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ホシのキセキ  作者: 木になりたかった人間
エピローグ
6/8

お誘い

「バンドやろ!」

 なんとなく予期していたものはあった。理由はよく説明できないし。どこからそう感じたかも分からないけど、この人ならきっとそうする。そう確信させる何かを彼女は持っていた。っていうかあの視線はこいつのものでしょ。


 今にも鼻がぶつかりそうなほどの距離にある熱気を帯びた顔を見て、私は気づかれないようにそっと後ろに引いた。


「えっ、いやでもっ」

「やろうよ!!!」

 速い。もごもごする暇も与えてくれなかった。

「そういうのはっ」

「絶対に楽しいって!!」

「わたしにはむっ」

「どう!!」

 人の話を最後まで聞け!

「ものすごいわくわくっ」

「やらない!!」

 今日一大きな声が出た。すかさず彼女の顔を見たが、落ち込んでいる様子はなかった。

「私はやらない。」

「なんで?」

 心底不思議そうな顔をして、彼女は首をかしげた。

「苦手なんだ。人の視線を集めるのが。」

「なんで?」

「なんでって、それは」


 どう言えばいいかわからなくて、黙りこむ。でも彼女はそれをうっとうしがることも、嫌気をさすこともなく、ただまっすぐ目をこちらに向けた。

 こういうのはちゃんと聞いてくれるんだな。

「空気が、形を持つんだ。こう、私をかこむようにっ」


 そこまで言って、また、言葉は私を拒んだ。

 彼女が、木漏れ日のように、まっすぐで、穢れのない彼女の目が私を突き刺した。言葉で、自分を繕うことを許してくれなかった。きっとこんな事をしたら、隙間から光が漏れて、私はたちまち焼かれてしまうだろう。

噛み締めるように、自分にぶつけるように、私は言った。

「弱い、からだ。」

「弱い?」

「うん。弱い。」

「………………」

「うーーーーーん。」


 彼女は明後日の方向を向いてしきりに唸り始めた。そのうち唇を尖らせて、腕まで組み始める。考えているらしい。分かりやすい人だ。何行分かもわからない唸り声がずっと続いた。

「別にそんなことねんじゃねーの。」

 突然、隣から声がした。

 視線は本から外さないままだったけど、声はしっかりと響いた。

 

 あぁ。

 あたたかい。

 

 よくわからない人だけど、ちゃんと、暖かい。

「あっ!さっきのピアノの人だ!」

 長い唸りを中断されて、彼女は我に返ったらしい。そして忽然目をキラキラさせる。

「一緒に!バンド!やろ!!」

 やっぱりそう来たか。

「やらない。」

すごい。一発で切り返した。

「なんでよ!」

 すると彼は本から視線を外して、こっちに目を向けたまま、宣言するように言った。

「コンクールで優勝するからだ。」

一切の揺れもない。一本の大木のようなまっすぐさだった。

そしてすぐに彼は視線を戻した。

「なっ!コンクールなんかよりバンドの方が楽しいだろっ!」

 青筋が見えた気がする。

 「はぁ?」

 あっ。これバトルが始まるやつだ。


「舞台の照明。重たいピアノの触感。ちょっと古びた木のにおい。張り詰めた空気。これから演奏する高揚感。これのどこが楽しくねーんだよ!」

 びっくりした。あんなに静かな人が、こんなにいっぱい一気に喋った。全力だ。

「バンドだって!輝いてて!緊張してて!すごいよ!楽しいよ!」

 語彙力。

「別にバンドが楽しくないって言ってるわけじゃない、ただジャンルが違うから俺は向いてないって言ってるだけだ!」

「なんでそんなこと言いきれるんだよ!そんなのやってみないとわからないでしょう!!」

「やらなくても分かるものがある、例えば俺はバンドに向いてないとかな!」


 見る見るうちに論争は激化していく。何とか止めなければ、そうあたふたするとき、チャイムが私を助けてくれた。


 ではオリエンテーションの時間でーす、椅子を持って移動して下さーいという先生の声の後、みんなガタガタと動き出した。私も準備を進めると、すかさずうしろから奴がやってきた。

「ばぁぁんぅぅどぉぉーー」

 ちょっと方向性を変えてきたらしい。しかし私はそんなのでは動じない。

「やらないってさっき言ったじゃん。理由も。」

「でも、やなぎは違うって言ってたよ。」

誰だ?あっ、柳川さんか。そういえば初会話の時も私をほたるって呼んでたな。なんだこの無駄に高いあだ名力は。


「でも苦手であることに変わりはないよ。」

「そんなん克服すればいいじゃん。」

「そんな簡単に言われても……」

 会話できる気がしない。

「うん?でも中学校の時は合唱部だったじゃん。発表の時とかは大丈夫だったの?」

「それとこれは全然違うよ。合唱は人がいっぱいいたけど、バンドは一人だ。」

「バンドもいっぱいいるよ。」

「でも歌ってる人は一人しかいない。」

「……一緒に歌う?」

「そういうことじゃない!!」


 こんな感じのやり取りは一日にわたって行われた。一日の授業が終わってそろそろ喉が嗄れてきたので、本気でべったりくっついてくる彼女をはがそうかと思い始めたころ、柳川さんが本を外して、こちらに目を向けた。

 なんだ?

「灯川。」

「はい。」

 思わず返事をした。

「俺の家、来る?」

章設定というやつに手を出したら全部エピローグになっちゃった。ちょっと誰かタスケテ、、、

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