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怪談「夏の思い出」

作者: VLP

このお話は作者の実体験を元に書いた作品です。


このお話は、私が実際に体験したお話です。


それは私が小学校6年生の頃の事です。


私と友人Aと友人Bの三人で遊んでいた時の事です。


その頃は丁度夏休み。ほぼ毎日三人で遊んでいました。


毎日ろくでもない事をして遊んでいましたが、流石にやる事もなくなってくる。そんなある日、私が以前から気になっていた場所があり暇だし明日行って来ようという話になりました。


以前から気になっていた場所・・・そこは、私達の通学路、そこを少し横にずれると小さな山があり、その上には大きな鉄塔が建っていました。 

その鉄塔、普段は特に気にもしていなかったのですが、ふと、もう卒業した先輩がその鉄塔に行ったらフェンスが開いていて、登れた!と言っていたのを聞いて、いつか行こうと思っていた場所でした。


そして次の日。


私達は前日に集まり、友人A宅に泊まり朝食を食べると、鉄塔のある場所まで向かいました。


普段は歩いて通っている通学路、自転車で向かうとあっという間に小さな山に着きました。


通学路からはずれ、その山の方に向かってみると、アスファルトの道路の横にその山に向かって登る土の道がありました。


そこの登り口には木の立て札があり、←金山 と書いてありました。


ああ。この山って金山て言うのか!金でもでるのかな? そんな事を考えつつ、行ける所まで自転車で登りました。


2~3分登ると、土の道がだんだんと草が多くなり、とうとう自転車では進めないほど道が荒れ、そこからは歩いて登りました。


しばらく登り、道もかろうじて分かる様な獣道、結構登るんだなあw なんて言いながら歩いているとなんだか先が開けてくる・・・すると、蔦に覆われたフェンスが見えてきました。


「おお!着いた!ここが頂上か!」


時間にしたら20分ほどの道のり、急に目の前が開け、思ったよりも広く大きなフェンスがあり、その真ん中に大きな鉄塔が建っていました。


「おおー・・・近くで見ると結構大きい鉄塔だったんだなあ・・・」


そんな事を思いつつ、フェンスが開いていたと言うのを確かめようと、蔦で覆われたフェンス越しを、ぐるっと一周しようと歩き出しました。  すると・・・


ぽっ・・・ ぽっ・・ ぽぽっ・・・  ザーーーーーーーー・・・


夕立でしょうか、突然結構な雨が降ってきました。


「うわ!雨だ!!  傘なんてもってねーよ!」


私達は大慌てで、でも突然のハプニングでちょっと楽しかったのを覚えています。


雨に濡れつつギャーギャー言いながらもフェンス越しを歩いていると、四角いフェンスの角に着き、そこかフェンス越しに曲がりました。・・・すると、その先には・・・ プレハブの建物がありました。


「お?? なんかあるぞ??  事務所的なアレか??」


相変わらず雨がザーザー降っている中、前方に見えるプレハブ・・もしかしたら中に入れて雨宿りでも出来るんじゃないか? むしろ、ちょっとした秘密基地に出来るのでは?!


そんな事を考え、私はドキドキしながらその建物へ向かいました。


雨で視界が悪い中、だんだんとその建物へと近づくと・・・その建物。   明かりが点いている・・・


(え?!電気ついてるぞ?!!人がいるのか?!!)


その時私が思った事は、何で?と言う事より、やばい!!見つかったら怒られる!! でした。


「おい!逃げるぞ!!」 そう言い、私達は逃げようと今来た道を引き返そうと後ろを向くと・・・    「おい!お前ら!!そこで何してるんだ!?」


げ!っと、後ろを振り返る・・・そこには白い作業着を着たおじさんが立っていました。


(やっば!見つかった!!) そう思い、一気に逃げようとすると  「ちょいちょいちょいちょい!  待ちなさい!  雨も降ってるんだ。怒らないから雨宿りしていきなさい!」 っと言われました。


なんか妙にやさしい物言いに、私達は足を止め、「どうする?」っと顔を見合わせました。 そうしている間も雨はザーザーと降り、止む気配はありません。


別に・・・悪い事はまだしているわけでも無いし・・・それに、あのおじさんが何をしているのかも気になる・・ そう思った私は、「雨宿りさせてもらおーぜ!」っとAとBに言っておじさんのいるプレハブへと歩きました。


中に入るとそこは、なんの変哲も無い、ただの事務所っぽい所でした。


「ほら!夏とはいえ濡れてちゃ風邪をひくぞ? ここにタオルがあるからこれを使え。」 そう言うと、白い作業着のおじさんはタオルを私達に渡しました。 


各々がタオルで頭などを拭くと、 「ほら!これ飲め」っと、麦茶が注がれたコップを3つ置いてくれました。


「ありがとうございます。いただきます。」


私はお礼を言い、麦茶を飲み人心地つけていると、


「で、なんでこんな所に来たんだ?」


と聞かれました。


まさか鉄塔に登りに来たとは言えないので、「ここの鉄塔を下から見てみたくて・・」っと、大人受け良さそうな事を言いました。


それを聞くとおじさんは眉間にシワを寄せ、「ここはあんまり人が入る所じゃないんだから、雨が止んだら帰りなさい。」 そう、私達に言いました。


「はい。わかりました。」と答え、チラッと窓の外を見てみると、未だに雨が降っている様でした。


おじさんは「じゃあ、私はそこの机で仕事をしているから、雨が止むまで待っていなさい。」と言い、すぐそこの机に座り書類の様な物を手にとって作業を始めました。


2~3分経ったでしょうか・・未だ雨は止む気配が無く、私も(んー・・・どうすっか・・・)っと思い始めていました。


そして、何気なく私はおじさんに、「すみません」と声をかけると、「おじさんは、何をしているのですか?」と質問してみました。 するとおじさんは


「ああ、管理してるんだよ。」 っと答えました。


(ああ、なるほど・・・このおじさんはこの鉄塔の管理をしてるのか・・・)と、納得をしました。


「今日はおじさんだけなんですか?」っと聞くと


「ああ。今は夏だからねぇ 今日はおじさんだけだよ。」 と答えました。


(なるほど・・・夏休みか・・) と、納得をしました。


そんなやり取りをしていると、窓の外が明るくなり、雨がすっかりと止んでいました。 するとおじさんは席を立ち、戸を開けると


「さあ、雨も止んだ。 気をつけてお帰り。そして、ここにはもう来るんじゃないぞ?」 っと言い私達を外へ出しました。


「ありがとうございました!」 私はお礼を言うと、もと来た道を帰りました。



数十分後、私達は登り口まで着きました。そして、その頃にはすっかりと日は低くなり、あたりは夕暮れに染まっていました。


時計なんて持っていない私達は、やべ!意外と時間経ってたのか!と思い、急いで各自の家へと帰りました。



その後、あのおじさんの忠告もあり、あの鉄塔へは行きませんでした。




と、ここまでは私が体験した、対して意味の無い、ただ平凡な小学生の夏の思い出です。



が、この体験、   ただ平凡な小学生の夏の思い出ではありませんでした。




時間は進み、私達は中学3年になりました。


中学校最後の夏休み。未だにつるんでいた私達三人も別々の高校に行く予定になっていました。そんな夏休み直前の放課後、私達は教室に残り雑談をしていました。


学校の事や、思春期特有のお馬鹿すぎる事や、ちょっと真面目に将来の事や・・・なんでもない会話を楽しんでいました。 そして、ふと 私はあの小学校六年最後の夏休みに体験した事を思い出し、「そーいえばwあの夏あんな事あったなぁw」的に話を切り出しました、。  すると・・・



なぜか・・・AもBも  きょとん?とした顔をし、  「はぁ??なに言ってんだ??んな所行ってねーだろ??」「そーだよ。俺らはそんな所行かなかったぞ??」っと言い出しました。



「はあ??  いやいや、なに言ってんだよw お前らボケるのには早いだろ行ったじゃんあの鉄塔w  ほら・・山道でさ 途中自転車置いて登ったじゃんw フェンスは蔦だらけでよ おじさんに怒られて!雨も降って雨宿りまでさせてくれたじゃんw」


っと、私の記憶をたどり、AとBの2人に説明しましたが・・・二人はどうもふに落ちない様子・・・


私も、だんだん自分の記憶に不安になり、「・・・え??  マジか?? 覚えて無いのか?? なあ、A?」っとAに話をふると、Aは「・・いや~・・・んー・・・ちょっと待ってな? なんか・・俺の記憶とだいぶ違うんだけど・・」と言い出し、俺の記憶では・・っと語りだしました。 Aが言うには、


「いやな?確かに俺ら三人、お前と俺とBで出かけたよ?  でも、俺の記憶だと   どっか・・・沼に行ったんだよね  確か・・・ お前がどこそこに沼があって、先輩がそこの沼ででっけえ雷魚釣ったから行こうってさ・・」っとA しかし、そこでBがすかさずこう、言いました。


「え?? ちょっとまてA・・ 俺の記憶だと・・・  たしか・・ 神社いったんだよ!神社! なんかこいつが・・神社の裏の林で先輩が、ミヤマクワガタだかオオクワガタだか取ったらしいから行って見ようってさ・・・」




??????  三人が三人   記憶がばらばらでした。


話を整理すると、


私は「先輩が登れたと言っていた鉄塔に三人で行った」っと記憶

Aは「お前の先輩が雷魚釣ったと言って沼に三人で行った」っと記憶

Bは「こいつの先輩がミヤマだかオオクワ取ったと言って神社に三人で行った」っと記憶


見事に三人ばらばらの記憶でした。


私はなにか・・得体の知れない寒気を感じました。


ちょっと待て!  いいか?  順を追って確認するぞ? まず、俺ら三人はあの夏、三人で出かけたよな? 


するとAが「ああ、出かけた。 たしか・・前の日俺の家に泊まって飯食って9時ごろに・・」するとBが「ああ!泊まった泊まった!」とうなずく。



じゃあ、次な? 三人で出かけた目的場所は、せーのっ 「鉄塔」  「沼?」  「んー・・神社」



目的地はばらばら・・・  おかしーだろ?! 三人で泊まって飯食って、出かける先がばらばらって変だろ?? 私は2人の顔を見回し、神妙な顔でそう言いました。


すると  Aが 「あっ」っと声をだし、何かを思い出したようでした。


お?なんだ?!A!なんか思い出したか?? てか、何かの記憶とごっちゃになって、鉄塔を思い出したか?! 私がAに訪ねると、Aは「いや・・行ったのは沼なんだけど・・起こった事は  同じかもしんね・・・」っと言い、こう続けました。


「だってよ。沼に着いた途端に大雨が降ってさ、大慌てで近くの大きな木の側に走ったら・・・なんか・・・プレハブがあってよ・・・そこでおじさんに話かけられて雨宿りしたんだよ・・・確か・・・」っと言いました。


私は  え?! っと驚きました。それは、場所は違えど、私の記憶で行った鉄塔でも起こった事に似ていたからです。 そして、私がAに、それって・・・っと確認しようとすると、Bが「あっ」っと声を出し、こう、言いました。


「それ・・・俺も同じだわ・・・鉄塔でも沼でも無く、俺の記憶だと神社だけどさ・・・着いた途端に大雨が降ってきて、慌てで神社の軒先に行こうとしたら、横の社務所?  ってか、プレハブ?? の戸が開いて、おじさんに雨宿りさせてもらったんだよ・・」っと言いました。


私は  ますます寒くなりました。


目的地はばらばらだけど、雨・プレハブ・おじさん この三つは同じでした。 そして、私はこう聞きました。



なあ、そのプレハブでなに手渡された? せーのっ 「タオル」 「タオル」  「タオル」



背中がぞわっとしました。



なあ、  そのプレハブで何か飲んだか?  せーのっ 「麦茶」 「麦茶」 「麦茶」



冷水が体を駆け巡りました。



なあ、   そのおじさんてさ・・・どんな格好だった?  せーのっ 「「「白い作業着」」」


  

血の気がサーッと  引いて行くのがわかりました・・・


何か変な事が起きたわけでもない、ただ平凡な小学生の夏の思い出で、だが、三人が三人、行った場所も着いた場所もばらばらな記憶・・・なのに・・なぜ、その時に起こった体験は一緒なのでしょうか??




その日は、もうその話題はせず、そのまま三人ばらばらに家へと帰りました。



その後、この話題に触れず、私達は三人、ばらばらの道に進んで行きました。


これでこの体験談は終わりなのですが、実は・・・数年の時を経て、私はあのAとBに話していない事があります・・・



それは、



私に「鉄塔に登れた!」と言っていた先輩、その人は私の家の近所に住む、一つ上の従兄だと言う事と。そして、三人がそれぞれ違う記憶だと判明したその後、その従兄に会った時、登れた!と言っていた鉄塔の事を聞いたら、「そんな鉄塔しらん」っと言われ、沼の事も神社の事も聞いてみた所、一切そんな話した事は無い。っと言った事です。


 



この事は、AとBには一生言わないでおこうと思います。












あの夏、時を経て二度も起こった不思議な体験・・・今久々に思い出しながらこのお話を書いています。



そして、今書きながら、気がついた事がいくつかあります。




それは・・・




記憶の中で、私は山に着いてから、AとBと会話をした記憶が無い事。



あんな誰も来ない様な場所で、明らかに道もほとんど無い場所で、なぜプレハブを建ててまで人が居たのかと言う事。



そもそも、あの山の規模で考えても、プレハブと鉄塔があった場所、明らかに広すぎる事。



あのおじさん、私の質問に答えてはくれましたが、今にして思えば、すごく曖昧な答えだった事。




そして何よりも・・・




突然の土砂降りで、あのプレハブで雨宿りをしていた時、 外の雨音が一切していませんでした。









あそこは・・・いったい何所だったのでしょうか??


このお話に出てきた鉄塔は今も存在しています・・・

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