表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/110

失った末に──

「では──厄災に関する会議を始める」


 そんな王の言葉と共に全員が頷く。


 あの後、部屋を移動したので──皆、ちゃんと座っている。



「まず────救援要請に応えてくれて感謝する」


 王の感謝の言葉にまず、イレーネが反応する。


「アルステラ王よ、私はこの戦力では到底──厄災に勝てるとは思えない。そもそも、新入りを投入して様子見など……」


 イレーネはジョンとセスに視線を向け──2人は黙り込む。


「だが、それでも助けに来てくれている。今は少しでも戦力がほしい。それに──新入りだからと言って必ずしも実力と比例するわけであるまい」


 王は俺を見て答える。


「先に言っておく。私だけじゃないだろうけど──いよいよとなったら退避するように命令されている」


「……そうであろうな。それも仕方がない」


 イレーネの言葉に王は奥歯を噛みしめて答える。


「さて、アルステラ王よ。状況はどうなっておる? それにこれからどうする予定じゃ?」


 バランが間に入って話を進めようとする。


「まず、封印場所には既にステラ、ワルキューレと大半の兵士を向かわせておる。それと──どうやら封印を解こうとしている輩がいると報告を受けている。帝国以外の此処に来てくれている三ヶ国もおそらく似た状況である事も確認済みだ」


 ステラって誰だ? それに帝国以外も封印が解けそうなのは確定か。


「ふむ、姫騎士殿と親衛隊か……。封印を解こうとしてる連中の手掛かりか何かないかのう?」


 バランが気になる事を聞いてくれる。



 その時──2人の気配が窓の外から近付く。



 ────ちっ、このタイミングで敵襲か!?


「ザックの報告によると──おそらく────」


 ガチャーンッ


 窓際からぶち破られる音が聞こえる前に王以外は既に臨戦態勢だ。


 視線を向けるとそこには黒い外套に身を包んだ者が2人、襲撃してきた。


「────!? 何者だっ!」


 王は問う。


「なぁに、そこの鎖使いに用がある奴がいてな」


 声は男か──指先は俺を差している。


 俺に用?


 1人が前に出て外套を外す。


「レオン、ここから手を引け。厄災は間もなく復活し、この国を滅ぼす」


 そこには懐かしい父さんの姿があった。ただ、目は窪み、やつれ──表情は死んでいる。


「父さんっ!?」


 俺は驚愕する。


 父さん──なんでここに!?


 ──いや、母さんの復讐か……ここにいる時点でそれしかない。


 言葉から察するに──厄災の復活に関与している可能性もある。


 もう止まれない故に、家族である俺を巻き込みたくないから伝えに来てくれたのか?


 だが──下手したら、もう俺の言葉は届かないかもしれない。


 しかし────俺も引けない。


「父さん……俺は自分の為に引かない。俺が父さんを止めてみせるよ」


「そうか──せめて俺が引導を渡してやる……来いっ」


 そう覇気のない顔で返す父さん。


「あぁ、父さんを正気に戻して母さんの墓前に連れて行くよ」


 父さんは窓から飛び降りる────


 復讐、葛藤、後悔、憤怒──そして家族愛……そんな感情がごちゃ混ぜになっている──父さんからそんな感じがした。



「報告しますっ! 厄災封印場所にて朱雀の復活を確認っ! 至急応援をと報告を受けていますっ!」


 部屋にまた誰か入ってくる──兵士が厄災が復活したと報告する。


 次から次へと……。


「アナっ! お前は朱雀の元へ────俺は父さんの性根を叩き直してから、直ぐに向かうっ! 死ぬなよ? バラン──後の事は頼んだ!」


「うむ、早く来るのじゃぞ」


 バランは特に気にせず送り出してくれる。


「誰に言うておるかのぅ。我は不死……レオの伴侶なのだぞ? 父君の性根を叩き直してさっさと来るのだぞ?」


 アナスタシアも俺が追い付く事に微塵の疑いもないようだ。


「後で必ず会おう────」


 俺は後の事は残った連中に任せて父さんを追いかける。



 父さんはどこだ!?


 ────いた。あそこは訓練所か……。


 俺は鎖を建物に巻き付けながら移動していく。


 俺は父さんの目の前に立つ。


「来たか……もうすぐ、朱雀がここに来る────せめてお前は気絶させてでも、ここから避難させる。短い余生を田舎で過ごせ……」


「父さん……」


「さぁ、始めよう……俺は必ず復讐し──滅亡の連鎖を起こすっ」


 父さんは切り落とされた左腕から複数の鎖を放出する。


 ────負の感情を体現したような禍々しい鎖だった。


 俺の胸が痛む。固有魔法は想いの魔法……つまり……そういう事だろう……。


「父さん……一ついいか?」


「なんだ?」


「なんでなんだ?」


「……あいつがいない世の中に価値はない────あいつが望んでいなくてもいい……ただ俺はお前とアイリスと過ごす道を選べなかった。そして────復讐する為に厄災を復活させている組織に入った……それだけだ」


 馬鹿な質問だと思う──だって俺は愛する人を失った時の気持ちを既に知っている。


 復讐心に駆られてもおかしくなんかない──


 ──だけど、肉親のそんな姿は見てられない。


 きっと────あの日から寝れてないんだろう。


 その姿が前世の俺と被る。


 俺は琴音の最後を看取り──父さんは母さんの死に目に会えなかった。


 その違いなのかもしれない……。


 父さんはミア達を助けた時──きっと母さんが眠っている場所にいたんだろう……。


 俺とアイリスの事を想う気持ち、そして全てを消し去りたい気持ちが自分の中で葛藤している。


 矛盾に気付かないぐらいに心が疲弊しているんだろう。


 母さんがいなくとも──アイリスと俺はまだいるっ!


 俺は父さんの心を────必ず、捕縛するっ!!!



「父さん────必ずアイリスと会わせてやる」


 さぁ、親子喧嘩の開始だっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ