遅刻
帰りは静かだった。猫はいないから視線を引き付けることはなければ、柳川さんと話すこともなかった。話したいことがなかったわけじゃない。むしろ話したいことでいっぱいだった。
でも、どう話せばいいかが分からない。最初はこの子を飼うつもりはなかった。そもそも自分に飼えるかわからない、責任が取れるかもわからない。断るべきだったのかもしれない。少なくともいつもならそうしているはず。私らしくもない……
彼はこれをどう思うのだろうか。何も相談せずに勝手にそう言ったから怒っているのかもしれない。飼いたそうにしてたし。っていうかあのまま任せた方がよかったんじゃないか?絶対にそうだ。どう考えてもあのまま任せた方がよかった。後悔が頭をよぎって、はぁーと一つため息をつく。
「キーンコーンカーンコーン。」
聞きなれないチャイムの音が校舎中を響き渡った。おそらく予鈴のチャイムだろう。授業まであと五分ある。周りを見回してみたが、廊下には誰もいない。登校一日目ということもあって、みんなしっかり時間内に教室に着いているらしい。静まり返った廊下に、二人の足音だけが反響する。
私はまたちらっと隣の人を見た。相変わらず彼は前方をまっすぐ見据えて歩いている、そんな彼を見て私はちょっと俯きたくなった。彼は、何を考えているのだろうか。
教室のドアを開ける。ガラガラとかってに戸が音を立てる。すると、すかさずみんなの視線が一斉に私たちに集まった。鋭いわけでも、熱いわけでもないのに、いたたまれなくなる。私はこの不快感を振りほどくようにして早足で自分の席に戻った。
しばらくして、教室のドアがガラガラと音を立てて開き、そこから若い30代の女性の先生が現れた。おそらくこの人が私たちのクラスの担任なのだろう。
肩に少しつく茶色がかったセミロングの髪の毛に、化粧っ気のない質素な装い。しかし顔立ちは整っているので、全体的に清潔感が醸し出されていた。もしくは簡潔な美しさというべきだろうか。
低いヒールの靴を履いた彼女はかつかつと音を立てながら教壇に上り、教室を見回した。静かに、でもゆっくりと教室全体を確認するように、廊下側から順番に見回して、こっちを見て、止まった。
何だ。表情がよく読めない。少々戸惑っているように見えないことはない。もしや猫伝説が早々に先生までに伝わってしまっているのではないかと不安になったが、目が合わないからそうではないのだろう。
何だ。一体何なんだ。疑問が頂点まで登っていこうとしたその時、チャイム音が鳴り響いた。授業開始のチャイムだ。先生もそこで視線を戻した。
「こんにちは。私が今年度、君たちのクラスを任されました、藤田楓です。まあ、まだこの学校に入学してから一日もたってないので、わからないこととかいろいろあると思います。といっても、私もこの学校に今年初めて転入したので、同じく新一年生みたいなものですが、今後仲良くしていけたらと思います。えー、今年一年間よろしくお願いします。」
ぱちぱちぱちぱち。
よかった、怖い先生じゃなさそうだ。
ほっと心を撫でおろした、その時だった。
ガラガラガラガラガラ!!!
教室全体ちょっと揺れて、これでもかっていうくらいの轟音とともに、短髪の女の子が飛び出してきた。
「遅れてすいません!!来る途中におばあちゃんを助けていたら遅れてました!!!セーフですか??!!」
こりゃまたよく響く美声だった。
「はっ」
どこからともなく間の抜けたような声が聞こえる。教室は息をのむように静まり返った。これにはさすがの先生も肝を抜かれたらしく、目をポカーンと開けたまましばらく口をパカパカさせている。そのまま3秒ほど空気が静かに流れる。そして先生はついに言葉を取り戻したらしい。
「セーフなわけあるか!!」
やっぱり小説難しい、、、
うまく書けない、けど頑張ります!




