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第94話 メイドの本気

 



 仮面舞踏会当日。18時スタートだというのに、私とラウル君は、午前中の早い時間から王宮にお邪魔していた。


 ミレーユ曰く「それでもゆっくりな方よ? 私は踏会前日から王宮に泊まる事になってるもの」との事なので、まだマシな方なのだろう。


 支度に時間がかかるそうで、私達は息つく暇もなく、すぐに衣装部屋らしき部屋に通された。


 目の前に広がる光景に唖然とする。


「ひぇ……」


「す、すごい数のドレスとタキシード……」


「さ、お2人の好みをお伺いしてから、衣装や小物を選んでいきますね」


 メイドさん達はニコッと微笑むが、私は普段から自分に似合うドレスの良し悪しが分からないし、ラウル君は夜会のタキシードを着た事が一度もない。


「「お、お任せしますぅ!」」


 私達は声を揃えて、そう叫んだのだった。


「……まぁ! そうしましたら、少々お待ちくださいませ!」


 一瞬キョトンとしたメイドさん達だったが、バッと顔を寄せ合って、ヒソヒソと目の前で会議を始めた。声は筒抜けである。


「どうしましょう……私達がお2人のトータルコーディネートをしてもいいだなんて……身支度の権利を勝ち取った甲斐があったわ……!」


「アリスティア様は、少女らしさと可愛らしさを全面に出した方がいいかしら……? それとも仮面舞踏会らしく、いつもと違った大人な雰囲気を出す?」


「あぁっ! どっちも捨てがたいわ……! だけど、今回はご友人のポトリー様の雰囲気に合わせましょう? 色味はピンク系で、Aラインのイブニングドレスってところかしら」


「あと、シルバーのストーンがふんだんに付いているものにしましょう。氷の騎士様対策もしておかないと……」



 な、何だろう、氷の騎士(フォルト)様対策って……?


「それは忘れたら大変よ……! それから、ポトリー様は夜会自体が初めてとの事だから、派手すぎないものにして差し上げて。髪のお色が素敵だから、タキシードの色味は少し光沢のあるブラウンにしましょう」


「待って? このドレスとタキシードの組み合わせでお2人が並ぶと、滲み出る可愛らしさが、仮面を付けていても隠しきれないと思うわ……!?」


「落ち着きなさい。着ていただく前に、まだ準備は山程あるんだから。さ、皆、張り切っていくわよ!」


「「「はいっ!!!」」」



「ひゃいっ!?」


 メイドさん達の覇気のこもった掛け声に、思わずビクッとなるラウル君である。


「では、お2人はここで一旦別れていただいて、まずはそれぞれバスルームへご案内いたしますね」


「ぇぇぇっ!? おふっ、お風呂ですかぁっ!?」


 既に半泣きのラウル君は、半ば引きずられながら、連れて行かれたのであった。健闘を祈る……!




 ────────────────




 お風呂でピカピカに磨かれた私達は、お昼の軽食を来客室でつまんでいた。ラウル君は……既に満身創痍(まんしんそうい)である。


「だ、大丈夫……?」


「はひ……アリス様が一緒に居てくださらなかったら、食事も喉を通らなかったかもです……」


 王宮の軽食、美味しいですぅ……と呟いている。ご飯の美味しさは分かっているようなので、ひとまずは大丈夫だろう。



「今日の夜会は、どんな方々が招待されてるんでしょうか……」


「シェリに聞いた感じだと、結構色々な界隈から来るみたいだね。でもメインは帝国の王子様方の接待だから、やっぱり王宮勤めの重役の方とか、高位貴族の方が大半だと思う」


「大規模な夜会になりそうですね……! あれ? という事は、アリス様のお父様もご出席されるんですか?」


「うん、ちょこっとだけ顔を出すらしいよ。そうそう、父様で思い出した。婚約者候補として出席するシェリとステファニー様のご家族も、今回招待されてるんだって」


 まぁ2人の家柄的にも、元々参加枠には入っていたと思うけども。


 そんな事を考えながら、モグ、とカットフルーツを食べた私なのだった。うぅ……もっと食べたいけれど、帝国料理が私を待っているから、我慢だ……




 ────────────────




「「「お2人とも、よくお似合いですっ!」」」


 夕方には無事、メイドさん方が選んでくれた衣装を身に纏い、ドレスアップが完了したのだった。


 私は、胸元から裾にかけてピンクのグラデーションになっている、Aラインのイブニングドレス。裾に付いたシルバーのストーンに合わせて、他のアクセサリーもシルバーで統一されている。髪の毛は夜会ということもあって、リボンも一緒に編み込んだ、アップスタイルだ。


 ラウル君は光沢のあるダークブラウンのタキシードで、中に着用しているシャツや、小物類はシンプルにホワイトやシルバーで控えめにしたらしい。髪の毛は元々のフワフワ感を残しつつ、片側だけをワックスでまとめて、耳にかけている。



「さ、あとは仮面ですね。お好きな物をお取りください」


 目の前には色やデザインが様々な、煌びやかな仮面がズラリと並んだ。


「どれを選んでいただいても、どなたとも被る事はないんですよ」


 メイドさんが言うには、一見ソックリな物があっても、ラインストーンの数が違っていたり、使われている色が1色違っていたりするらしい。


「どれにしよっか?」


「こんなにあったら悩んじゃいますね……」


 ふーむ……と、どれにすべきか考え込む私達に、メイドさんがアドバイスをくれた。


「でしたら折角ですし、お2人とも似ている物をお選びいただいたらいかがでしょう?」


「そっか、お揃いっぽいのいいね……!」


 そうと決まれば選ぶのは早いもので、ぱっと見た感じは同じに見える、飾りのほとんどない銀色の仮面を選んだ私たちなのだった。それと同時に、コンコンとノック音が部屋に響いた。


「お迎えの方がいらっしゃいましたわ」


 扉の向こうを確認してきたメイドさんの、顔がほんのりと赤いのは何故だろう……?


「「お迎え……?」」


 誰かが来てくれるなんて話、聞いてたっけ……?


 不思議に思いつつも、お通しして下さい、とメイドさんに伝えて扉を開けてもらう。



「2人とも、お疲れ」


 そこにいたのは、夜会仕様の騎士団服を着た、サラだったのである。




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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