反撃開始──
朱雀は俺の斬撃により、地面に向かって行くが──衝突はスレスレで羽ばたき──静止する。
「「若っ!!!」」
ジョンとセスが俺に向かい言葉を発する。
ん? 若? 誰が? 俺か?
「ジョン、セス──今は俺に任せて負傷者を一ヶ所に集めろ」
俺は他の人に視線を移す──白い防具を付けてる人達はワルキューレか……彼女達は傷だらけだし、疲弊しすぎている──戦闘は無理だな。他はまだ動けそうだ。
朱雀の能力がまだ把握出来ていないし……1人で勝てるとか俺も思ってはいないが──現状では戦力を整えるのが先決だろう。
「「承知っ!!!」」
俺は苦笑する。
なんか懐かしいやり取りだな。前世で丈二や他の部下に命令した時がこんな感じだった……こいつら、やっぱり──俺の知り合いか?
「アナ──という事ですまないが、これから下ろすから負傷者の治療を頼む」
「わかったわ。無理はダメよ?」
「もちろん────来たぞ、離れろっ!」
動けない者の治療をアナに頼み────
────こちらに高速で向かってくる朱雀を相手にする為に左手を前にかざす。
通常の捕縛は速度が早すぎて無理だな……。
左手の先に──複数の黒鎖を集約させ連結を使い、一本の大きな杭というか──鎖付きの銛を作る。
「串刺しになれっ────おらぁぁっ!」
それを、闘気を纏った俺が掛け声と共に全力で銛の端っこの鎖との連結部分を殴る。
穿通鎖程ではないが、勢い良く飛び出した鎖付きの銛は朱雀に向かって行く。
『ギュアァァッ』
そして──朱雀の鳴き声と共に胸部に突き刺さるが──銛は気にせず向かってくる。
「捕まえたぞ」
連結を解き。複数の黒鎖に戻し、捕縛しにかかる。
体に突き刺されている為、逃げ場はないっ!
近くまで来た朱雀は既に鎖が雁字搦めになっている。
準備も整い──俺は左手を握り────潰すっ!
「────『圧壊』っ!」
グジャッ
朱雀の魔力が一瞬消えるが────再度、魔力が復活する。
俺は何度も──何度も圧壊し、潰れる音が響き渡る。
その度に復活してくる。しかし、少し復活速度が遅くなって来ている────何回も殺せば、もしかしたら倒す事は可能なのかもしれない。
やはり──使うしかないか────
「ちっ」
朱雀を捕縛している鎖が赤くなり────溶解し始めたので、俺は舌打ちをする。
『キュルッ』
朱雀の頭部が鎖塊から抜け出し────俺を見据える。
丸い鎖塊の中から可愛く声を出す朱雀は側から見ると可愛く見えるが──
──実際の所は凄まじい威圧と熱風が俺を襲って来ており、捕食者の目を向けて来ている。
俺は問答無用で闘気を込めた、三日月鎌鎖を両手に持ち──
斬っ!
──両断した後────細切れにする。
最後は後ろに飛び、斬撃を飛ばす。
朱雀はその場から消滅した。
しばらく静寂が支配する────
直ぐに復活すると思って警戒していたが、復活して来ない……。
もう少し時間がかかるのか? それとも倒したのか? いや──それはないな。
俺は一先ず地面に着地する。
「無事か?!」
俺は全員に声をかける。
羨望、恐怖、嫉妬などの視線が俺に向けられる────
何人か俺を見る目がおかしい気がする……。
特に女性陣、目が潤んで頬を染めている……。
やはり、この世界は強い男がモテるんだなっ!
「倒したのか?」
ザックが問い掛ける。
「おそらく──まだだな。この調子で倒せれば──復活速度が遅くなっているから──犠牲は出るだろうが、いつかは復活しなくなるだろうな。ただ──相手は厄災……何が起こるか未知数だ」
俺はそう答える。
「私の封印を使います。皆さんは足止めをして下さい。それしか────手がありません──「却下」──何故っ!?」
ステラが封印を使うと言ったので、俺は却下する。
「別に討伐出来ないわけじゃない。それに封印を使うっていう事は────死ぬ事だ。覚悟があるのか?」
俺は続けて言う。
姫に対する態度じゃないが、この国の姫だしな、別に気にしない。
俺の言葉にアルステラ王国の者達は奥歯を噛み締める。
「もちろんだっ! 国の為に私は────この命を使うっ!」
ステラはそう言うが周りの者達の顔には「助けたい」そう書いてあるように見えた。
こいつらも王と同じく、ステラを助けたいのだろう。だが、状況がそれを許さない。耐えているのがわかる。
「覚悟はあるのか……まぁ、俺に策があるから──それを試してからでいいんじゃないか? 別にあんたが、そんな役目を背負わなくていいだろ?」
俺はステラの肩を叩き、目を見詰めて──そう答える。
俺にとったら、これは予行練習だからな。邪魔されたくない。
ステラは先程まで羨望の眼差しを向けていたが──頬を染め、乙女の顔になる。
……何この状況……俺別に大した事言ってないぞ? ワルキューレの人達もなんで、きゃーきゃー言ってるんだ!?
────殺気!? これはアナ!?
殺気のする方向に視線を向けるとアナスタシアの目が据わっていた。
──俺は背筋が凍る。
息を飲む人もいるぐらい、わかりやすい状況だ。
「おっ、やっと到着したか──ん? もう終わったのか? えーっと、確かレオンの嫁さんのアナスタシアちゃんだったよな? 殺気なんか出してどしたんだ? レオンの奴が浮気でもしたか? そんな不届きな奴は父親である俺が成敗しちゃるっ!」
やっと到着した父さんは、この殺気の中でも普通に話かける。
父の偉大さを実感した瞬間だった──
実感したが、更に話をややこしくしてるし──何より、テンションたけぇよっ!
「いや、父さん少し黙ろうか?」
俺は魔力全開放し、威圧する。
「レオン、こういう事はな……さっさと仲直りするもんだ。ほれさっさと謝れ。俺も母さんとよく喧嘩したけど、直ぐに土下座したぞ?」
ニヤニヤ笑いながら、この状況を楽しむ父親を見て俺はもう一度、頭突きをかましてやろうかと思った。
「それは父さんがヘタれなだけだろう。俺とアナは真実の愛が芽生えているんだ。──なぁ、アナ?」
女性陣からまた、きゃーきゃー聞こえてきた。そして、急激に頬を赤らめるアナスタシアに俺はこの間の記憶が蘇る……。
「お前──恥じらいを持った方がいいぞ? なんでそんな堂々と、そんな事言えるんだよ……」
父さんが注意してくるが──既に遅し。
──ヤバい。やっちまった……。
「お仕置きじゃ……」
ゆらゆらと揺れるアナスタシア。
その時────救世主が現れた。
「「我ら若の到着お待ちしておりましたっ!」」
ジョンとセスが、この絶対零度の雰囲気の中で俺に話しかける
お前らが救世主か! 信じてたぞ!
「あぁ、とりあえず皆、生きているようで何よりだ──その若って言うのやめないか?」
「「我らは若との再会をお待ちしておりましたっ! 若は前世から若でありますっ!」」
「お前らは────丈二と……影二か?」
俺の思い当たる節はその2人しかいない。影二は丈二の弟で、主に丈二の裏方をしていてくれていた。
「「はっ、その通りです。今世では必ずやお守り致しますっ!」」
やはりか……だが──再会を喜び、色々と問い詰めたいが──時間はなさそうだな。
「とりあえず、敬語とかやめろ。今世ではお前らは部下じゃない。わかったな? 後──父さん……そいつをぶん殴りたいんだろうが────後だ。朱雀が復活した」
2人には後で話す事にし、父さんはザックに気が付き、射殺すぐらい見詰めていたので止める。
俺が空を見ると、全員がつられて見上げる。
「「では、後程」」
ジョンとセスは返事の後、武器を構え────周りも迎撃態勢をとる。
「ちっ、タイミングが悪りぃな……おいっ、そこの隻眼の男、後で時間作れよ? 逃げたら──果てまで追いかけて必ず殺す」
「ザックだ……あぁ、逃げはしない。お前の息子に痛い目に合わされたからな……後で必ず時間は作る──生きて帰れればな」
父さんがドスを効かせた声で話しかけたのはザック。ザックは後で時間を取ると返事する。
『ギュルゥゥゥゥゥゥッ』
鳴き声と共に火球を展開させ──翼を大きく広げて魔力を放出させている朱雀は準備を整えたと言わんばかりに鳴き声を出す。
先程までと違い、放出魔力の桁が違う──本気なんだろう。
こちらを見据え────動き出す。
来たか……。
「全員、迎撃準備だっ! 全員死ぬなっ! ──俺の指示には従えっ! 従えない者は────勝手に死んで来いっ!」
ワルキューレもアナスタシアの回復を受けて復帰している。
俺の掛け声に全員の表情が引き締まり、頷く。
先程の戦闘で──もう俺しか通用しないのがわかっているのだろう。
さぁ、第二ラウンドの始まりだ────




