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ホシのキセキ  作者: 木になりたかった人間
エピローグ
5/8

自己紹介

  世の中とは奇妙なものである。おかしな出来事も、おかしな人もたくさんいる。しかも怪奇なそれらは磁石で惹かれあうかの如く集まっていくのだ。腐れ縁というか、世間は狭しというか。


 登校初日に遅刻した上に、その理由が道中での老婆助けとか、現実に存在するどころか、目の当たりにしてしまうなんて、なんとも面白いことが世の中にあるものだな、と思っている今この頃、私の後ろの席で茶髪で短髪な少女が息を切らしている。ちなみにセーフにしてもらえなかったけど、おばあちゃんを助けたのは信じてもらえたらしい。

 それは信じるんだ。


 そういえばあの時先生がこっちの方向を見ていたのはこの人が遅刻したからか、なんて独り合点しながら、先生の説明を聞く。どうやらクラスで自己紹介をした後にオリエンテーション的なことをするらしい。

 自己紹介。

 うっ。心臓が痛くなってきた。あんな伝説を残した後に自己紹介をするなんて、考えるだけで胃まで痛くなってなる。


 隣を見た。相変わらず彼は我関せずに平静と本を読んでいた。そういえば、あんな轟音が鳴り響いた時も顔すら上げなかった気がする。本当に肝が据わっているというか、反応が薄いというか。


 自己紹介。一体どんなことを言えばよいのだろうか。第一印象を付ける大事な場だ。台無しにしてはいけない。とりあえず、あまり目立たないように変なことを言わないようにしようとか、あわよくば良い印象を与えるように、笑顔!笑顔がんばろうとか、趣味の合う人も見つかるといいなとか、そういうことを考えている間に、先生はどんどん自己紹介の場を整えていった。壇上に上がらずにその場で行うらしい。助かった。

 一人目。

「青田 麗奈です。桜中学校から来ました。中学校の時は書道をやってて、高校からは何をやるかまだ決めてないんですけど、ゆっくり決めていきます。えっと、一年間よろしくお願いします。あと!ジャナーズが好きです!」


 危ない、自己紹介が終わる前に拍手するところだった。こんなところでフェイントを入れてくるとは。でも、テンプレートが出来た。あとはこれに従って無難に……。

 二人目。三人目、四人目……あっという間に私の番がやってくる。緊張で声が裏返らないように精一杯気を付ける。

 「灯川 蛍です。出身中学校は北中学校です。中学校の時は、合唱部でした。」

 ガタンっ

なんか後ろで物音がする。


「えっと、部員の人数がとても少なかったです。高校からは、音楽が好きなので、それに関わることがしたいです。仲良くしてやってくださいよろしくお願いします。」

 ふうー。何とかこの場を乗り切った。それにしても、なんだか視線を感じるような。

 がたっ。

「陽村 幸です!東中学校でバレーやってました!!バレーめちゃくちゃ得意です!あと遅刻日数ゼロだった!」

 根に持っているらしい。

 「高校では、」

 スーッと息を吸って、彼女は言い放った。

「バンドを、作ります!!!」

 ものすごく輝いた声で、この世界の幸せと喜びをすべて手にしたかのような瞳で、彼女は言った。

 全身から光を放つような彼女の眩しさに、目がくらみそうになりながらも、心の奥がほんの少しざわめく。なんだろうこのきらきらは、この眩しさはなんていうんだっけ。


 思い出せないな。

 がたっと音を立てて、彼女は座った。

 ちょっと荒れた鼻息が後ろから聞こえてくる。

「ふふっ」

 あまりの眩しさにちょっと笑ってしまった。

 なんかいいな。こういうの。 

 隣の席の人の自己紹介はというと、いたってシンプルなものだった。

「柳川 黎。西中です。小さいころからピアノを弾いてきました。今後も弾いていきます。よろしくお願いします。」


 ふーんピアノを弾く人なのかなんてぼんやりしながら聞いた。

 それにしてもやけに後ろから視線を感じるような気がする。気のせいだろうか。

自己紹介が終わると同時に授業の終わりのチャイムが鳴った。起立、礼。そしてクラスのみんなが友達探しに一斉に動き出す。隣の人を除いて。はっしまった出遅れると思ったが、なかなか動けない。ここでも自分の性格があだになる。どうしよう。

 うん?隣から熱を感じるな。

「ねっ!ほたる!」

「わっ!!」

 びっくりしたっ!顔近!

「バンドやろ!!」

「はい!?」


 こうして私の高校生活が幕を開けたのである。


ついに始まりました。物語のスタートです!

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