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第90話 嫉妬

 



 皆は確実にポカンとしていたが、サラはお構いなしに、とてもいい笑顔でこう言い切った。


「学園内は広くて見る所も多いですから、案内役も多い方がいいかなと思いまして。私達だから説明できる事も、きっとありますよ?」


 おぉ……?


 すごい。サラの口からスラスラと出てくるそれっぽい理由に、私は感心しっぱなしである。私だったら口から出まかせを言い始めたら、挙動不審になること間違いなしだ。


 ……まぁ、それっぽく言っているけど、私達の本当の目的は案内サポートというより、シェリの護衛なんですけどね……!



 もしかして殿下は、私達がこのタイミングで乱入する事を知っていたのだろうか? サラの言葉を聞いてすぐになるほどな、と頷くと、帝国のお2人に同行の許可を求めてくれたのだった。


「フィリップ殿、シルヴィオ殿。この2人は、シェリ(・・・)の特に親しい友人なんだ。案内役として、一緒に回っても構わないかい?」


「そうなのか。それなら勿論。よければ学園の事を色々と質問させてくれ」


 な、とフィリップ様は、シルヴィオ様の方を向いて同意を求めた。


 シルヴィオ様は何を思ったのか、ジーッと私とサラを見定めていたが、フッと目線を外すと、別に構わないぞと返事をしたのだった。


 よ、よかった。突然近づいてきて不敬だ、とか言われなくて……


 そんな最悪の事態を、ひっそりと考えていた私は、ホッと胸を撫で下ろしたのだった。


「ありがとうございます。あ、私はアリスティア・マークと申します」


「サラ・ナースズと申します」


 私とサラが簡単な自己紹介を済ませた後、気を取り直して学園見学へと向かった私達であった。



 ん? そういえば殿下、最初はシェリーナ嬢って紹介してたのに、結局普段通りの呼び方にしたんだ。


「一応これも外交の場なのに、愛称呼びなんて珍しいなぁ……」


 私がポツリと独り言を呟くと、頭上から呆れた様子の声が降ってきた。


「ユーグのじっみーな牽制だぞ、それ。は〜、嫉妬深いって嫌だねぇ」


 姿は見えないけれど、どうやらニャーさんが近くにいるらしい。今日は影の護衛を頑張っているようだ。


「あーさんも、嫉妬深い男には気をつけろよ」


「え?」


 何故に私も……? と考えている内に、ニャーさんの気配はなくなるし、皆との距離が開いてしまい、慌てて追いかける羽目になるのだった。




 ────────────────




「アリス、サラ、ついて来てくれてありがとう」


 前を歩く男子陣を見ながら、シェリがコソッと私達に耳打ちをしてきた。


「気にするなって。案内自体も面白そうだし。お礼は、気を利かせたエヴァン様にでも言ってあげな」


 いつも殿下やフォルト様と一緒にいるエヴァン様は、今日に限ってお休みしているのだ。今日ほど仲裁役が欲しいと思った時はないのになぁ……



「そうね。今度お礼を言わなくちゃ。殿下やフォルト兄様もいるから、大丈夫って思っていたけど……やっぱりアリス達がいるとホッとするわ」


 そんな嬉しい事を言われると、頼りにしてくれている感じがして、なんだかくすぐったい。



「シェリの付き添いは全然構わないんだけどね? 突然サラに聞かされて、あれよあれよという間に、王子達の前に登場する事になったから、どうなる事かと思ったよ……」


 この件については、寿命が縮んだと言っても、過言では無い、多分。



「ちなみになんだが、見てみたい場所はあるかい?」


 中庭の庭園を見学し終えた所で、殿下が2人に問いかけた。


「そうだな……他国の者が見学してもよいのであれば、私は図書館が気になっていてね。聞けば、王宮図書館に次ぐ規模の図書館だそうじゃないか」


「あぁ、是非案内させてくれ。ここの図書館は学園の中でも特に見どころの1つだからな」


 まずはフィリップ王子の希望を叶える事となり、私達は図書館へと足を運んだのだった。



「これは……想像以上に見事な建築だ」


「確かにすごいな。本当に学園内か? ここ」


 2人は図書館の造りに驚きを隠せていない様子である。はぁ……と、感嘆のため息が聞こえたくらいだ。


 初めて見たら、そりゃびっくりするだろうな。私も入学してすぐの見学の時、そんな感じの感想だったもの。


「そうだ、この時間ならきっとミレーユがいるね」


「お。確かにそうだな」


 キョロキョロと館内を見渡すと、奥の作業カウンターに座っている姿が目に入った。実は、本好きが故に、図書館の管理のお手伝いをしている活動に入ったミレーユなのである。


「アリス達、いらっしゃい……って、あら? フィリップ王子とシルヴィオ王子。ご一緒とは知らず、失礼致しました」


 私達の姿に気が付くと、足早にカウンターから出て来て挨拶をした。


「やぁ、ミレーユ嬢。君も変わらないね。元気そうで何よりだ」


「はい。毎日がとても充実していますわ」


 声を掛けたフィリップ王子に、ありがとうございます、と、微笑んだのだった。



 興味深そうに本棚を眺める王子様方に付き添いながら、時折解説を入れつつ、館内をぐるりと回る。ちなみにミレーユも一緒にである。


「シェリがいるのは婚約者候補としての外交の一環だから分かるけれど、アリスとサラも、王子達の見学の付き添いなの? 2人とも、帝国の王子達と面識なんてあったかしら?」


 キョトンとしているミレーユに、私はあー……と、もにょもにょ言い淀んだ。


「うーんと、まぁ、成り行きで……? えーと、シェリの為っていうのが1番の理由、かな……?」


 私の言葉の濁し加減で、ピンと来てくれたようだ。ミレーユは更に声量を落として、私にそっと教えてくれた。


あの方(シルヴィオ様)、帝国でも手がお早いのよ。ご自分の好みの女性には、かなりグイグイいくから……しかもシェリなんて、あの方の好みにバッチリ当てはまっちゃってるわ」


「あ、やっぱり……? もう初対面でやらかしてらっしゃったから、殿下とフォルト様からは要注意人物って目で見られてると思うよ」


「帝国では割と、男性に強さだったり力を求めるところがあるから、グイグイ来るような、我の強い男性が人気だったりもするのよね」


 私はそんな基準で選ばないけれど、とミレーユは付け足した。


「へぇ……」


 温和なフィリップ様と、俺様なシルヴィオ様、か。



 将来的には、この王子様方のどちらかが、王として国を治めていくんだよね。


 王位継承権争い、最終的にはどうなるんだろう……?




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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