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帰宅 7

「おっと危ねえ危ねえ。これでもまだ速すぎるか」


両脇に支えているコースケとナオヤが動いていなかったのを見て、シュウは徐々にスピードを落としていく。


「——ういうこと?」

「——ぶつもりなんだよ?」


さっき途切れた2人の声が聞こえる。


「って、ナニコレ?!どうなってんの?!」

「あー、今走ってるとこ。そして見ての通り、2人を頑張って運搬してます」


2人は完全未体験のことに焦りを抑えられず暴れそうになったが、人ならぬ速さで走るシュウから落ちてしまえば、大ケガは間違いないとスンッ……と静まる。


「ちなみにどれぐらいの速さとか……分かってたりする?」


シュウは少し間を開けてから答える。


「んー、衝撃波は出てないし、こうしてコースケとナオヤとも話せてるしなぁ。馴染みあるやつだと、新幹線ぐらいじゃない?200キロとかその辺だと思うよ」

「「………………」」

「んもー、そんなビビんなくてもいいじゃない。2人を間違えても落っことしたりしねえよ」


そんなこんな話している内に記憶の地図で見た付近まで来た。

シュウはスピードを落としていき、2人を地面に下ろす。

2人はその速さあまりに気分を悪くしリバース寸前だったが、人通りが多い中でそんなことをする勇気もなく、仕方なく飲み込んだ。


「さてと……赤い看板の居酒屋ってのはどこかな」


シュウは酔った2人を気にせずつかつかと歩いていく。

2人はその後を嗚咽しながらもついていく。

ここから探すのはこれまた骨が折れそうだったが、異変はすぐに訪れた。

付近で人の叫び声が聞こえてきたのだ。


「おい!誰か警察呼べ!人がケガして血流してるぞ!」

「何何何……?!何が起きてるの?!」

「うわぁ!こっち来んな!」


かなりの騒ぎが起こっているようだ。

もちろんシュウと体調万全ではないコースケとナオヤはその騒ぎが起こる方へまっすぐ歩いていく。

その道中で人々の心の声をコースケは聞き分けていた。


『何あれ、人……?人なの……?バケモノみたい』

『白目剥いてね?なんか肌の色もおかしいし、ゾンビみたいだけど……そんなことあるのかよ?』

『通り魔か何かか?こんな人の多いところでよくやるよな。さっさと警察に捕まっちまえよ』


コースケはその場に着く前に何となく事の想像がついた。


「2人とも、オエェ……た、多分、今騒ぎが起きてるのは、オェッ、さっきのゾンビみたいなやつが人を襲ってるからオェ……だよ」


未だに気分が優れないコースケは嗚咽しながらもシュウとナオヤに伝える。

酔いが落ち着いたナオヤはコースケの背中を擦りながら騒ぎが起きてる方向を睨みつける。


「人通りの少ないところでリクが戦ってるんじゃないのか?それとも今ここにいる奴らは別モンなのか?」


ナオヤは咄嗟にリクにまたメールを送る。


〈今人が多い場所まで来たけど、こっちでもゾンビ野郎らしき騒ぎが起きてる。リクのところと違うやつなのか分かんないけど、そっちはどう?〉


送った瞬間、すぐに既読がついて返事が来る。


〈えまじ?〉

〈すまん、ついに対処しきれなくてそっちに流れていってるのかもしれない。倒しといてくれないか〉


ナオヤは意外とリクの近くまで来ていたことを理解しつつ、この異様な状況をうまく掴めずにいた。


(何なんだ……?急に誘拐されるわ、薬打たれて変な力が使えるようになるわ、ゾンビみてえな奴らがあちこちで暴れ出すわ……他の場所でもゾンビ野郎が湧いてるかもしれない、でもそっちは対処できない……今は目の前の奴を倒すしかねえってか?もう何がどうなってんだクソが)


そんな事を考えながらも、3人は騒ぎで逃げ惑う人々や面白がって逆に集まってくる野次馬を掻き分けながら騒ぎの中心に向かっていく。

そしてその先に見えたのは驚きの光景だった。


「ちょ、コースケ、ナオヤ……あれって……」


そう言ってシュウが指差したのは、逃げようとしていた一般人だった。

服はビリビリに引き裂かれ、所々肌が見えている普通のサラリーマンだった。



普通のサラリーマン"だった"。

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