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幸せになる為に克服したい──

 1時間ほど走り、洞窟まで着いたのだが、また敵と戦う事になるのだろうか? ちょっと面倒臭いな。


 そう思いながら中に入ると。


 骸骨のアナスタシアが出迎えてくれた。敵はいない。


『やっと、来たの……魔物は殲滅しといたぞ?』


「待たせたな。ちゃんと来たろ? 正直助かったわ。疲れてるから戦闘はちょっと嫌だったんだよ」


『出入り口までの魔物は掃討しとるぞ。ほれほれ、んっ』


 それはありがたいな。


 なんか屈んでるんだが? なんだ?


「何してんの?」


『夫婦になるのだ! お帰りの接吻だの!』


「なぁ、アナスタシアの気持ちは嬉しいんだが……」


『むぅ、恥を忍んでやっておるのに……』


 正直に言うと、声は可愛らしい感じなのに骸骨の姿でカタカタと顎関節が動くのでムードもクソもない!


 何より骨にキスするのは気が引ける。


 キスをする事に関しては────まぁ婿にされるんだし構わないだろう。


 だが、どうせなら骨ではなく生身でお願いします!


「骨にキスするのはさすがに躊躇うぞ」


『………確かに……さっきまで戦闘しとったので忘れておったわ……よっ……これならいいかの?』


 サッと人間の姿に変えるアナスタシア。


 相変わらずの美人だな。体が子供じゃなければ性的に反応していた可能性もあるな。


 今はって? 聞くな……俺7歳なんだぜ?


「それなら、キス出来るな。ん〜っと、ちょっと無理だな、ちょっと屈んでくれ……」


 頑張って背伸びしてキスをしようとするが、届かない……。


 アナスタシアの身長は165cmぐらいに対し────


 ────俺は140cmないぐらい……。


 背伸びしても足りないのだ……。


 格好悪いな俺……。


「仕方のない奴だの……ほれっ」


 屈んだ、アナスタシアはエロくてヤバいな。


 両膝曲げて、俺の高さに合わしている。


 その高さが少し俺より低くてさ────


 ────胸がね……すんごい強調されてるんですよ!


 しかも両手は膝に置いて、腕で胸を寄せてるんで更に破壊力抜群です!


 更に、更にですよ!


 絶妙な上目遣いな上にサラサラの髪の毛が胸や腕にかかっているんです!


 そして、腰のくびれも綺麗でヒップのラインも素晴らしい!


 なんなのこの黄金比率は!?


 表情なんて、頬を赤く染めて、目を瞑ってるし!(キスするんだから当たり前なんだが……)


 唇なんて吸い付きたくなるぐらいみずみすしい!!!


 本当にご馳走様です!


 俺も流石にドキドキするよ。


 これ本当にキスしていいの?


「これっ、いつまで待たせるのだ。お姉さんを待たせるなんて10年は早いぞぉ」


 ドキドキが止まらない────顔めちゃ熱い────


「ぐはっ……」


 俺の意識はそこで途絶えた────




「うぅん」


 ………意識が戻った俺の頭に柔らかい感触が────



 ────この頭の感触は……。



 間違いない! ひ・ざ・ま・く・ら・だ!!!


 俺の大好き膝枕! 男の子の浪漫だよな!


 なんか懐かしい……安心するな……。


「起きたかの?」


 声に反応し、目を開けると────俺を真上から見下ろすアナスタシアの姿が見えた。


 とても心配しているような顔をしているが……俺は絶賛、後頭部の柔らかい感触を存分に味わっている。


「あぁ、どうやら気を失っていたみたいだね……どうなったんだ?」


 とりあえず、黙ったままではダメだと返事をする。台詞とは裏腹に情けない顔をしているんだろうな。


「ふむ、覚えておらんのか……レオンはな……」


 ふむふむ、なになに?


「鼻血を出して出血多量で倒れたの……」


 はぁ?! なんで? 


 まさか────俺の下半身に血流が行かなくてのぼせた的な!?


 前世含めて、産まれて初めて鼻血で失神した事になる。


 これ黒歴史確定でしょ。


「マジか……」


 心のダメージが大変な事になっている。



「全く可愛い奴よの。我はショタではないが、レオンの事は好いておるぞ?」


 なんたる直球!? しかし、俺の何処に惚れられる要素があったんだろ?


 一方的に殺されてただけなんだが……。



「ちなみに、どのへんが?」


 気になったので聞いてみる。


「そうだの……やはり、女子のために命を賭ける事が出来るとこかの?」


「あぁ〜ミアの件か……そういえば絆の指輪だったかな? とりあえず渡しといたぞ? なんか危険が迫るとわかるんだろ?」


「良き良き。ちゃんと気付いて指輪は渡してきたようで何より。レオンの嫁さん候補だの」


「やっぱりアナスタシアの仕業か……まぁ助かるけどな。嫁さん候補って……普通に幼馴染と妹に渡してきたぞ?」


「ふむ、足りたようで何より。これがあれば、レオンの身内に何かあった時に駆けつけられよう」


 嫁さん候補の話はスルーされたようだ。


 というか────どういう事だ? 駆けつけていいのか?


「何かあれば助けに行っていいのか?」


「構わぬ、束縛などせん。まぁ、契約魔法かけておるから束縛するも何もないんだがの。ただ────自分の意思でここにちゃんと戻って来てほしいぞ?」


 頬を赤らめて言うアナスタシアは可愛すぎるな。


「アナって、良い女の鏡だな」


「なっ!? 呼び方を変えるのは卑怯だぞ! 我をからかうでない! それに我らは夫婦になるのだ。当然であろう」


 7歳の子供と夫婦か……まぁその辺は成長すればなんとかなるか。


「他は何かないの? 好きな所とかさ? まさか、夫婦になろうと思ったのに、それだけなんて事ないよね?」


 ちょっと意地悪かな?


「むぅ、なんかの……レオンを見ておるとな……我の愛した人を思いだすのだ……別にレオンを代わりにと見ておるわけではないのだが……雰囲気がな……良く似ておる。好きな所で言うと。幼馴染の為に行動する所とか、何度でも立ち上がってくる所とか、骸骨姿であっても普通に接する所とか、我との交換条件にも怖がらずに話を聞いてくれて────「ストップ!」────他にもあるのだがの?」


 恥ずかしくて会話を止めるまでは良かったが────そこで俺は激しい動悸と吐き気に襲われる。


「……っ!? ごめん……なんか……気持ち……わ……るい……」


「どっ、どうしたのだ? 様子がおかしいぞ?? レオっ! 大丈夫か!?」


 そして俺はまた意識を失った。





 ◆◇◆◇◆




 目の前にかつての婚約者の姿が見える。



 これは夢だな。間違いない。



 だって彼女はいない────



 ────いるはずがない。既に死んでいるのだから。



 俺は前世で結婚を約束した人がいた。



 前世では唯一、俺が心から愛した女性。



 彼女との日々は時間こそ少なかったけど、有意義だと言えるぐらい濃密で幸せだった。


 俺は歩んで来た人生があんまり良くなかったせいか────好意は素直に嬉しいのだけど、何故か、他人に好かれても心に響かない……。


 つまり────人間不信……これは前世で敗者だったからだろう。


 それと、もう一つの理由としては女性不信だ────


 ────彼女は今までにもいた事はあるが、散々に財布と足代わりに使われた事しかない。あの時は好きだと思っていたのだが、最終的に浮気され、騙されたせいで、女性に対しては特に疑心暗鬼になってしまった。


 それが決定打だったのではないだろうか? それから、たまに胸が苦しくなった気がする。


 今回、アナの時に発作が起こったのはこれが理由だろう。さすがにもう大丈夫だと思ったんだが……。


 そして、人間不信と女性不信の状態で数年過ごして、出会ったのが、最初に話した婚約者だ。


 出会い方は省略するが、彼女のかける言葉に嘘はなく、何故かすんなりと聞こえてきた。


 そして、彼女は自信がなくなってしまった俺に対して。


 時には励まし。


 時には叱り。


 時には褒めて。


 そして────愛を囁いてくれた。


 両親がいなく、爺ちゃんしかいなかったが、家族と話すっていうは、こんな感じなのだろうかと思えるぐらい素敵な女性だった。


 それから、俺はどんどん彼女を好きになっていった。


 そして、彼女は挙式の1週間前に()()で亡くなった……。


 俺は絶望感でいっぱいだったのを覚えている……彼女のいない生活が辛く、悲しくて────治ったと思っていた発作はまた起こる。


 そう────前世ではこれをきっかけに発作が再発し、更に酷くなった。


 覚えているというのはおかしいな……この夢で彼女の姿を見た時に思い出した感じた。



 この状態の俺はアナと一緒にいる事が出来るんだろうか?


 でも、思い出し始めて、トラウマの原因がわかった気がする。


 俺を褒めて、優しくしてくれる人は死んでいる……。


 だからかな?


 俺は好きになろうとした人から、褒められたり、優しくしてくれたりされると────


 ────拒否反応を起こす。


 きっと、彼女を思い出すのだろう。


 愛したいけど、愛されたくないのかもしれない。


 アナの事を、俺は好きになり始めていたのかもしれない。


 だけど、いざ、俺を褒めたり、優しい言葉をかけてくれると────胸が苦しくなって動悸が酷く、吐き気がした。


 俺自身は幸せにはなれない────いや、なったらダメ────そんな感じだ……またあんな気持ちになりたくない。


 愛し、愛されてる人を失う恐怖は……もう、嫌だ────



 愛する事はまだ出来る。ただ、この記憶でどこまで愛せるかわからなくなってしまった……。


 婚約者だった彼女への想いは────俺の中で残ったままだ。


 しかし、アナといると安心するのも確かだ。


 いつか克服する事が出来るだろうか?


 愛される事に慣れていこう。




 ────声が聞こえる……アナの声が────



「レオっ! レオっ! 大丈夫か!? 目を覚ませっ!」


「すまない……」


 アナの声に反応し、心配をかけた事に寝た状態で謝罪する。


「いったい、どうしたのだ!?」


「どうやら、俺のトラウマが刺激されたみたいだわ」


 先程の夢の内容を前世を含め、簡潔に説明した。 


 だって、前世の話しないと成り立たないだろ? 俺7歳だし。


 聴き終わったアナは俺を抱きしめる。


「すまぬ……辛い思いをさせた……」


「いいよ。昔の事さ! 今はアナがいるし、この話聞いた以上はトラウマ克服に付き合って貰うよ? どうやら俺もアナに惚れてるみたいだしさ……じゃないと、発作なんて起こらないんだからな」


「〜〜〜〜っ!? 当然であろう! いくらでも付き合って、ちゃんと心から愛し合うぞ!」 


 俺も切に願うよ……アナには少しだけ心を開けているように思う。


 アナはなんでだろ? 安心出来るんだよな。



 ……っ!? そうか!?



 アナが似てるんだ……彼女に……。


 アナは元聖女って言っていた……話していると心が癒される気がする。


 って事は、婚約者であった────あの子も聖女並に心が綺麗だったんだろうか?


「アナ……お前の心は綺麗だな………これから先も不死王と…他の奴に言われても……アナの事は俺の聖女だって、いつでも大きな声で言ってやるよ!」


「……うっ……ぅぅぅ……馬鹿者……我はそんな良いものではない……」


 泣くなよ……可愛くて綺麗な顔が台無しだろ?


「そんな事は俺が決める! アナが決める事じゃない! 俺達は夫婦になるんだろ? なら少しずつでいい……歩み寄って行こうぜ? だから俺のトラウマなんとかしてね??」


「馬鹿者……最後ぐらい、しっかり締めろ……でも嬉しい……こんなに嬉しいのはいつぶりだろう……ありがとう…」


 涙が溢れてるけど、本日一番の笑顔だな。そして話し方が女の子らしいぞ? 可愛いけど。


 泣いて屈んだ、アナの近くに寄り添い……抱きしめる。


 そして、見つめ合いキスをした……。



 ────胸が苦しいな────


 でも我慢だ……絶対に幸せになってみせる!

お読み頂きありがとうございます。

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