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帰宅 6

シュウはなんともない様子で元に戻り、コースケを起こす。

コースケとナオヤは開いた口が塞がらない。


「さっき何が起きたんだ?」

「俺もよく分からん。でも変なのやっつけたみたいだしいいんじゃね?」

「まあ、確かに……?」


シュウは手を開いて閉じを繰り返してからその場で軽くジャンプをして体を動かす。


「おっかしいなぁ、全然疲れてない。もはやめちゃくちゃ元気なんだけど。ケガも全部治ってるし、どうなってんだこれ」

「え、マジ?」

「マジ」

「なら一緒にリク探しに行くか」

「行こ行こ」


ということで3人でリクを探すことに。

時間ももう夜の8時を過ぎている、あまり時間はかけられない。


「にしてもシュウのはどういう力なんだろう?」

「確かに、さっきのあの一瞬で何が起きてた?」


コースケとナオヤからすればなんとなく分かりそうで分からない力に見えた。

駅のところにいたシュウが気づけば目の前でゾンビ男をブチのめし、ついでに体も全回復していたとなると、力の要約がしにくい。


「いや、普通に走っていって変なの殴っただけよ?細かいことよく覚えてないけど」

「にしては速すぎたよね……?超速く動けるプラス回復もできるってズルくない?」

「回復はオマケって感じがするから、超速いってことでいいんじゃない?確かにズルいけど、今んとこ唯一の火力要員でもあるからありがたい。もしリクも火力要員じゃなかったら、さっきみたいに倒せるのシュウしかいないってことになるし」

「うえぇ、なんかやだなぁそれ」


シュウは嫌そうに顔を歪めた。


「でもなるほど、薬打たれたばっかで力が暴走して、さっきの交差点までたどり着いたとなると説明がつく」


ナオヤがそう2人に言うと、2人も確かにそうだと納得した。

そのすぐ後でナオヤのスマホに通知が来る。


〈おお!無事だったか!俺は今きしょいゾンビみたいなやつに襲われてて戦ってるとこ。そっちはどう?〉


リクからの返事のメールだった。


「リクから返事きた!」

「見たところ大丈夫っぽい?」

「アイツも戦ってんのか……大丈夫かな」


ナオヤはまたメールを送る。


〈さっきちょうどシュウと合流して今コースケと3人でいる。これからリクのところ行こうと思うんだけど、どこで戦ってる?〉


既読がついて数十秒してから返事が来る。


〈それがよく分からん外れの道で結構厄介なんだよな。中々にゾンビ野郎が多いもんだから1人で対処すんのそろそろキチィ。できればなるはやで来てもらえると助かるんだけど〉


「どうしたもんか……これじゃ場所がわからねえ」


ナオヤは頭を掻きながら返事を考える。


〈何か周りに目印になりそうなもんとかないの?〉


これには少し時間がかかるのか、返事はすぐに来なかった。

やっとリクから返事が来ると、3人はその場所の特定に頭を悩ませた。


〈少し離れた近所は人通りが多くて賑わってる。割と都心の方なのかも知れないけど、こんなにゾンビ野郎がいても騒ぎにならないぐらいには人がいないところに俺はいる。目印にするなら、赤い看板の居酒屋がある〉


「都心の方で極端に人が少ないところ、赤い看板の居酒屋があるところ……そんなとこあんの?」

「分かるなら苦労はしない……恐らく町外れと都心の境目あたりにいるんだと思う」


といっても移動はどうするのか。

もう時間を無駄にできない。

でもリクの居場所も分からない。


「こういう時に限って打つ手無しかよ」


ナオヤもコースケも半ば諦めていたが、そこで全く後ろ向きになっていなかったのはシュウだった。


「うまくいくか分かんないけど、俺走るよ」

「「え?」」


唐突なその言葉に対して「え?」は妥当な返事だろう。


「さっきのでなんとなく感覚掴めた気するし、俺結構速く動けるからね。もっかい地図見せて」


ナオヤのスマホをじっと覗き込んでからシュウは1人で頷きながらストレッチを始めた。


「マジでやる気か……」

「でもシュウ1人で行って大丈夫なのか?」

「何言ってんの。ちゃんと2人も運ぶよ」


コースケとナオヤは開いた口が塞がらない。


「地図も何となく覚えたし、何とかなるだろ」


そうしてシュウは自分の頬を叩くと、その力を使う。

本当に感覚を掴んだのか、自らの意思で力を発動させることに成功した。

徐々にコースケとナオヤの動きがゆっくりになっていき、やがて果てしなく静止に近づく。


「よし、ここまでは上手くいったな」


シュウはまずコースケを持ち上げてみようとするが、これが意外とスッと持ち上がった。

だがその状態で走るとなるとその場に置き去りにしてしまう。


「どうしたもんか」


シュウもそこまでバカではなかった。

常人がそこまで速く動くと、空気の摩擦や抵抗による圧がかかり、意外とあっさり死んでしまうかもしれないということだ。

シュウも力を使うたびに服が所々焦げ、靴はとっくに灰と化して散ってしまっている。


「スピード落とせば大丈夫か」


音速を超えない程度でシュウは2人の腰あたりに手を掛け、走る時の勢いで上手く釣り合うようにすればいいと思いついた。

シュウは一旦力を解除した。


「ちょい気分悪くなると思うけど我慢してね」

「「え?」」


あらかじめシュウは忠告をしておく。

少し悪寒がしたコースケとナオヤだったが、シュウに質問をする隙もなかった。


「気分悪くなるってど——」

「おいおい、どうやって運——」


すぐ力を発動したシュウは2人が話しながら止まっていくのを見て、笑いを堪えきれなかった。


「ブフッ……すまん2人とも。許してちょ」


シュウは2人の腰とお腹の境界あたりに腕をかけ、記憶の地図を頼りにリクのもとを目指して走っていく。

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