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第93話 招待状

 



 放課後、賑やかな教室の中では、私の机周りにいつものメンバーが集まっていた。


 というのも、シェリから「渡したい物があるから、ちょっと放課後残ってほしい」と頼まれたのである。



「「……か、仮面舞踏会?」」


 フィリップ王子からの、お礼という名の【仮面舞踏会への招待状】が、シェリ経由で私達の元に届いたのは、学内見学から数日後の事であった。


 そんな物が届くなんて全く予想していなかった私達は、それを受け取り、目を丸くさせたのである。


 サラも私達と同じく招待状を受け取ったのだけど、特に驚いた様子もなく、ふーんと文面を読んでいた。


「今、帝国の王子様方がいらしてるでしょう? 帝国にお帰りになる前に、王宮で親善夜会を開催する事が元々予定に組み込まれていたのだけど、今年の親善夜会のテーマが仮面舞踏会に決まったそうなの」


 私とラウル君の戸惑った様子を見て、フフ、と笑ったシェリが、簡単に説明をしてくれる。


「おぉう……それはまた、お洒落な催し物だね……」


「ぼ、僕、王宮の夜会なんて行った事ないですし、場違いすぎますぅ……!」


「大丈夫よ。参加者は必ず仮面を付ける事がルールなの。ラウル様も身分とかを気にせずに参加出来ると思うわ。だからフィリップ様もお誘いくださったのよ、きっと」


 ぴぇっと、背筋が伸びるラウル君。帝国の王子から直々にお誘いなんて、滅多にないもんね……


「それは有難いご配慮なのですがっ……でも、着ていく服も僕持ってないです……!」


「その点は安心して? 殿下が、王宮にある物でよければ貸すとおっしゃってたわ。ラウル様はそうね……王宮に少し早めに来てもらって、全て王宮内で準備したら問題ないわ」


「あ、あわわ……アリス様ぁ……」


「だ、大丈夫だよ、ラウル君。王宮は怖くないし、皆さん優しいしっ!」


 キャパオーバーで今にも泣き出しそうなラウル君に助けを求められた私は、そう言ってグッとガッツポーズをしたのだった。が、頑張れラウル君。



「ラウルが1人で王宮に行くのが不安なら、アリスも一緒に行って、そのまま王宮で支度させてもらえばいいんじゃないか?」と、サラがとんでもない事を言い出した。


「ほぇっ!?」


「それに、ミレーユも参加するだろ? 王宮で支度をするよな?」


「えぇ。留学生代表として出席を頼まれているから。でも流石に1人じゃ夜会の支度は出来ないから、王宮でお任せする事にしたわ」


「ならそこに、もう1人(アリス)が増えたところで、特段変わらないと思うんだよな。そうすれば着替えとかは別でも、待ち時間はラウルも一緒に居られるだろ?」


 サラからの思いがけない提案……そ、それってつまり、道連れじゃないか……!


「えーっと、じゃあミレーユがいるなら、私が居なくても大丈夫じゃない?」


「私だと夜会の打ち合わせで席を外す事が多いから、会が始まるまでラウル様の側にはいられないと思うのよね」


「そうよね……じゃあアリスもお願いできるか、殿下に確認してみるわ」


「えっ? ちょ、えっ!?」


「あぁ、よかった……! アリス様も一緒なら心強いですっ……!」


 ホッと胸を撫で下ろすラウル君と、それを微笑ましく見守るミレーユ。ほのぼのするのは、まだ早いよ?


「いやいや、まだ決まった訳じゃないからね!? それ、かなり王宮に迷惑だと思うけどね!?」


「殿下はきっと快諾してくれると思うわよ? それにアリスを着飾れるとなれば、王宮メイドの皆もきっと喜ぶと思うわ」と、キョトンとするシェリである。


「えぇ……?」


 この忙しい時に余計な仕事を増やして、の間違いじゃない……?



「いいなぁ、仮面舞踏会〜」


 私の席から少し離れたところで、そんなボヤキ声が聞こえた。


「あら? ルネ様も留学生枠で、ご招待されてませんでした?」


「流石シェリーナ嬢、招待客の名簿は暗記済みなの〜? 正解。でもその日はどぉ〜〜〜しても都合がつかないから、俺は欠席」


 折角の楽しそうな夜会なのに、残念〜、としょぼくれて座るルネ様の机周りには、女子生徒が群がっている。


「ルネ様、可哀想ですわ〜」「ルネ様、甘い物でも召し上がって、元気出してくださいっ」などと、キャッキャと構い倒されているので、全然残念そうには見えない。


「何か……ルネ様って、いつも多忙だよね?」


 何時ぞやかも、そういえば忙しそうにしていたなぁ、とふと思い出した。


「ん? 可愛い女の子との予定が詰まっててね〜」


 それが本当なら、本来優先すべきは仮面舞踏会なのでは……? まぁルネ様の事だから、いつもの冗談なんだろうけど。


「そうと決まれば、早めに殿下にご相談ね……今、生徒会室にいらっしゃるかしら……」


「あ、シェリ。私も着いて行くよ。エヴァン様にちょっと野暮用があるから」


 サラはニカッと笑って、指に挟んだ招待状をヒラリと振ったのだった。



 2人が教室から出て行った後。そうそう、とミレーユが私達に教えてくれた。


「今回の夜会は親善も兼ねているから、帝国の料理もバイキングに出てくるわよ?」


「「えっ!?」」


 帝国料理が楽しめる、ですと……!?


「フフッ、2人ともさっきとは打って変わって、目がキラキラしてるわね。私も色々と進言させていただいたから、私のオススメも沢山並んでると思うわ」


 ちょっと憂鬱になっていた私だったが、そうなってくると、話は別なのだ……!


 私とラウル君のテンションが、さっきより格段に上がった事は、言うまでもない。


 やったぁ〜! と手を合わせて喜ぶ私達を見て、ミレーユは、うんうんと満足げである。


「尊いわぁ……」


「……ミレーユ嬢、親善夜会の為っていうより、2人の為に帝国料理の助言に力入れたんじゃない〜?」


 机に頬杖をついたルネ様が、呆れながらその光景を眺めていたのだった。




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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