流れる涙────
俺は全力で走って、村に到着した。
時間にしたら1時間ぐらいだ。魔力の総量・操作・出力が洞窟に向かう前と比べると段違いになってる気がする。
今なら手段さえ選ばなければ討伐ランクAでも勝てそうな気がする。
あくまで気がするだけだ……実際相手に出来るかどうかはわからんけど。
家に到着し、ミアのいる部屋まで走る。
「ミアっ!!!」
「ミアちゃんは寝てるんだから静かにしないとダメよ? それにミアちゃんはもう……」
「母さん、まだ諦めるのは早い。薬をとってきたよっ! すまないけど、母さん出て行ってくれるかな?」
「わかったわ……」
母さんの反応からして信じてないな……まぁ別に構わない。今、優先するのはミアだ。
2人きりになったので、ミアに声をかける。
「ミア! 起きて! 薬持ってきたよ!」
「んんっ、レ……オ……ン……」
「喋らなくていい。これを飲んで……」
「ごめ……ん……飲めな……いの……」
チッ、そこまで衰弱しているのか。
俺は口に万能薬を含み、そのまま口移しでミアの喉の奥まで流し込むようにする。
「んっ……く……んくっ……」
「どうだ?」
「レオン……大分楽だよ……話せるようになったわ……でも、たぶん……私……今晩死ぬみたい……自分の事は自分がわかるって本当なんだね……」
はぁ? 万能が効いてない?
万能薬なら飢餓状態でもなんとかなるんじゃねぇのか!? 薬師の婆さん嘘ついたのか!?
簡易鑑定をミアに使おう。あれなら何かわかるかもしれない。
「ミア! ちょっとお前に簡易鑑定使うぞ!」
名前:ミア
恩恵:植物成長
状態:飢餓(末期)
飢餓の時が目に入る。
馬鹿な!? 間違いなく、あれは万能薬だったはずだ!
「なんでだ!? なんで効いてないんだ!?」
「………レオン……本当に出会えて良かったよ……」
涙を流して俺に話しかけるミア。
もう手があっても間に合わない。そんな虚無感に襲われ、俺も涙が溢れ出る────
「俺も……ぐっ……会えて嬉しい……よ……」
なんで効かないんだよ……。
こんな事ってないだろ!
せっかく再会したのにっ!
「ねぇ……聞いてくれる?」
「なんだい? なんだって聞いてあげるよ?」
涙が止まらない………でも、ミアの前だ……笑顔だ……全力で笑え……。
「私ね……本当に嬉しかったんだ……」
「何が嬉しかったの?」
「ふふっ、レオンと再会したのがだよ……神様が正ちゃんの近くに転生してくれるって言ってたけど、本当なのか不安だったの……けどね、大人が農作業とかしてる間に子供だけ集まってる保育園的な所でレオンに出会った時、間違いなく正ちゃんだって思ったんだ……」
「どうして?」
「ふふふふっ、だってさ……癖が昔から一緒なんだったもん……困った時に頬をかいたり、鼻筋を揉んだりする仕草がさ……懐かしくて、絶対この人だってわかったんだ。そして優しさも昔と変わらない……」
そうか……そんな癖とかあったんだな。……良く見てるな。
「ミアは凄いな……そんな理由で確信出来るなんて……俺ならわからないだろうな……」
「一番の理由はね……レオンを一目見た時にね……こう……胸の奥がね……ギュッとしたんだ……まるで一目惚れみたいな……ね……」
段々と声の勢いが無くなってくるミア……話すのが限界なのかもしれない……。
「それでね……きっと……魂同士が……結びついてる……ん……だって……思っ……たん……だ……」
「ミア、無理して話さなくていい……頼む……」
頼む──
これ以上は────
俺が笑顔で聞いてられない────
前世からずっと俺を慕って、俺を追いかけてきた。
そんなミアが死ぬなんて俺には耐えられない。
……もっと話して。
……もっと笑顔で。
……もっと一緒にいたい。
胸が苦しい……。
「そん……な……悲しい……かお……しない……で………わた……し……はね………(すぅぅぅっ)ちゃんとファーストキスがレオンと出来て満足なんだよ! こんな醜い姿でも! ちゃんと私を見てくれているレオンが大好き! 誰よりも愛してるのっ! はぁ……はぁ……はぁ……」
空気を吸い込んで一気に話し出すミア。相当に辛いだろうに。
「ありがとう……ちなみに俺も今世ではファーストキスだよ。これからも……一緒にいような? だから……まだ、諦めるな! 頑張るんだ!」
「む……り……そう……」
目を閉じて、荒い呼吸をするミア……瞳からは涙が溢れていた……。
俺は拳に力を入れる。力を入れた手からは血が滴る……。
なんて、俺は無力なんだ……
もっと、俺に力があれば早く帰ってこれたんじゃないか?
いや、そもそも、ミアの異常にいち早く気付いていれば問題なんてなかったんだ!
なんで!
なんで────なんで────
────なんでなんだよっ!!!
もっと普段から考えていたら良かった。俺の怠慢が招いた結果なのかもしれない………俺の──力不足だ……。
この状態のミアを治すには……貴重なエリクサーぐらいしかないだろう。
何処にあるかもわからないし……。
仮にあったとしても買えない……。
手に入る場所があっても間に合わない………。
────間に合わない?
アナスタシアは俺に何て言った?
確か────
「くっくっく、我は一夫多妻でも一切問題ない。嫁が増えたら、挨拶させに来るといい。この世界じゃ普通だしの。さぁ、行ってくるが良い旦那様? クックック…これが時間停止の付与された袋型のアイテムボックスだの。剣も入れてあるし、最悪困ったら中にある薬も使えばいい。こんな物、此処で暮らしておったら、いくらでも手に入るしの」
と言った────アイテムボックスの中に薬がある?!
────何の薬だ!?
急いで、アイテムボックスから取り出すと────
中から1本の瓶と、丸薬、石が出てきた。
すかさずに簡易鑑定を使う。
【エリクサー】
【アナスタシアの秘薬】
【賢者の石】
【絆の指輪】×4個
俺はアナスタシアに感謝した。
ありがとう。
アナスタシアありがとう、本当にありがとう。
お前のお陰でミアは助かるよ。
直ぐに口に含み、もう一度ミアに口移しで飲ませる。
すると────
ミアの体は光だす────
そして、見る見る体が修復される────
こけた頬も────
窪んだ眼球も────
枯れた手を含めた全身も────
バサバサで傷みまくってた髪の毛も全てが元通りになる。
良かった。間に合った────
アナスタシア、本当にありがとうな。ちゃんと帰ってお礼を言わなくちゃな。
「あ……れ? ……私…生きてる? もう死ぬんだと思ったんだけど? レオンの事も諦めないとって思ってたのに?」
「なっ? ちゃんと治しただろ?」
「レ"……オ"……ン! ごれ"がらもい"っじょにいら"れるの??」
涙を流しながら俺に話しかけてくるミア。
「あぁ、いられるさ」
一息置いて。
「レオン────愛してる」
「ありがとう」
そして、俺たちはお互いに存在を確かめ合いながら抱き合った。
ミアが凄い勢いでキスをして来たのはご愛嬌だろう。
俺達まだ7歳の割にませてるよな……。
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