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02 めざせ!新聞部のヒーロー

ありがとうございます。

「キャップ、このままじゃダメだと思うんですが……」

「どうした文太」

「“星空新聞”も定期新聞になって2ヶ月。だけど……たった3人だと……ちょっと寂しいというか……悲しいというか……」

「そうだよ、私もこの辺で、ガツンと購読者を増やしたいよ」

「私だって、増やせるものなら増やしたいけど、ナオちゃんは何かいい考えがあるの?」

「私の考え?……そりゃあ……私なら手あたり次第に家庭訪問して、新聞買ってくださいって、頼んで歩くってのはどうかな?……」


 新聞部きっての行動派、恵泉直子(けいせんなおこ)は運動部の方が似合いそうなショートカットの活発な女の子。考えるより行動あるのみの心情をモットーとし、新聞部の行動隊長でもある。困った時は、何でも引き受けてくれる勇ましいところもある。


「ウーん、ナオちゃんなら、できるかもしれないけど……私はちょっと……いやかも……」

「えー?ミッちゃんも一緒にやろうよ~、2人でさ~、あちこち家庭訪問して、玄関でダンスなんか踊ったりして、上手かったら新聞買ってって言うの?ダメかな?」

「……たぶんダメだと思う……きっと通報されて……怒られちゃうやつだよね、キャップ?」

「うん、そうだね、ナオちゃん、それだけはやめてね!」


 放課後の部室は、時々このような話題になったりする。少なくても、新聞部のみんなは、定期購読者を少しでも増やした方がいいと思っている。


 先ほど危ない訪問販売の案を却下した増田満乃(ますだみつの)は、新聞部の“良心”とも“良識頭脳”とも呼ばれている。黒髪を後ろでまとめ、黒縁眼鏡をかけている様子は、まるで社長秘書のように言われるが、時々コンタクトにすると、そのつぶらな瞳に見とれる男子が多数出現するくらい可愛いのである。

そんな彼女が、思い出に浸るような眼をしてつぶやいた。


「去年は、何も考えずに、ただ一生懸命に新聞を作っていただけだったわね……」


 副部長の作田文太(さくたぶんた)もそれに続けた。


「俺なんか、陽太(ようた)に言われたことをただひたすらにキーボードに打ち込んでいただけだったなあ」


「でも、楽しかったわ。出来上がってくる新聞やパンフレットをあちこちで配っていると、いろんな声を掛けられて……そして、最後にみんな“頑張って”って言ってくれるの……」


 すぐに後先考えずに行動してしまいそうな直子も、懐かしそうに去年のことを振り返った。


「よくみんな僕の考えについて来てくれたと思うよ。僕が、この星ヶ空学園の高等部になったら、絶対に新聞部に入ろうと思っていたんだ。でも、去年、僕が高等部の1年になった時、新聞部には誰も部員がいなかったんだ……」


 幼馴染で陽太のことをよく知る文太も、この希望については知っていた。


「先生も言ってたよな。ここ数年、こんな地味な部活をやる高校生はいなかったって」


「ああ、でも、僕は知っているんだ。新聞部が、事件のスクープを記事にして、号外を配っているあのかっこいい姿を……」


 朝日奈(あさひな)部長は、目を閉じて何かを思い出すようにうっとりとしながら話した。直子は、すぐに聞いた。


「そんな号外を配っているのを見たことがあるの?」


「ああ、記事の内容はわからないが、僕がまだ小学生だった頃、この星ヶ空学園の新聞部だったんだ。間違いない…」


 確信に満ちた朝日奈部長には、その時の様子がはっきりと瞼の裏に焼き付いていた。もう部長にとって大事なのは、新聞記事の内容ではなく、号外を配っている新聞部員の方だった。


「お前は、よく新聞部の話をしてたけど……変だよなあ?……俺もこの星ヶ空学園の小学部からずうっと一緒だったのに、そんな大騒ぎがあったことは知らないんだよなあー」


 同級生で幼馴染の作田文太副部長は、ちょっと不思議そうに首をかしげていた。


「お前、やっぱりそん時、風邪でもひいて学校を休んでたんだよ、きっと……まあ、そういう訳で、1年の時、新聞部が無いのなら自分で作ろうと思って、お前たちに声を掛けたのさ」


「まあ、みんな幼馴染みだったし、太陽君の言うことなら間違いないからって、すぐに賛成して手伝ったけど、ほんと、良かったよね」


「ナオちゃんは、直感で動くけど、感性は人一倍鋭いから、楽しいことや嬉しいことには敏感にわかるんだもんね。だから新聞記事のネタ探しの時も、ナオちゃんがいいと思った事を書けば、大抵の人は喜んで読んでくれたしね」


「1年の夏ごろから新聞部の活動を始めて、だんだんと新聞を作っていくうちに、校長先生から学校のパンフレットを作ってほしいと依頼されて作ったのが大当たりしたのよね」


「いやあ、あれは、満乃の力が大きかったよ」


 文太が、思い出して言った。


それは、満乃の“良識頭脳”がフル回転したのだった。


星ヶ空学園の“売り”になる教育活動だけでなく、星ヶ空学園がある空町銀河商店街を中心に学校と地域商店街の深い繋がりを人情味あふれたパンフレットにした方が見る人の心を魅了すると考えたのである。


「そうそう、あのお陰で、商店街のおばさん達とも仲良くなれたし、良くしてもらったわ!」

「俺なんか、今でも食堂へ行ったら、おまけしてくれるんだぜ」

「この町に下宿したり、引っ越してたりしてくる人も増えたらしいわよ」

「あのパンフレットね、実は電波にのせて全世界に流したらしいの…」

「へー、宇宙にも流れてたりして…あははは……」


 満乃が、少し照れながら続けた。


「そして、あのパンフレットのお陰で、今年の星ヶ空学園の入学者がものすごく増えたんでしょ」

「そうなんだ。そして、その成果として、定期発行権を獲得し、その収益も受けてもいいことになったんだ。おまけに、部員も増えたしな」


「そうそう、我らが新入部員の(ひめ)ちゃんね」


 “姫ちゃん”こと月野姫良(つきのひめよ)は、とても照れ屋ですぐに部長の後ろに隠れて、顔を赤くした。


「……ど、どうも…」


 それでも、いつもみんなの話をよく聞き、楽しそうにしているし、新聞部にもすぐ打ち解けて活動していた。


 月野姫良は、2年生から編入してきた。


背は、そんなに高くはないが、色が白く全体的にスレンダーでスタイルがよく、まっすぐな黒髪が腰まで長く伸びている。そんなにおしゃべりではないが、話しかけるといつも笑顔を見せてくれる。

校長の紹介で新聞部に入部し、レイアウト設計やイラストの才能がみられた。

 大人しく、あまり自分から意見を言うようなことはなかったので、ややもするとすぐに影が薄くなってしまった。

 それでも、みんなからは“姫ちゃん”と呼ばれ親しまれた。


「あ!そうだ!あの時、お世話になった、商店街のみんなに、また相談したらどうかな?ねえキャップ、行きましょうよ!」


 こういう時の直子の感性に基づく発言は、何より優先する。思い付きのようだが、膠着(こうちゃく)状態を打破するは、とにかく何でも行動力が一番である。


「え?何を相談するの?」

「決まってるでしょ!定期購読を増やす方法をよ!」


「そだね~、また、みんなで行ってみますか!」


 みんなを見渡し、にっこり笑いながらの陽太の言葉は、新聞部のみんなを新たな方向へまた導き出した。

それは、確かなリーダー性を持っている朝日奈陽太だから、みんなが賛同してついていく。


「よーし、そうしよー!」


ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
皆が幼馴染みで、同じ新聞部というのはかなり仲が良さそうですね。 まだ人物紹介の段階ですけど、キャラ同士の関係性がどうなっていくのか楽しみです!
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