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力を尽くせ────

 走馬灯なのだろうか……いや、潰されたから走馬灯ではないか……ふと前世の爺ちゃんとの会話を思い出す。


『力はあって困らない、腕力、知力、体力、財力、権力、他にもいろんな力があるがな……わしが大事だと思うのは努力だと思っとる……』


『なんでなの爺ちゃん?』


『努力以外の力は、努力の結果得る事が出来るものだからさ。だから努力の末に得る事が出来る。頑張れば……お前は何にだってなれるさ! 諦めるでない。負けるな……逆境に合っても、それを跳ね除けれる力を得なさい』


『でもさ、それって皆んな持ってる力じゃないの?』


『そうだ。皆んな持っているが、頑張った奴が一番になる……それにもし、お前に彼女が出来て……デートでもしている時に襲われたとしよう。そんな時に力が何か力があれば状況は変わるかもしれんだろ?まぁ、わしが言いたいのは彼女ぐらいは守れるぐらい男らしくなれって事だ!はっはっはっ、いつかわかるさ……』


 爺ちゃん────俺────



 ────ミアを助けたいよ────



 だってさ、前世から追いかけてきてくれるぐらいだしさ。



 でも、今戦ってるのは俺と同格以上の化け物で、それが約50体……どうにもならないよ爺ちゃん……。



 気がつくと俺の目がクリアになる。



 目の前には大量のミノタウロス。


 俺は死んだんじゃなかったのか?


 傷もない────


 ────そうか!?


 ()()()()が発動したのか!!!



(やれるだけやりなさい。やらなければ何も始まらないからな)


 ふと、爺ちゃんの声が聞こえた気がした。


 そうだな、爺ちゃん。やれるとこまでやってみるよ……。



 考えろ!


 考えるんだ!


 俺には戦闘に役に立つ能力が……超再生、即死回避、鎖魔法、身体強化、各種初級魔法がある。


 きっと活路はあるはずだ!


 あの「あいつ何で生きてんの?」みたいな顔してる牛野郎を殲滅してやる!



 今世でも、それなりに努力はしてきた!


 前世の記憶もある!


 前世で培った技術(爺ちゃんに無理矢理叩き込まれた)もある!


 きっと乗り越えられる!



 俺は顔を叩き、気合を入れる。


 さっきは、3メートル近くある巨体と真っ向勝負を仕掛けたからダメなんだ。


 俺の基本戦闘スタイルは鎖を使っての中距離ヒットアンドウェイだ。


 近接戦闘も前世で爺ちゃんから叩き込まれていたので苦手ではないが、主に人間相手の技術になる。


 応用できない事もないが、これだけ腕力に差があるとあまり意味がないだろう。


 さっきの二の舞になる未来しか見えない。



 まず、身体強化を使い────



 そして、一定の距離を保ち【八岐の舞】を両手から発動する。



 合計16本の鎖だ。これが俺に出来る現在の動かせる限界数。



 この機会に使いこなして、状況を打破するしかないっ!


 右手は主に攻撃用に使い、左手は自分の防御と補助、敵の動きの阻害に意識を割くことにする。



 先程と違い、今度はミノタウロスが三体、三方向から攻撃を仕掛けてくる。


 ミンチにするつもりか……。


 右手の鎖で右側のミノタウロスを総攻撃する。タフなせいで、死ぬ事はないが動きは阻害されている。


 真ん中と左のミノタウロスには左手の鎖4本ずつで絡めとったり、攻撃をそらしたりして俺に近付けさせない。


 その間に再度右側のミノタウロスに対して、ガードの薄い顔や首、関節を串刺しにする。それを何度も繰り返し、一体を倒す事に成功した。

 

 そうなると、ミノタウロス達も黙ってはおらず、総攻撃を仕掛けて来た。


 左手の鎖を補助に回し、壁や岩に巻き付けて引っ張る事により囲まれるのを回避し、近くにいる奴を攻撃していく────



 これを繰り返したらいずれは決着が着くだろう……。



 しかし、俺の魔力と体力が保たない。



 そして、その予測通り、魔力が切れる度に、ミンチにされた。



「やっと────終わったか……」


 合計30回ぐらいは死んだが、その甲斐があってミノタウロスを駆逐する事に成功した。


 この即死回避した後に、超再生が発動したら、何故かわからないが、回復した際に魔力と体力が元に戻っていた。


 回復ポーションいらずだな。

 

 有難く、そのまま継続して戦う事ができたが。


 なんなんだろう? この謎仕様?


 ただ、この即死回避と超再生のコンボは死なないというメリットはあるのだが、死ぬほど激痛を耐えた末にというデメリットがある。

 

 正直、精神が擦り減り過ぎている。



 普通なら死ぬような経験を30回もして、激痛に耐えるなんて苦行なんかしたくもないだろう……。



 ミノタウロスの死体を見渡して溜息を吐く。



 序盤でこれだ。



 俺はここで何度でも死ぬだろう。


 けど────ミアの事を思うと死ぬ思いをするのも嫌じゃない。


 死なないとわかっただけでも十分だ。


 これで────この先ずっと戦い続けられる。



 有名な爺ちゃんの事が学生時代にバレててしまった時はけっこう爪弾きに合ったりもしたけど、恨んではいない……むしろ、色々と教えてくれた爺ちゃんには感謝している。


 その教えの一つ、力についての話で活路を見出したような気がするよ。


 今回は色んな力がある中でも、俺は『死力』を尽くして頑張るよ。後悔しないために!



 天国にいるか、わからない爺ちゃん────



 いや、むしろ地獄にいるかもしれない爺ちゃん────




 ────見守っててくれ。

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