下校—シュウの場合
シュウは目を覚ました。
薄暗くて冷たい、狭い部屋の中。
脳に直接届くような、むせ返るようなツンとした匂いが漂う部屋の中。
「これで良かったっけか?」
映画とかでよく見るような針のついていない注射器のようなものを持った、ゴツいマスクを付けたヤツがシュウのほうを向くと、ちょうど目が合った。
「何だ、起きてんのかよ。ヘッ、どうなるか見物だぜ」
シュウはぐちゃぐちゃな顔でやめてオーラを出すも通用せず、頭を押さえられ首にその注射を打たれた。
「うぅ……っあああああ!!!!!!」
打たれたところから1秒も経たず全身に痛みが回っていく。
全身が痙攣し、体の制御が完全に効かない。
「ああああああ!!!!!痛い!!!痛いよぉ!!!」
苦しみもがくシュウを見て、マスクの男は違和感を覚える。
「あれ?何で全身痙攣して……あっ、打つやつミスった……終わったァ……」
マスクの男は頭を抱え、よろよろと後ずさりする。
そして唯一の光源だったライトにぶつかり、倒れたライトが薬品を運ぶローラーかごにぶつかって割れ、放電が起こった。
「あぁ!まずい!やめろこの!!」
慌ててマスクの男は倒れたライトをどけようとするも感電し痙攣して結局部屋中に薬品をばら撒いた。
「もう……どうにでもなれクソが……っがあああ!!!」
自暴自棄になった男は放電中の部屋でもなお苦しむシュウを無視して滅茶苦茶に部屋を散らかすと、電気を帯びた薬品にかかりその場で倒れてしまった。
一方シュウは痙攣が収まり、意識はハッキリとしていた。
シュウもかなり薬品を浴びたが気絶することはなく、どうやってここを脱出するかを考えていた。
「どうすればここか、ら……」
そう考えていた頃にはシュウは外にいた。
しかも大きな交差点のど真ん中で、ボロボロの服を着たまま裸足で立っていた。
「は?何で?どうなってんの?」
シュウは周囲の人々にスマホを向けられ、プライバシーフル無視で写真や動画を撮られまくった。
「あれ?そう言えばリクとコースケとナオヤは?」
もともと4人で下校している途中だったのだ。
気づいたら変な部屋にいたかと思えば今はこうして交差点のど真ん中に立ち尽くしている。
「……とりあえず帰るか?」
スマホもバッグも全て無くして今は何もできないと悟ったシュウは、嫌々ながらも歩きで家を目指すのだった。