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9:林間ACademyでACtion-A Coward(2)

昼食が終わり、皆でゴミや火の始末をする。

この後の予定では、ここから少し歩いたところにある湖畔散歩、キャンプファイアー、キャンプ施設に併設された温泉に入浴となっている。


午前中、お昼とまともにCさんと会話しないまま湖畔散歩の約束…

正直、憂鬱(ゆううつ)だ。


折角、ケー君が僕を思ってCさんを誘ってくれて、Cさんも一緒に散歩しようと誘ってくれたのに、僕が…


僕のせいで全てを台無しにしてしまう…


湖畔散歩の時は無理をしてでも、Cさんに嫌な思いをさせないように努力しなきゃだ…


ゴミ捨てが終わり、薪と炭も燃え尽き始めた所でケー君がグループの皆に声をかける。

「なぁ、湖畔散歩だけど、燃え残りを監視する係ももう暫くは必要だろうし、二人ずつに別れて順番で行こうぜ。俺はオーと写真撮影する予定だから、AとCさん、アイとティーちゃんが先に順番決めてくれて良いぜ」


「なー、別にCと一緒にあたしらもい、ムグッ」

「別々ね、了解了解。じゃぁ、先にAとC行ってくれば良いんじゃない?今なら人も少ないし、ゆっくりできるだろうし」

アイさんがティーさんの口を抑えて早口で答える。


人が少ないのは助かるかな…

正直、今の精神状況で他クラスでも人の目があると辛くなりそうだ…

Cさんを誘ってた人は多かっただろうし、尚更隣を歩く僕を見てCさんに口さがない噂が上がるかもしれない…


「うん、そう、だね…じゃぁ…Cさん、先に行かせて貰おうか」

「え、う、うん…」

僕の言葉にCさんは躊躇うように頷いた。


「じゃ、じゃぁ、皆、先に行かせてもらうね?ありがと」

Cさんが皆を見回し、最後にアイさんに感謝を伝えた。


そして僕とCさんは散歩コースへの道に向かい歩き始めた。

お互いに何も話さず、今朝まではあれほど温かく、居心地の良い空間と思えたはずだったのに、僕のせいだ…


それ程離れていないはずの散歩コースが嫌に遠く感じる。俯きながら僕は歩みを少し早める。


「あ、ま、待って…」

Cさんとの距離が、気付いたらお互いが手を伸ばしても届かない程に離れていた。

それこそ、今の僕達の状況を表しているかのような…


何をやってるんだ…

さっき、Cさんに嫌な思いをさせないって思ったばかりだろ…


「ご、ごめんね、Cさん。考え事をしちゃってたよ…ここから散歩コースだね。綺麗で落ち着けると良いね」

「うぅん、気にしないで…2人でゆっくり見れると良いね」

「そうだね…」


さっきまでこの空気に耐えきれそうになくて早足になったなんて、言えるはずもない。


僕は俯きながら前を向き、Cさんに上手く話題も振る事も出来ずにコースを歩く。


Cはそれを見てぽつりと言う。

「ごめ…ん…わ、私が、何か、しちゃったんだよね…」


Cさんの震えるような声で僕はまたやらかしてしまったのだと気付き、声をかける。

「そうじゃ、そうじゃない…違うんだ…だけど」


「だけど、なに!なんで、バス乗った時から顔も見ないの!お昼だって私の事避けてる!今だって私の事忘れて1人でどんどん進んでる!なんで!」

悲痛な声が湖畔に響き、周囲に誰もいなくて良かった、と少しだけ自分勝手な余計な事を考えてしまい、間が開いた事で言葉を返すタイミングを逸してしまった。


「なんで…そんな、困ったような顔したり、避けるくらいなら…昨日、断ってよ!馬鹿!」

Cさんは涙を流しながら思い切り僕にビンタをした。


「っつ…」

「あ…ごめ…うぅう…もう、無理、耐えきれない…私戻る…!」


Cさんを泣かせ、ビンタされ、1人取り残された自分。

なんて惨めな状況なんだろうな、と立ち竦みながら湖を眺めていた。


暫くしても結局、Cさんにどう謝れば良いかも思い浮かばず、今のままだとまともに顔も見て言葉を伝える事もできないと気付き途方に暮れる。

ただいつまでもここに居ても仕方がないので、Cさんと歩くはずだった散歩コースを1人でトボトボと歩く。


静かな湖。

遠くから僕等の、今は僕一人だが、後から自由時間で散歩に来た人達を対岸から眺める。


自分の顔は今どんな顔でいるのだろうか、と湖を覗き込む。

そこには…泣きそうなで悲痛な、情けなく愚かで、臆病な自分が映り、湖面の藻や苔が妖しく揺らめき、自分の心を表している様に見えた。

揺らめいた湖面で見えないだけで泣いていたのかもしれない。


だが、そんな自分をまざまざと見せられた事で意味などないのに湖面に石を投げ入れる。


続け様に何度も投げつけ、ドポンドポンと音を立て、黒い感情に叩きつける。


何度投げたか分からない程の湖に、もうやめなければと最後に思い切り投げようと、助走をつけ、足を踏み出し…Aは、湖に落ちた。


そしてずぶ濡れの僕は湖を後にし、僕らのテント区画に戻った。

そこには女子グループは居らず、オー君、ケー君は気まずそうに僕を見やり、濡れた僕を気遣い、温泉に行こう、と誘ってくれたのであった。

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