表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

ファームの事情

 夕食をとった後、あたしはティシカさんに二階の客室まで案内された。ちなみに、フェルの方はエバを案内···っつーか、張り付いている。

「ここがアグネちゃんの部屋よ。とりあえず、ここを使ってね」

「ありがとう。えーっと、ティシカ···姫様?···オクサン?」

「ティシカで良いわよ」

 そう言ってもらえると助かる。こんな可愛い人に『フェルの奥さん』なんておぞましい呼び方はしたくないもんな。

「わからないことはなんでも聞いてね」

 なんでフェルと結婚したんですか?と聞きたい。

「それにしても、エバ様は本当にハクジャに似てるのね」

 ああ、やっぱそうなんだ。誰も突っ込まないから、あたしだけが思ってるのかと思った。

「それ、さっきから気になってるんだけど、なんで皆そこには突っ込まないの?」

 あんなに似てるのに、ティシカもフェルも、それを当然のことだと受け止めているような気がした。

「勇者様は、ディンハード王室の血を引いていらっしゃったの

 つまり、私たちのディンハード王家のご先祖様でもあるのね」

 初耳だ。あ、それで、勇者の名前もディンハードだったのか。

「多分、二人とも勇者様に似てるのね」

 あたしは微妙に納得いかなかった。仮にエバが本当に生まれ変わりだったとしても、そんなそっくりになるもんか?

 でも、もしそれが本当なら、勇者って相当イケメンだったんだな。

「なら、なんでハクジャはエバを嫌がってるの?」

 その理論で言えば、エバはハクジャのご先祖の生まれ変わりなのに。

「ハクジャは、エバ様のことが嫌いなわけじゃないよ

 ただ、王様のそばにあの年頃の男の子がいるのが辛いだけよ」

 ·············わけわからん。

 あたしは首を傾げる。

「ファーム王のお妃が、ディンハード王家から来たっていうのは知ってる?」

「なんとか」

 あたしの知識は村に閉じ込められた十四歳のときで止まっているが、王様が結婚したのはもう二十年以上前のことだから、それは知ってる。でも確か、王妃様って十年くらい前に病気で亡くなったよな。

「じゃあ、五年前、王太子のリグルヴィードが亡くなったことは?」

「え!?なにそれ、知らない」

 王太子って、王の一人息子じゃなかったっけ。王様が再婚してなければ、だけど。

「王妃様は、私たちの叔母にあたるのだけど」

 ティシカは懐かしむようにふっと笑い、

「素敵な人だったわ。優しくて、気品があって、私じゃとても太刀打ち出来ないくらい

 それに何より、陛下と深く想い合ってた

 そんな王妃様と、忘れ形見の王子を亡くした陛下の嘆きは未だに深いの」

 ティシカはそこでふと遠い目になり、

「ハクジャは叔母様ともリッドとも仲が良かったから、辛いのよね」

 リッドって、亡くなった王子様のことか。

「···ティシカは、気にしないの?」

「私たちの、叔母様と従兄だもの。気にしないっていったら、嘘ね」

 ···悪いこと聞いたかな。

 しかし、知らない方が良かったかもしれない。

 そんな話聞いちゃったら、さっきまであんなにムカついてたハクジャのことを憎みきれなくなるじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ