人生最大の衝撃
今まで旅についてきた護衛二人と侍女のおばさんとは城の前で別れた。
おばさんはエバの手を握って、身体に気をつけてくださいと何度も言っていた。ここに来るまで何度もエバを看病してたから、情がうつったんだろうか。
騎士たちもなんだか納得のいかなそうな顔をしていた。
心情的にはこちらの味方のようだが、宮仕え故、表だって支持も出来ないってことか。そもそも、同じ宮廷勤めなのに全面的にこっちを支持してるフェルがおかしいんだけど。
「こちらです」
フェルの案内でたどり着いたのは大きな家。ってか、屋敷?
「·····」
同じ魔道師なのに、あたしと違いすぎてむかつく。こっちは馬小屋で寝起きしてたぞ。
フェルはドアノッカーを鳴らして、
「帰ったぞ」
「はーい」
なんか、可愛い声が聞こえてきた。
無駄に立派な玄関扉が開いて···。
緑のドレスを着た、めちゃくちゃ可愛い女の人が出てきた。
二十歳くらいだろうか。お人形さんみたいな愛らしい顔立ち。黒のサラサラストレートヘア。色白だけど健康的。エバと違って。
でも、メイドさんにしては、立派なドレス着てる。
「全然似てないけど、妹さん?」
髪はエバと同じ黒、目の色は琥珀のようなとろりとした茶色だ。白銀碧眼のフェルとは全く違う。
それに雰囲気も、たとえるならそう、綿菓子。ふわふわしてて甘そうな感じ。フェルとは正反対。
可愛い女性は、ふわふわした笑みを浮かべて、
「はじめまして
フェルネラードの妻の、ティシカリーナ=ラディ=エルデと申します」
···········つま?
え?何?王都特有のギャグ?
「へー、フェルネラードって、結婚してたんだね」
なんでエバは平然としてるの?
呆気にとられるあたしを見てエバは、
「若くて結婚するのはおかしくないし」
いや、あたしは早いか遅いかとか、そういう話をしてるんじゃないんだよ。
「でも、こんなに早く戻ってきてどうしたの?
まずはお城に行くんじゃなかった?」
戸惑うあたしを置き去りにして、夫婦(?)で会話を始める二人。
「ハクジャに追い返された」
端的すぎるフェルの説明にティシカ··なんだっけ?さんは、まぁ、と息を飲むと、
「弟がごめんなさいね」
「弟?」
「ハクジャは私の弟なの」
あたしはティシカさんを見つめる。
似てない。なんなら雰囲気的にエバと姉弟だと言われた方がしっくりくるくらいだ。
それに、その弟だが、さっきあんたの旦那?に殺されかかってたぞ。
···とゆーか、
「王子のお姉さんってことは、ディンハードのお姫様?」
「そうよ」
················フェルがクビにならない理由が漸くわかった。奧さんが元お姫様だからか。
「で、どう脅迫して結婚したの?」
「貴様は私をなんだと思っている」
「あんな可愛い人があんたと好き好んで結婚するわけないだろ」
あたしはきっぱりと言ってやった。