表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/160

第92話 可愛いは正義

 


 見学の時間(タイムリミット)的にも、ここが最後の見学場所となるだろう。私が案内したのは勿論、飼育場である。


「あれっ、アリス様? えっ、あっ、それに皆様もお揃いですか!?」


 屋外広場のブースで、沢山のうさぎ達を自由に遊ばせていたラウル君が、驚いた表情で私達の元へと小走りでやってきた。


 そうそうたるメンバーが突然やって来たら、そりゃ驚くよね。アポなしでごめんよ……


「お疲れ様! 急に来てごめんね。帝国のフィリップ王子も、学園の案内をしててご一緒なの。ちょっとお疲れ気味だから、是非ここで癒されてもらおうと思ったんだけど……」


「なるほど、それなら任せてくださいっ! どうぞ!」


 動物の事となれば、殿下でも他国の王子でも気にならないようである。ラウル君はイキイキとした表情で、私達を広場の中へと案内してくれたのだった。



「今、ちょうどうさぎが広場にいるので、自由に抱っこしたり、撫でてあげてください〜!」


 僕、オヤツの人参を持ってきますね、と室内飼育場へとパタパタと駆けて行った。


「可愛いな……」


「はい、王子もどうぞ」


 サラからうさぎを手渡されて、ちょっと戸惑っている王子である。あれ?


「実際に動物を触った事があるのは、馬くらいしかないんだが……」


「うさぎは大人しいので、大丈夫ですよ。まずは頭や背中を優しく撫でてみてください。うさぎは体温も高いからポカポカで、とっても気持ちがいいんです」


 オヤツの人参スティックを持って来てくれたラウル君が、躊躇(ためら)いがちな王子に優しく声を掛けた。


 それを聞いた王子は恐る恐る、うさぎの頭にゆっくりと手を乗せて、そっと撫でる。


「本当だ……あったかいな」


 うさぎの、目を閉じて気持ちよさそうにしている様子を見て、ポツリと言葉を洩らした。


「人参も食べさせてあげてください。可愛さが更にアップします!」


 ラウル君のおもてなしはバッチリなようだ。王子も癒されているご様子だし、少しの間だけでもゆっくり過ごしてもらおう。


 広場にいたのがうさぎで、ちょうどよかったのかもしれないなぁ。動物に慣れてない人が、いきなりアルパカどうぞ〜とか言われても、ちょっとたじろぐだろうしね……



「久しぶりに動物に触ったかもしれないわ。可愛い」


 ヨシヨシと、うさぎの頭を撫でるシェリを、殿下は隣で優しく見守っているご様子である。ここは別空間になってます。まぁ殿下も、王子とはまた違ったお疲れモードですもんね。


 私はうさぎを抱っこして、テクテクとフォルト様の元へ歩み寄った。


「ん?」


「フォルト様も折角ですから、触ってみてください」


 もふもふ、可愛いですよと笑う私の頭を、何を思ったのか、ポフポフと撫でるフォルト様である。


「……?」


 ん? もふもふ、ポフポフ……?


 訳が分からず、されるがままになっていた私だったが、ハッと再起動する。


「ち、違いますよ? もふもふはうさぎ……」


「可愛いものは愛でるべきだろう?」


 そう呟くと、ほんの少しだけ笑って、私の腕の中にいるうさぎを覗き込む。そっと親指で、うさぎの頭をひと撫でしたのだった。


 微笑むフォルト様とうさぎの絵面も、中々の目の保養だ。護衛ポジションだから控えているのかもだけど、遠慮しないで抱っことかしたらいいのに……



「わっ!? ちょ、ま、待ってくれっ!!!」


「……ん? 何か室内の方から、叫び声が聞こえてこないか?」


「様子を見に行かなくて平気なのか?」


 殿下とフォルト様がいち早く異変に気づき、ラウル君にそう問い掛けた。


「あっ、大丈夫です! ここでは割とよくある事なので!」


 いい笑顔で言い切るラウル君も、大分肝が据わってきたものである。


「すみませ〜んっ! 広場に出て行っちゃいました〜!!! 捕獲お願いしますぅ〜!!!」


 何だかデジャヴな気がするぞ……?


 私の勘は、バッチリ当たったようだ。


 広場にシュパッと軽快に現れたのは、何時ぞやも脱走を図っていたリスザルである。キョロキョロとしていたが、私の姿を視界に入れると、素早くこちらに向かってきた。


 一目散に私の所は駆けてくると、よじよじと足元から登ってくる。


「や、やっぱりまた君かぁ。元気そうだねぇ」


「キュ!」


 まんまるの目をクリッとさせて小首を傾げる姿は、可愛くて叱る気も失せてしまうのだから、仕方がない。


「でも、飼育員さんを困らせちゃダメでしょう?」


「キュ〜……」


「君は頭が良さそうだから、飛び出す前に、飼育員さんに一声掛けれそうなんだけどなぁ……」


「キュッ!」


 まるで「出来ます!」と、言わんばかりのいい返事である。


「えっ、アリス様、ついに会話まで出来るように……!? ぼ、僕にも教えてくださいっ!」


「いや、私が一方的に話しかけてるだけだよ……? この子がこっちの言葉を理解してくれてるみたいだから、ラウル君が話しかけても分かってくれる……はず。うん、多分」


 私の肩にはリスザル、腕の中にはウサギ、と意図せずもふもふパラダイスになったのだった。そこにラウル君も加われば、ワイワイと更に賑やかになる。



「可愛いの供給過多だな。あの空間を見てるだけで癒されるよ」と、サラが笑った。


「動物は人の心が分かるというからな。彼女達の優しい性格が分かっているんだろう。おかげで私も、すっかり癒されたよ。このお礼はきちんとしないとな」


 そう言って、フィリップ王子は穏やかな笑みを浮かべた。


 喜んでいただけたなら、それだけで充分なのだけど、お礼とは何ぞや……?


 私とラウル君は顔を見合わせたのだが、後日驚く事になるのだった。


 



いつもありがとうございます(*´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ