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増神鴇雅 2

彼は真面目に働いた。

声が掛かればすぐにそこに飛んでいき、問題点を発見、指摘し、解決策を講じ、見事に課題解決をこなしてきた。

特に医療の分野で彼は多大な功績を残した。

日本国内で死因1位の病気である癌をまるで風邪の如く治す薬を開発。

多くのマウスの犠牲によりその信頼度は99%という前代未聞の薬品の開発に成功したのだ。

だがここから彼の人生は狂い始めた。


「素晴らしい。是非とも国内に普及を進めていくとしよう」


病院での使用テストも全て合格し、ついに一般の人々がこれで救われる。

彼の胸は満足感で満ち満ちていた。

しかしその数ヶ月後に違和感に気付く。


鴇雅は全国の癌患者の入退院者数と死亡者数の割合のデータを比較して見ていたところ、何と薬を開発したのにも関わらず一向に患者は増え、死亡者も増えていたのだ。


(おかしい……後で欠陥が見つかったのか?ならなぜ報告されなかったんだ……?直接癌細胞の内部に薬が入り込み遺伝情報を直接破壊……ただの老廃物として体内で処理される仕組みに欠陥はないはず……使った成分だって無事に分解されるよう試行錯誤を重ねた……何千回とテストを繰り返したんだぞ?)


鴇雅はすぐさま厚生労働大臣に話をしに言った。


「どういうことですか?!なぜ私の開発した薬が使われていないのですか?!」


そう言いながら右肩上がりのグラフに指を押し当てて見せる。

大臣はすぐに目線をそらしたかと思えば、後退りしながら信じられないようなことを言う。


「いや、まぁ……総理がダメだと仰ったので……理由は総理に聞いてもらえれば……」


ここで鴇雅の中の何かが切れた。

もはや総理に聞きに行く気力すら無くした鴇雅は、文字通り全てが虚しく思えてならなかった。

仕事もそこから段々適当になっていき、たまに仮病を使うことも増えた。

それでも咎められることもなく、何か言い寄られることもなく、日々が過ぎていった。


そしてある日、鴇雅はたまたま誰かが何か話している部屋の横を通り過ぎた。


「あの若造、よくもまあこんな薬作れたもんだよなあ。これで多少は長生きできるようになるわ」

「にしても本気で一般人に普及させるとか思ってんのかねー。医療業界ってのは病人がいないとそもそも成り立たねえってのに」


鴇雅は喉が万力か何かで締め付けられるような感覚に陥った。

目元が湿って、熱くなってくるのを感じて体は異様に震え、大声で叫び散らかしたいのに、身動き一つ取れず、かすれ声すら出ない。


「考えりゃ分かんだろ。皆が皆元気になっちまったら医者なんか要らねえんだよ。病気のやつが診査しに来たり薬を買ったりするからこっちは儲かるってのに、バカだなぁ。ハッハッハ」


鴇雅は震える拳を血と汗が滲むぐらい握りしめながらその場を後にした。


(もう、辞めよう。バカバカしい……)


そう思い帰宅した矢先、とある着信が1件。

手に取ると、それは地元の病院の電話番号だった。

鴇雅は不審に思いながらも応答する。


「はい、はい、お世話になっております…………はい?」


予想すらしなかった内容だった。




「お父様が亡くなられました」

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