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灯台下暗し 3

「おはようございます」


教師が先に挨拶し、その後に生徒たちが続く。


「おはようございます」

「ざいますッ……」


気付けばしれっと席について挨拶をしているシュウ、コースケ、ナオヤだった。

今まで誰もいなかった席に急に現れたのを教師はどういうことだと言わんばかりに目を見開いたが、気の所為だとすぐに割り切ったらしく、バレることはなかった。


そこからはいつもと何ら変わらない学校生活を送る。

普通に授業を受け、休み時間、また授業を受け……3人はやっと待ち望んでいた昼食の時間になると、人目につかないところで集まって購買のパンやらおにぎりを頬張る。


「朝はありがと、助かったよ」

「またゲロ吐きそうになったけどな。昨日よりかは慣れたわ」

「うんうん、いつでも言ってくれれば運搬してやらなくもないねぇ」


はじめの数分は何気ない会話を楽しんでいたが、次第に空気は重くなっていった。


「あの、リクについてなんだけど……」


コースケが話を切り出す。


「皆思ってることは同じだろうよ、俺もメールしてみたけど既読すらつかない。これは何かあったと見て間違いない」

「俺も先生にリクどうしたって聞かれて、なんて答えれば良いか分かんなかった。行方不明ですとか言えるわけねえよ……」


シュウとリクは同じクラスで、コースケとナオヤは別々だったこともあり、シュウは特に対応に困っていたという。

こうして3人が解決策の見えない会議を続けていると、徐々に各教室内が騒がしくなってきたことに気付く。

中でもコースケは生徒たちの思考を感じ取り、何が起きているのかを即座に把握した。


「外に誰かいるらしいよ」


シュウもナオヤも急すぎたその言葉に何のこっちゃ状態だった。


「え、それがどうかしたの?」

「うん、校庭に知らない人が入ってきてるみたい。教室の窓から見えてて、先生たちが対応しに行ってるって」


3人は食べ終わったゴミを片付けると、ゆっくりと教室に向かっていく。


「不審者か?にしては緊張感ゼロだな」

「それが不審者ではないけど、意味分かんないこと言ってる……みたいな?」

「それを不審者っていうんじゃないのかよ」

「確かに……」


各教室の人で窓が塞がっており、何も見えないので端にある理科室に3人で向かい外を見てみると、確かによく分からない格好をした男の老人が教職員たちに取り囲まれているのが見える。

見たところ色々と話しているようで、教職員たちは首を傾げている人も数人見受けられた。


「何やってんだろ」

「話してんだよ」


シュウとナオヤの会話を聞きながらもコースケは違和感を感じていた。


「まただ……あのよく分からない人、思考が読めない」


シュウとナオヤの表情が消える。


「またゾンビか?何で学校に来んだよ、そもそもどうやって来てんだあの野郎」

「てかゾンビのくせに喋ってるってこと?!この短時間で進化しすぎじゃね?!」

「分からない……けど、あの人も何かしら関わってると思っといたほうがいいかも……」


そう憶測を話しているとその"不審者"がこちらを向いた。

そしてコースケと目がピッタリ合うと、指を指して頭に被っている帽子のようなものを取り外した。


「え、何…………」

『君には聞こえているんだろう?ワシは怪しい者じゃない。まさに君たちを探していたんだ。頼む、今すぐこっちに来てほしい。日本の命運が、いや世界の命運が君たちにかかっていると言ってもいい』

「あ、え、ちょ、はぁ…………???何言って……」


コースケの様子が明らかにおかしくなったのをシュウもナオヤも見逃さなかった。


「どうした?」

「いや、急にあの人の思考が読めるようになって……今すぐこっち来いって……まさに俺たちを探してたって……」


3人は顔を見合わせて行くかどうかを話し合う。


「行っていいのかよ……怪しすぎるって」


シュウは素直に疑ってかかるも、ナオヤは意外に冷静だった。


「でもコースケの力を把握してる、よな?」

「それが何だって……」


ビビりまくるシュウにナオヤは現時点での考察を述べる。


「思考が読めてる時点でまずゾンビじゃないし、それに俺らの事を探してて来て欲しいって、コースケの力経由で頼んできてるんだろ?よっぽどの何者かじゃないとできない事だと思うんだけどな」


これにはシュウもコースケも納得したらしく、すぐにその"不審者"のところに向かった。

そこに行くと教職員たちが3人に気づき、焦った様子で注意をしてくるも、その"不審者"は何とか3人にこっちに来てもらおうと取り繕う。


「この子たちですよ。いやぁ、最近やっと帰ってきて久々に顔を見たいと思っていたもので、つい我慢ができなくなってしまって……」

『今は保護者の設定で話している。何とか合わせてくれないか』

(え、えぇ…………)


コースケは嫌々ながらもこの"不審者"を信じてみることにした。


「そ、そーなんですよ!ホントに久しぶりで、まさか直接学校に来るとは思ってなかったけど……やだなぁ、帰ってくるなら連絡ぐらいしてくれれば良かったのにー」


教職員たちはまさか本当の保護者だとは思わず(もちろん嘘)、"不審者"にペコペコと頭を下げはじめる始末で、シュウ、ナオヤは完全にフリーズして呼吸すらも止まっているかのようだった。

だがまだ終わってはいない。


「大変失礼いたしましたこと、誠に申し訳ございません。コースケくんの親御さんでしたら、ぜひ親子水入らずでお話していただいて……」

『だめだ!あとの2人も来てもらわないと……そう言えば君、コースケ君と言ったか?その力で先生たちを校内に戻してくれないか、それが一番手っ取り早い』

(はぁ?何言ってんの?俺の力は他人の思考を読み取るだけ……って、あれ?)


コースケは誘拐された時のことを思い出す。

自分を拘束し、薬を打った男に拘束を解いてくれと頼んだ時、その男は暴言も何も言わなくなり、普通にコースケを解放してくれたことがあった。


(すっかり忘れてたけど……そういえばあの時何で……?)


少しの緊張と、まさかの期待が同時に渦巻くコースケは先生たちに言う。


「先生たち……もう戻っても大丈夫ですよ、後はこっちの問題なんで……」


すると教職員たちから表情は消え去り、無言で校内にゾロゾロと戻っていくではないか。

これにはシュウとナオヤも驚きを隠しきれなかったようだ。


「え、何それ。新技?聞いてないんですけど」

「マジか…………」


3人と"不審者"意外の邪魔者が消えたところで"不審者"はゴホンといかにもわざとらしい咳払いをする。


「いや急に押しかけてしまって申し訳ない。手始めに自己紹介とでもいくかね」


"不審者"は再び帽子のようなものを被り、中々リアルでは見ないであろう眼球より明らかに小さい丸眼鏡の位置をクイッと整えた。

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