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帰宅 9

その声はリクの声だった。

3人はついに4人で再会できると喜んだが、肝心のリクがどこにもいない。


「おーい、リクー?どこにいるんだよー早く出てこいよー」

「あいよ」


宙から何か得体の知れないものが落ちてきて、砂埃の中で何かが動いているのが見える。


「バアッ」


突如鼻の両穴に親指を突っ込んで白目を剥きながら現れたのは他でもないリクだった。

3人は特に面白がる様子も、ツッコむこともなくリクの顔芸は幕を閉じる。


「やっと会えたなぁ。良かった良かった」

「お前らどこいたんだよ。ずっと待ってたのによ、結局1人で全部片付けちまったぞ」

「まじかよ、すげえなリク!」

「あいにく俺とコースケは攻撃に特化した力じゃなかったんだよな。だからシュウが全部やってくれた」


4人は人が誰も寄り付かなくなった道の真ん中で、ゾンビの死骸に囲まれながら再会の喜びを分かち合った。


「リクは相当な量のゾンビを倒したっぽいけど、どんな力が使えるようになったんだ?」


リクは待ってましたとばかりに口角を上げて眉を片方だけ上げる。


「聞いちゃうか?ついに聞いちゃうのか〜?」


そのドキドキワクワクな瞬間をコースケが一瞬でぶった斬る。


「血を操れるようになったって?すげえじゃん!でも、それって何ができるんだろう?でも色々出来そうだよな、てか普通に血操るってカッコよくね?!」


シュウとナオヤは目の笑っていない仏の様な顔でコースケに視線を刺す。


『『いや今はリクが言うところだろ。空気読めよ』』


シュウとナオヤの心の声一言一句全てが一緒だった。

流石にしくったとコースケは手を合わせて女々しい顔で許しを請う。


「あ、え……て、テヘペロ?」

「何してんの?さすがにキモい」

「あの技を使えるのはカワイイ女子だけだぞ。男子に許されるものではない」

「すみませんでした……」


リクは特に何も言うことはなかったが、自分の口から言うことができず、リクの周りだけがモノクロの遺影のようなオーラに包まれていた。


「まあとにかくそういうことよ。俺は体中から血を出して操れる。後は体の傷が秒で治るってとこかな。今見た感じだとコースケは人の頭の中覗けるとか?」


リク以外の3人は顔を見合わせる。

先にコースケが口を開いた。


「うん、そんな感じ。人の心の声が聞こえるようになったから、嘘とかそういうの見抜ける的な?」


リクは興味津々で頷きながら話を聞いている。

ただでさえ男はこういう超能力、スーパーパワーといった非現実的な物に魅力を感じる生き物だ。

それを現実に扱えるようになり、悪者を倒すなんていうのは男なら誰もが一度は妄想したことがあるといってもいいだろう。

特にリクはこういう類いのモノが大好物だった。


「俺は超速く動けるようになったよ。実は俺も傷の治りがめっちゃ早くなってさ、そこは似てるかもね」


リクは上下前後に顔を揺らしながらニヤけている。


「俺は物をすり抜けるようになった。あんま使い所わかんないけど、今んとこなんかあったらとりまノーダメでいけると思う」

「おぉ……いいねぇいいねぇ……!めっちゃ興奮するわこういうの。何だかんだゾンビ野郎ブチのめすの楽しかったし」


リク以外の3人も少しずつ頷く。


「まあ確かに?何だかんだ憧れとかはあったよな」

「わかるかも。ちっちゃい時好きな子守る妄想とかしてた……」

「うわ超わかるそれやっぱみんな同じなのかよ」


話は留まるところを知らない様に思えたが、リクが話をもとに戻した。


「盛り上がってるとこ悪いけどさ、これからどうするよ?」


これはかなり難しい質問でもあった。

今日だけでここまで非日常なことが立て続けに起こったのは偶然とは考えにくかった。

急な誘拐、力の発現、ゾンビたちの出現と襲撃……こんなのはどこからどう考えてもおかしいとしか言いようがない。


「どうするって言われても、とりあえず今まで通り生活するしかない気がするけどね。なるべくこの力の事は誰にも言わないほうがいいと思う。それでもしまたゾンビに襲われたらその時は、って感じじゃない?」


コースケは冷静にそう考えを述べるが、それが一筋縄ではいかない事はコースケも含め4人とも分かっていた。

そこでシュウが頭の後ろで手を組んで目線を斜め上に上げる。


「まあ今いろいろ考えてもどうしようもないだろ。明日も学校あるんだし、また学校で話そうぜ。そろそろ帰んないと親も心配してるだろうしなぁ」


その言葉にナオヤは慌ててスマホの時間を見るが、すでに10時を過ぎていた。


「確かにもう帰ったほうがいいな。あ、そう言えばお前らの荷物は全部俺の家にあるから、明日学校に頑張って持ってくよ。そこで渡すわ」

「悪いねぇ」

「あざす!」

「ありがと」


そうして話はまとまり、4人は帰ることにした。

4人は家も近いので、一緒に帰ることができた。

ゾンビの騒ぎがあったところには誰もいなかったが、4人とも帰るときに道路のあちこちにパトカーが停まっているのを見て、眉をしかめた。


「あれ、そう言えばあの女の人警察呼んでたけど来なかったよな?あの停まってるのは別のやつなのか?」

「確かに、もう結構経つけどサイレンの音すら聞こえてこなかったよね」


警察が電話を受けて助けを求められたのに来なかったというのは、かなり問題である。

それは地域の人々の安全を確保するという義務を放棄したに他ならないからだ。


「にしても、多くね?」


手前にいると思えば、その奥の道路にもパトカーが停まっている。

右も左も、奥までも点々と一定数パトカーが停まっているその状況はもはや不気味でしかなかった。

今歩いている歩道の横にも、向かいの歩道の横にも、とにかくあちこちにパトカーがいる。

そしてコースケが首を傾げた。


「あれ……確かにパトカーに人乗ってるよね?」


コースケ以外の3人は首を縦に振る。


「そこら辺にパトカー停まってるけど、全部ちゃんと人乗ってるぞ。何なら俺らの方チラチラ見てきたりしてるのもいるし」


リクがそう言うと、コースケは青ざめた顔で表情を歪めた。


「だよね……嘘じゃないんだもんね」


騒ぎの場から離れていくと、徐々に人通りも多くなっていくのを4人は実感する。

ここでナオヤはパトカーが停まっている意味が分かった。


「多分、ゾンビのとこに近寄らせないために現場を包囲して遠ざけてたんじゃないかな?にしては多すぎる気もするけど」


それでもコースケの様子はおかしいままだ。


「あのね、信じたくはないんだけどさ、人通りが多くなる前からパトカー結構停まってたよね?」


他の3人は一斉に首を縦に振る。


「それがどうかしたのか?」


とリク。


「なのに警察の人の心の声が一切聞こえてこなかったんだよね……」


この言葉の意味がわからないリクはポカンとしていたが、シュウとナオヤはその顔から表情が消えた。

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