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閑話② 変な女 (ガイ目線)

 俺はガイ。ソロ冒険者だ。巷で『漆黒一閃』とかいう渾名で呼ばれているみてーだが興味ねえ。

 ここ最近は魔物が活発化してきているらしいが、大して強くない、俺からすりゃあ雑魚ばっかだ。少しばかり期待していたんだがな。その魔物の活発化に伴い、隣国セフィロスで聖女召喚とやらが行われたと酒場で聞いた。わざわざ異世界から人間を喚び出すなんざ正直どうかしてるとしか思えん。

 

 ある日、ギルドからの帰り道を歩いていると若い女とぶつかった。どうやらよそ見をしていたらしい。特に興味もなかったんで少し喋った後すぐに宿へ向かった……んだが。


何故か女は俺を尾行してきていた。いや気配が丸わかりだから尾行と言うよりはただ俺の後をつけて来てるだけだろうが、だからこそ鬱陶しい。角を曲がり、女が追い越したところで声をかけた。聞くと宿を探していたから俺をつけていたと言う。……普通に聞きゃいいことだろ。なんでそんな面倒なことするんだよ。まあ、いちいち道を説明するのも面倒くさいから互いのこと考えたら後をつけんのが一番楽っちゃ楽か。


……仕方なく女を宿に案内することにした俺は、そのままババアに部屋の案内を押し付けられた。何が最後まで面倒見ろだ。職務放棄してんじゃねえよ。


……が、問題はその後、夕飯を食っている時にやって来た。

俺の周りが空くのはいつものことだから無視していたら、事もあろうに女は俺の正面を指差して座っていいかと聞いて来た。なんでここに座ろうとするんだこいつは。

このまま拒否してもいいが……なんとなく引きそうになかったので仕方なく頷くと女はなんの躊躇いもなく、それこそ初めから予定されていたことのようにあっさりと席についた。


女はいきなり礼を言ってきたかと思えば、唐突に冒険者についての話を始めた。なんとなくわかった。こいつは初めから礼を言うためだけに座ったわけじゃない。 ……拒否すればよかったと後悔したところで既に後の祭りだ。女の狙いは初心者の付き添いだということがすぐにわかった。金の話をすれば引くかと思ったが、全く引く気配がない。口では難しいと言っているものの、内心では真逆のことを考えているだろう。


結局、俺は女……ヒヨ・セリハラの依頼を引き受けることにした。特に面白え依頼もなくここ最近はかなり退屈していた。 ……まあ暇つぶしくらいにはなるだろう。


 その日を境に俺はヒヨと行動することになった。最初の依頼で氷魔法を使用していた。氷は使える者が他の属性より少なかった気がするが……まあいい。雑魚を数十体倒したところで実力を測れるものでもないが、初心者ってのを考えると及第点だな。


それにしてもこいつはいつまで町娘と同じ恰好してんだよ。 ……そういやこいつ金ねえんだっけか。まあ素材なら使わねえの大量に持ってるから、装備くらいは整えてやるか。持っていても増えるだけで使わねえし欲しくなったら取りに行きゃいいだけだしな。正直いらねえ。


で、ヒヨに装備のこと話してちょっと挑発したら面白がられた。やっぱどっかおかしいだろこの女。

だが、俺に対して宣戦布告した女は今までいなかった。変人だとは思うが……だからこそ、面白くなりそうだ。



シュライヤに装備の製作を依頼した翌日、依頼の最中に冒険者パーティがサラマンダーを連れて俺たちの方に逃げてきた。なんでこんなところにサラマンダーなんか出るんだか。これも魔物活性化のせいか。なんにせよ獲物が向こうからやってきてくれて万々歳だな。


サラマンダーを倒した後、追いかけられていた冒険者パーティと共にゼノンに報告しそのまま酒場で酒を飲んだが、会話の殆どが金のことだった。他に話題ねえのかこいつら。


 それからしばらくして、ヒヨの装備が完成したとシュライヤから連絡をもらった俺達がシュライヤの店に向かうと、随分と騒々しい音を立てていた。あいつ、依頼溜まると必ずこうなるんだよな。てことは店の中は……

やや憂鬱になりながらドアを開けるとそこには予想通りどっ散らかった光景が広がっていた。今回はいつも以上に歩く場所ねえな。いい加減店と工房別にしろよ。


ヒヨが着替えている間、シュライヤが声を顰めながら話しかけてきた。


「……何か嫌な予感がするんだよ。絶対になんかあるぞ。それこそ、関わったが最後災厄の渦中に飛び込むことになるほどの、何かがな」


災厄の渦中……ね。こいつがここまで言うなんざ随分と珍しい。俺も薄々思っている。アイツには何かとんでもない秘密があるんじゃねえかってな。

だが、それがどうした。ヒヨと連むまで退屈だったんだ。多少の面倒くらいならむしろ大歓迎だな。折角の暇つぶし、水を差させはしねえよ。

その後、別室から出てきたヒヨを見て俺は……似合うと思っちまった。赤が随分と映える女だな。まあ、多少は冒険者らしくなったんじゃねえの。あとは実力を上げていくだけだ。



 それからヒヨは順調に依頼をこなしていき、わずか一ヶ月でランクが上がった。昇格した以上、もう俺の付き添いは必要ねえだろう。 

……が、俺はヒヨと行動を続けることにした。ここ一ヶ月は想定外のことばかりで、確かに楽しかったからな。またつまんねえ生活に戻るよりヒヨと一緒にいた方が面白いだろう。


そう思って俺はヒヨに契約解除を言い出すと、ヒヨは特に取り乱すこともなくあっさりと受け入れた。報酬を断ったことに不満気だったが、理由を告げるとヒヨはおもちゃ見つけたガキみてえに笑った。まあこいつはこういう奴だわな。

俺がヒヨの名前を言った時、今まで敬語だったヒヨはタメ口で俺の名前を呼んだ。どうやらノリノリみてえだな。


それから、ヒヨは俺に冒険者になろうとした経緯を話した。想定外っちゃ想定外だ。確かにセフィロスで聖女召喚が行われたのは知っているが、まさかその被害者だったとはな。シュライヤの言っていたこと、早速的中した気がする。


とか思っているとヒヨがシネラに来るためにもらった金を返しにいくと言い出した。こういうところは律儀だよなこいつ。


 緋夜の転移魔法でミルノーラ砦に来た俺は砦に向かう夕日に照らされたヒヨの後ろ姿を見つめていた。無意識のうちに自身の顔に笑みを浮かべながら。


 俺は誰にも縛られねえ、縛れねえ。俺自身の選択でアイツの側にいることを選んだ。

 

だから……全属性持ちの異世界からの来訪者ヒヨ・セリハラ。俺を、退屈させんなよ……



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