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2:A画を見るCさん

終わったー…

今日も学校お疲れ様、僕。


さて、帰宅部よろしく早急に自室で新しく買ったラノベ、「陰キャ実践至上主義の学園へ」を読まねば!

この作品、陰キャが自分を変えるべく何事も実践を謳う学校に入学し、周りが陽キャばかりで四苦八苦しながら学園生活を送っていく…

その中で強制二人一組と強制グループを組まされるイベントで陽キャ克服、徐々に近付く距離感。

多過ぎだろと思う程の強制イベントによる甘酸っぱい青春の大洪水が売りなのだ。


ある程度の巻数が溜まったタイミングで読みたい派なので2期アニメ化決定で思い出し、遂に手を出した。


帰って既刊10巻を楽しむぞぉ!

1回目はわくわくさらっと、2回目で細部の描写を取り込み完璧な脳内イメージの作成を完了させる!


うへ、うへへ…


「A君!暇でしょ!放課後付き合ってよ!」

「へへ…」


唐突に腕を引かれ、現実に戻った。


「A君!き、い、て、ま、すー?」

「うわぁ!!Cさん!?て、ててて、手!」

「ニヤケ面で私を無視したからですー」

ラノベに意識が行き過ぎてニヤケ面を晒してたとか…手も握られて恥ずかしい…


「ご、ごめんって!だから、手を離して!」

「じゃぁー…無視したお詫びで放課後付き合ってくれるなら手を離してあげる!」

「わ、分かったから手を…!そ、それで何するの?」


「ナイショ!ふふ!」



放課後の予定が自室でラノベ読書から映画鑑賞に代わり、Cさんに連れられて映画館へ来た。


「あ、Aくん、はい!」

ワイヤレスイヤホンを差し出すCさん。


「な、何故イヤホン?」

「作品(と席)はーお楽しみに!分かっちゃうかも知れないけど考えないでね!来るまでの間も黙ってた訳だし!」


「い、イヤホンCさんので、い、良いの?」

「んー?え!?もしかして汚い!?」


あ、誤解させてしまった…でもいつも慌てるのは僕だから新鮮ではあるけど…


「あ、そ、そうじゃなくって!ぼ、僕が使って嫌じゃない?って事です…」

「問題あり…ません!そこは気にしてたら貸さないって!もう…」

真顔で少し間を開け、パンパカパーンと問題ないと笑顔で言いながら、最後は少し髪をイジり口籠る様に呟くCさん。


Cさんが髪をイジる仕草、教室でも時々見るけど…好きだなぁ…

ってそうじゃない!イヤホンだ!


ひ、人のイヤホンを使うのって気恥ずかしいというか、Cさんの体に触れてた物だからと言うべきか…

な、なかなか耳に入れ辛いものがあるぞ…


「い、イヤホンをまじまじと見られるのは、そのー…もう、嫌じゃないならさっさと入れる!」

手渡されたイヤホンを掌に置いて固まっていたらCさんの手で持っていかれた…と思ったら耳に!?


「あふ、ぁ…」

変な声が出てしまった…

Cさんはイタズラが成功した子どもの様で、しかし少し赤らみ妖艶な笑顔で…


「刺激が強くて感じちゃった?」

とCさんがまだ音の出ていないイヤホンを入れた耳の横で囁やいた所で、僕の脳は処理過多で止まった。


イヤホンから流れるクラシックに耳を傾け、茫然自失に手を引かれていたら、映画の券と席がいつの間にか揃っていた。


「はい!とうちゃーく!ほい、イヤホン回収!」

「んぁ!」

「お客様ー?館内で大きなお声は出さないで下さいね?」

ぼーっとなっていた僕はCさんにイヤホンを引っこ抜かれた感触で、つい声が漏れCさんに口の前で人差し指を立てられシーッとされる。


「ほらほら、席行こ!席位置は真ん中後ろ寄り!」

「え、ちょ、ちょっと待って!こ、これ!?」

どもりながらも周りの座席もそうなので僕は確認をしてしまう。

そんな僕にCさんはあっけらかんと答えた。


「カップルシート、でーす!周りから見えないよう囲われてますよ!」

な、なんでカップルシート!?

こ、ここ、心の、じゅ、準備が、できてません!


「し、Cさん!か、かかか、カップルシート!?」

「A君、おもしろい顔してるよー?別にカップルだけで利用する人ばっかりじゃないしー。それとも…何か、しちゃう?」


あばばばばば…!?と赤面して手を振り首を振り、声にならない否定をする。


「ほらほら!座ーりましょっ!」

ブンブンしている手を引っ張られる。


動揺していたせいもあって体に力が入っておらず、足がもつれ倒れ込む。

Cさんも思ったよりも力がかかっていない僕を引っ張ったのでシートに体を横たえる様になった。


このシーンだけを切り取れば、映画館のカップルシートで彼女を押し倒し、映画を見る前から良い雰囲気でイチャついているように見えるだろう。


「あ…ご、ごめん…」

目の前で彼女の可愛らしい唇から漏れ出た呟くような声。

Cさんにとっても驚きだったのだろう。顔が凄く赤い。多分、僕はもっと赤いだろう…

じりじりと手を、足を退くために動かす。


「ひゃっ、あっ、んっ…ちょ、そんなゆっくり…擦らないで…」

「うわぁ!?ご、ごめん!?」


普段の彼女の声とは違う、少し湿っぽくも聞こえる色香のある声音…

そんな声を聞いて、急ぎ体を引き剥がした。


上映までの待ち時間、殆ど会話等もせず時折目があい、お互いに視線を外す。

上映が始まっても映画に意識を持って行けず、横にいるCさんへ向いてしまった。


そうして映画は終わり、ロビーへ。

僕は映画の内容が殆ど記憶に残らなかったな…

世界的に有名な監督が推してたアニメ映画だったはずなんだけど…意識が切り替えられなかった…


「Cさん、あの、映画面白かったね。そろそろ、帰ろっか」

「…」

Cさんからは何も返って来ない。

き、気まずい…


と思った矢先、

「A君、はいチーズ!」

「え、うわ!?チーズ!?」


腕をCさんの胸に抱かれ、カメラで撮影された。

さっきまでの気まずさはまるで嘘のように、Cさんが元に戻る。


「ほらほらー、にっこりにっこり!」

「Cさん、む、腕、腕ぇ!」

連続で何度も僕の腕を抱いたままポーズをとるCさん。


そんなCさんに僕は赤ら顔で撮影され続け、暫くして帰宅するのであった。

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