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第95話 仮面舞踏会

 



「サ、サラッ!?」


「サラ様!?」


 私とラウル君は目を丸くさせ、声を揃えて驚いた。


 何で騎士服を着てるんだ……!?


 サラは夏の王宮舞踏会の際にフォルト様が着ていた、王宮騎士団の夜会服とデザインが殆ど同じものを着ていた。色は変更されており、ワインレッド色をメインに秋らしい色合いになっていた。


 いや、めちゃめちゃ似合ってるんだけどもね?


「エヴァン様には、この間の貸しがあるからな。ちょっと頼んでみたら、意外と融通を効かしてくれた」


 中々着心地もいいぞ、とニヤリと笑ったのだった。


「ナースズ様、素敵ですわぁ……」


 そう言いながら、見惚れるメイドさん一同である。この人(サラ)ったら、無自覚で王宮でもファンを着実に増やしているぞ。


 ていうか、そんなにドレス着るのが嫌なのね……


「サラ様、凄くかっこいいですっ!」


「ありがとな、ラウル」


 キラキラとした尊敬の眼差しで見つめるラウル君と、エヴァン様もお疲れ様です……と、遠い目をして思う私。そして、サラのカッコ良さにあてられているメイドさん達……この部屋、カオスすぎる……!




 ────────────────




 仮面舞踏会の会場となる大ホールの入り口を抜けると、そこは普段の舞踏会とは雰囲気がガラッと変わっていた。


 カーテンや壁に掛かっている絵画、置かれている小物も全て色味やデザインがシックで、尚且つ豪華なものに統一されている。ザ・大人の夜会って感じだ。流石は帝国との外交も兼ねているだけの事がある。


 会場に入って早々に気が引けている様子のラウル君が、ちょっと可哀想になった。


 初めての夜会がこれ程難易度の高いものになるとは。なんかごめんね……と、心の中で謝っておく私なのだった。



 ホール内を見渡すと、すぐに一際目立っている集団を発見した。キラキラオーラが、仮面を付けていても隠しきれていない。あれは絶対に殿下だ。勿論、側にいるシェリも然り。


「あそこにいるの……きっと殿下達、だよね?」


「うん、恐らくそうだろうな。人数的にも合ってるし」


 帝国の双子の王子様と殿下、婚約者候補のシェリとステファニー様、少し後ろに控えているのが、エヴァン様とフォルト様だろう。


 それを取り囲んでいるのが貴族の皆様なんだろうけど……人数が多すぎてよく分からないなぁ……


 シェリ、がんば……と思いながらその光景を眺めていると、フォルト様とパチッと目が合った。……と思ったら、ヒラッと軽く手を振ってくれたのだった。


「……!?」


 仮面越しだから、私の事なんてきっと分からないだろうと鷹を括っていたのに。び、びっくりした……!


「アリス様、どうかされました?」


「いやー……私ってそんなに存在感あったかなぁって、ちょっと不思議に思ってただけ」


「おーい、2人とも。お目当ての飲食ブースに移動するぞ?」


「「あ、はい!」」


 私達は慌てて返事をし、サラの後をテクテクと付いて行くのだった。



「んん、美味しい……!」


「このキッシュは、帝国の特産物を使っているのよ。帝国は海に面していない分、キノコだったり、山の幸が特産物として多いわね」


 会場で合流したミレーユが、オススメの帝国料理を紹介してくれる。ミレーユ自身もパクリと食べると、うん、美味しいわと微笑んだ。


「そうそう。それからチーズもオススメよ?」


 ミレーユの目線を追うと、鮮やかな色合いのトマトソースが絡まったペンネがあった。粉チーズがふんだんにかけられており、チーズの濃厚な香りが、私達のお腹を刺激してくる。


 1口食べると、口の中にちょっぴりと辛みのあるトマトソースが広がる。それをチーズがマイルドにしてくれていて、ちょうどよい味わいだ。


「どうしましょうアリス様、ここは天国かもしれません……!」


 はにゃ、と幸せそうなオーラを醸し出しているラウル君に、私はウンウンと勢いよく同意したのだった。



「ここにずっといるって事は、アリス達、よね?」


「あら、その声はシェリね。それにステファニー様も。お疲れ様」


 ミレーユが声のする方へと振り向き、そう言って笑った。


 私達がバイキングに夢中になっている間に、殿下達と一緒に行動していた2人が、歓談スペースからこちらへとやって来たのだった。


「やっぱりね。服装も知らなかったし、仮面も付けてるのに、すぐに分かっちゃったわ。飲食ブースに、可愛らしいピンクとブラウンの双子の様な方たちがいるって、夜会が始まってすぐに噂になってるんだもの」


 ね。と、ステファニーと一緒に、クスクスと笑うシェリである。


「「えっ!?」」


 ワザと、目立たないような格好を選んでもらったのに……!?


「それに赤髪の女性騎士に、清楚な雰囲気の美女も一緒なら、注目の的にもなりますよ」


 ステファニー様にまでそんな風に付け足され、あー……それは確かに、と納得してしまった私である。


 ひっそりとご飯を楽しむ予定だったのに、案外見てる人は見てるんだなぁ。まぁ、仮面があるから少なくともラウル君の素性はバレないだろうし、とりあえずは大丈夫、かな。


「貴族の方々は、凄い着眼点をお持ちなんですねぇ……」


 マナーとか、僕、大丈夫でしょうか……と、不安そうな声を洩らすラウル君。


「えぇ? 全然問題ないよ? そうだ、今からでも遅くないから気配を消してご飯を食べてみよう……!」


「はいっ……! 僕も頑張りますっ!」


「お前達には難しいと思うけどなぁ……」


「まぁまぁ、サラったら。やる前からそんな事言わないであげて?」


 シェリとステファニー様は、近くに居たウェイターからノンアルコールカクテルのグラスを、各々受け取った。


「殿下方は、まだまだ抜け出せそうにないみたいね。ステファニー様も久しぶりの夜会ですし、体調を崩したら心配ですから、無理は禁物ですよ?」


「シェリーナ様……お気遣いありがとうございます」


 ステファニー様は嬉しそうに、そっと微笑んだのだった。




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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