クイズ★三本のマッチで作られた三角形が一つある。ここにもう三本足して、合計四つの三角形を作ってください★ ~クオリティーアップのヒントを語ってみる~
クリエイターにとって、自身で生み出した作品というのは我が子のようなものだし、「自分の子が一番!」と思う人も多いことだろう。
音楽に携わる自分も自身の曲は大好きだし、まだ駆け出しの頃の作品も荒削りながら、良いものを作ろうという熱意や曲作りの楽しさが伝わってくる。
しかしながら、今聞くとその頃の曲には、「ここはもっとこうした方がいいな」という点が多々あるのも確かだ。
そこで今回は、自分が思う「クオリティーアップのヒント」を少しばかり、ご紹介したいと思う。
あくまで単なるご紹介であり、小説作者様の書き方や作品に難癖つけたりするつもりもさらさらないし、自身の考え方や手法を強要する訳でもなんでもないことを、先に断っておきたい。
さて、結論から先に言ってしまうと、作品のクオリティーを上げるために大事なのは、作品を「立たせる」意識だと自分は思っている。
ここで一つ、クイズを。
〜〜三本のマッチで作られた三角形が一つある。
ここにもう三本足して、合計四つの三角形を作ってください。〜〜
さて、正解は……
「平面」に作られた最初の三角形に、三本を「立てて」足して正四面体、つまり「立体」を作ることだ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/正四面体
これは昔、とある音楽雑誌でL’Arc~en~Cielというバンドのボーカルのhyde氏が語っていたことで、この「立体化」の意識によって自身の制作レベルが大幅に上がったという。
記事を読んだ当時は曲作りすらしていなかったが、その後もこの話は頭の片隅に残っていて、今では制作時に曲が「平面的」になっていないかどうかを、常に意識している。
この「平面」とは何か、「立体化(立たせる)」とは何かを、自分の感覚でお話させてもらうと、まず「平面的な曲」とは、単なる「いい曲」のことである。
実は、「いい曲」を作ることはさほど難しくない。
というのも、創作には「テンプレ」がいくらでも存在するので、人に教わったり本を読むなり、動画を見るなりしてそれを真似すれば、結構簡単に作れる。
しかし、相手の心に強く訴えかけ離さない曲にするには、それだけでは足らない。
「いい曲だね」で終わってしまう。
そこで僭越ながら、自身が曲作りの際、平面ではなく「立った曲」を作るために意識していることを3つほど挙げさせていただく。
・その1 自分自身が夢中になれるサビ(アイデア)を探す
自分はいつも、「このサビなら制作にかかるエネルギーや時間を費やしてもいい!むしろそうしたい!」と思えるサビを探し磨き上げること、まずここから始める。
相手を夢中にさせたいなら、まず自身が作る曲に夢中になれないと、と思う。
その核として、曲作りだとやはりサビがとても大事で、「いい曲」で終わる人はAメロから順に作ることが多く、サビに突き抜けた強さと魅力、つまり「サビ感」がない。
逆に、AメロBメロがイマイチでも、サビで一発逆転できることもある。
なので、まずは「自分が夢中になれるサビ」を探すことをスタートにしている。
そして、聞く側の心を捉えられると確信できるまで、細部まで詰めきって磨き上げる。
・その2 退屈なところ、つまらないところ、イケてないところを徹底的に改善する
自分がいつも参加する楽曲コンペには膨大な曲数が集まるので、クライアントにイントロで止められてしまうことも多々ある。
折角ずば抜けたサビを作っても、Aメロに掴みがなかったりBメロが間延びしていたりすれば、サビまで聞かれないのだ。
なので、サビから始まる「頭サビ」という手法も多用されるし、「イントロからエンディングまで一瞬たりとも飽きさせないように」と、口すっぱく言われている。
なので、何度もチェックしてここイマイチだなというところは逐一修正し、どんなに時間をかけて制作した部分でも、足かせになってるなと感じたら潔く全カット。
最終的に残るのは、思いついたメロの1/10とかもザラ。
相手に自身の曲の良さを伝えきるには、こちらが思う以上に犠牲を払い、抜かりなく最短で届けないと、届かない。
・その3 「異物(個性)」を混ぜる
「平面的な曲」の特徴はえてして単調であり、最初から最後まで一度も「心を揺さぶられない」ことだ。
文字通り「いい曲」なのだが刺激もないので「引っかかり」がなく、印象に残らない。
展開も予定調和で、使っている音域も狭く、聞いていて心がときめかない。
ここで先のクイズを思い出してほしい。
最初の三角形に平面上で三本足しても、どうやっても四面はできない。
つまり、今見ている面ではなく、全くの別方向・別次元から何かを足すことによって、平面だけでは成し得なかった「多面的な魅力」が生まれる。
イマイチ、パッとしないな......曲が立たないな......と感じた時は、コードなり転調なり譜割なりを工夫し、意図的に「異物」を混ぜて変化をつけたり、隠し味的に忍ばせることはよくある。
たった一箇所でも異物が入ることで曲全体がグッと締まったりもするし、物語でも個性的なキャラクターや予想外の展開で一気に面白くなったりもする。
そして、その足し方や何を足すかこそが、制作者の「個性」にも繋がる部分だと思う。
このような点を意識して自分は曲を作っているが、最後に大事なことをもう一つ。
曲(作品)の良さは、他者に伝わるのは自分が感じる良さの半分くらいと想定している。
いくらサビが良くても曲中、一度でも心が離れてしまえばストップされてしまうし、自分が「キャッチーだ」と思っても、他者からしたら案外普通に思われたり。
なので、これ以上は無理というくらい細部まで詰めきったり、これでもか!というくらい要素を詰め込んだり、こんなこと誰もやってないだろう的なアイデアを取り入れたりするくらいで、ようやく相手の心を惹くことができるのだと感じる。
なんだか殻を破れないなという方は、自身の作品が「平面的」になっていないかどうかを意識してみるのも、何かのきっかけになるかもしれないと、お話させてもらった次第です。




