てるし……早くニュースで報道してくれないと皆気づかない内に……」
シュウの言葉をトキマサが遮る。
「何言ってる、メディアもほぼ全て政府の手中にある。都合の悪いニュースを流すわけないだろう」
トキマサは立ち上がりゴム手袋をはめると、部屋を何やらうろつき始めた。
「のんびりしてる場合じゃない、事は一刻を争う。被検体02を連れ戻す前に君たちの力を調べさせてもらうぞ」
コースケが反応する。
「でももう力もある程度使えるし、今すぐにでも……」
トキマサは冷静に返す。
「実際コースケ君は力の仕組みを知っていたかね?ワシだって今日初めて力を持った君たちを見た。何かのはずみで想定外の力のズレが生じていたらどうする?それに調べれば今知らない未知の力も分かるかもしれんぞ?強制はしないがオススメはしておくってことで」
そうして被検体の番号順に検査をすることにし、始めはシュウが呼ばれた。
「じゃあここに座って」
シュウはトキマサの用意した丸い背もたれのない椅子に座ると、手を差し出すように言われたので言われるがままに差し出す。
「ひぇっ」
シュウはトキマサの懐から突然現れた注射針を見て情けない声を漏らした。
シロートが書いてるフィクションのおはなしですからね、いいですか。国名は似てても現実にあるものとは限りませんから。同じ苗字の人が何人もいるようなものだと思ってください。




