第99話 私は貴方をサポートします!
シェリとお互いの無事を確認をしていた時、突然私の後ろから、禍々しい闇魔法の魔力を感じ取った。
気がついて振り返った時。既にステファニー様のお兄様は、身体に濃い紫色の障気を纏って、魔力を暴走させている状態だった。
「フフ……私の研究は、唯一無二なのだよ…………! 私は、こんなところで燻っているような人間じゃないんだ……なのに、こんな小娘に、邪魔されて、たま、る、カ…………!!!」
そう叫ぶと、身に纏った闇の魔法石を発動させて、攻撃魔法を私達に向かって、止まる事なく放ち続ける。
「……っ!」
このままだと防御魔法が壊される……!? 私は咄嗟にシェリを庇ってギュッと目をつぶった……が、衝撃は何一つ来なかった。
それもその筈。
聞き慣れた声が紡ぐ、防御魔法。
私とシェリの前に立ち塞がって、更に防御魔法を重ねてかけ、攻撃を凌いでくれたのはルネ様だった。
「やっぱり、助けてくれるんだね?」
私は笑って問い掛けた。
「……何の事?」
「あの時のごめんねは、巻き込んじゃってごめんねって意味でしょ? それから私にかけた闇魔法。ワザと効果を弱めた状態でかけて、私が早く目が覚めるようにした、違う?」
私の推理を聞いて、ルネ様は降参とばかりに仮面を外して、困ったようにクシャッと笑った。
「……も〜、アリスちゃんは何でもお見通しだよねぇ」
「友達だもん、最初はビックリしちゃったけど……信じてたよ」
夜会にいる筈のないルネ様がいるし、シェリを攫った敵サイドにいるとは思わなかったんだもの。
「ルネ様、アリス! シルヴィオ王子が……」
シェリの声のする方を見ると、シルヴィオ王子が床に倒れ込んでいた。
「あ〜、ちょっと闇魔法に当っちゃった感じかなぁ?」
ルネ様が闇魔法を使って、王子を防御魔法の範囲内に運び入れる。様子を見る限り、ひとまず気絶しているだけのようだ。
帝国の王子をほったらかして、私達を守ったのは問題なかったのかなぁ……と、闇魔法で捕縛された、何とも言えない状態の王子に同情した私なのだった。
何かもう……捕縛されて床に寝っ転がっていると、王子なのに罪人感がすごいな……
「聞きたい事が山程あるんだけど、それどころじゃなくなっちゃったね」
ルネ様の闇魔法とか、シルヴィオ王子との関係とか……とにかく色々だ。
「こんなに騒ぎになる予定じゃなかったんだけどねぇ〜。まぁこうなったからには、後でちゃんと説明するよ〜」
「うん、お願いします。それに、これだけ騒いでいたら、流石にそろそろ応援も来るはずだと思うんだけど……」
う〜ん……と私が扉を見つめていると、ルネ様は恐ろしい事をサラッと告げた。
「あ、多分応援が来てたとしても、扉の前で足止めを食らってると思うよ?」
「へ?」
「あの男、確か扉に侵入不可の魔法をかけてたと思うんだよねぇ〜」
闇の魔法石を使ってチョイチョイってやってたなぁ〜とボヤいている。
「……んぇ!?」
「あ、窓にもかなぁ」
「なんと!?」
用意周到すぎるんですけど……!?
これだと闇堕ちしてるステファニー様のお兄様を封じ込めてはいられるけれど、逆に考えたら外からの助けは来れないし、私達はこの状態のまま閉じ込められてるって事ですよね……?
「ルネ様、さり気なく止めておいてよぉ……」
何で逃げ道塞いじゃったの……と、ぴーぴー泣く私をどうどうと宥めるシェリである。
「いやぁ〜こう見えて、アリスちゃんが登場したのが想定外だったから、俺も結構焦っててね。そっちまで気が回らなかったんだよね〜」
うぐ。私がイレギュラーな行動を起こしたせいで、色々と計画が狂ってしまったという事か……それは素直にごめんなさい案件だ。
「んー、もういっそ稼働させてる魔法石を、アイツごと力技で壊しちゃう?」
「えっ!? でもそれだとあの方、確実に瀕死待ったなしだよね……!?」
いくら悪事を働いた嫌な人でも、目の前で死ぬのはちょっと……精神的に無理です! と、顔を顰めた。隣でシェリもウンウンと頷く。
「というか、闇属性じゃない人間が闇の魔法を使いすぎると、こんな事になっちゃうんだ……」
「本来、そんな作用はないと思うんだけど……研究の段階で、何らかの影響を受けてる可能性が高いねぇ。そもそも家で独自の研究なんて、設備もちゃんとしてないだろうし、危なすぎでしょ」
そう言いながらチラリと床に倒れている王子を見つめると、生贄としてこの王子をあっちに放り込むかと、何とも恐ろしい発言をし始めた。
ちょうど意識もないし〜、とニコニコ笑いながら、物騒な事を告げているルネ様……ブラックジョークが過ぎますって。
「いやいや! これでも一応、一国の王子なんだから丁重に扱わないと……」
「ふ、2人とも……流石に不敬じゃない……? ね、シルヴィオ王子に、光魔法をかけた方がいいかしら?」
「え〜、シェリーナ嬢、光魔法が勿体ないよ。ただ気絶してるだけだし、どうせ起きたところで碌な事しないから、そのまま寝かしとこ〜」
……ルネ様、シルヴィオ王子に何か恨みでもあるのかな。
「……ん?」
2人のやりとりを聞きながら、私はシェリの言った光魔法という単語が耳に残った。
闇の反対といえば光……だよね?
「シェリ、光魔法で闇を祓うみたいな魔法ってあったりしない?」
シェリはうぅん……と悩んでいたが、おずおずと口を開いた。
「上級治癒魔法の分類にそういった効果のある魔法が存在するって話を、前に文献で見たわ。でも、お伽話のような伝わり方で、本当に出来るのかも分からないし、私じゃ魔力も技力も全然足りないと思うの」
ほうほう、とシェリの説明に相槌をうつ。
闇を祓う光魔法が存在するとしたら、今思い付いたこの方法、試してみる価値があるのでは?
「……なら、私の魔力を足して、シェリが光魔法を唱えてみたらいいんじゃないかな!」
「「……えっ!?」」
私の突拍子もない発言に、驚いた2人の声が重なった。
「アリスちゃん、魔力譲渡の魔法なんて聞いた事ないよ!?」
「うっ……でも出来るか出来ないかは、やってみなきゃ分からないよ……?」
そりゃ出来ない可能性の方が高いかもしれないけど、学園長も何時ぞやかに言ってたんだもの。4大属性持ちは、皆が驚くような魔法を使うって。
なんなら私は、新魔法を生み出した前科持ちである。
つまり出来ない事も出来る可能性があるって事だ。なら、こんな時に4大属性持ちを使わないで、どうするんだ私。
サポートは、私の得意分野だから。
「私がシェリをサポートします!」
いつもありがとうございます(*´꒳`*)




