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第89話 双子の王子様

 



「そういえば、帝国の王位争いって相変わらず続いてるんでしたっけ? 火元であるそのお2人が来国するって……めちゃめちゃ気を遣いますよね」


 夏季休暇の時に、そんな話を父様から聞いたなぁと、ふと思い出した私である。


「そうねぇ。まぁ王位争いだーって騒いでるのは一部の貴族たちだし、何かあったとしても、王子様たちはその辺はきちんと取り繕って外交するでしょ」


 さすがに、エタリオル(うち)に来てまでギスギスしてたら反応に困るわぁ〜と、ニコラ先生は紅茶を一口飲んだ。


「んぁ? 待てよ……あの双子って、学年でいうと3年か……? あ、更にめんどくせー事に気がついちまった」


 私の隣から、やけに沈んだ声が聞こえてきた。


「へ? 面倒くさい事ですか?」


「絶対学園にも見学に来るだろ、双子の王子様。はー、やだやだ。女子生徒はキャアキャアうるせぇし、警備も普段以上に厳重にしなきゃじゃん」


 もう1個食わなきゃやってらんねぇわ、とニャーさんは素手でシブーストをヒョイッと取ると、モグモグと頬張った。……フォークは使ってください。


「え、ヤダ、有名な帝国の王子様たちを直接見れるなら、ちょっと話は変わってくるわねっ。テンション上がってきちゃうわっ」


 爛々(らんらん)とした様子の先生である。


 あぁ……ニコラ先生はイケメンに目がないもんなぁ……



「帝国の王子様方も、確か見目麗しいって評判ですもんねぇ。確か双子でも二卵性だから、似てないんですっけ?」


 私の予備知識なんて、あまり王子様方に興味がなかったから、ぶっちゃけそれくらいしかないのだ。


 そんな何気ない私のコメントを聞くや否や、先生の目がキラリと光った気がした。


「……もしかしてアンタ、双子の王子様たちの事、全然知らないのね?」


 ズイッと前のめりになって、テーブル越しに顔を近づけてきた。


「仕方ないから、アタシのとっておきの情報、教えてあげるわっ!」


「えぇー……? わ、わぁ〜ありがとうございますぅ……」


 別に知りたい訳でもなかったんですけどね……?


 私の反応には興味がないのか、気にする様子もなく、先生は意気揚々と語り始めたのだった。


「兄のフィリップ王子は、アッシュグレーの髪色に、紫色の瞳の、優しそうで温和なイケメン。好感度バツグンのザ・王子様って感じね。弟のシルヴィオ王子は、アッシュグレーの髪色に黒色の瞳で、王子様っぽくないヤンチャな感じがある、ワイルドイケメンなの。問題児的なところがあるんだけど、そこが逆にいいっていうご令嬢も結構いるみたいね。この2人はアンタがさっき言ってた通り、二卵性の双子だから、雰囲気が全く違うの。双子っていっても、同じなのは髪色だけ」


 ペラペラと、早口にそう言い切った先生は、とても満足そうである。何ならプラスアルファで、ドヤ顔もいただきました。


 その間にニャーさんが、さり気なくシブーストを更に食べていたのは、黙っておこう。




 ────────────────




「初めまして、光属性のご令嬢。お噂はかねがね」


 そう言ってシェリの手を取ると、軽く唇を添えたのは弟のシルヴィオ王子の方だった。


 わぁ。初めましての令嬢に対する挨拶にしては、距離がそこそこ近いなぁ……?


 キャアッと、周囲から黄色い声があがる。


 色々と言っていたニャーさんの予想は、思いっきり当たってしまったみたいだ。


 来国して早速、ルルクナイツ魔法学園を見学したいとの声が上がったそうで、今日は軽く学内を歩いて回るらしい。そんな中、殿下と共に挨拶をして出迎えたシェリが、さっそく帝国の双子の目に止まったようである。



「シェリーナ嬢は私の婚約者候補なのでね、すまないが、適切な距離感をお願いしたい」


 やんわりと距離を離す殿下の目が、笑っていないのは気のせいだろうか……


 殿下の後ろに控えているフォルト様も、シルヴィオ王子に冷え冷えとした目線を送っているのが、ここからでもよく見えた。冷気は抑えてください、フォルト様……!


「そうだぞ、シルヴィオ。他国の王子の婚約者候補の方に対して、失礼があっては困る」


 シルヴィオ王子の横で、困った表情を浮かべたのが、恐らく兄のフィリップ王子だろう。


「今日は案内、よろしく頼む。他国の魔法学園はとても興味深い。とても楽しみにしていたんだ」


 そう話して、周囲を見渡しながら微笑んだフィリップ王子。それを見て、またしても女子生徒の黄色い悲鳴が上がった。


 よーし、覚えたぞ。シェリにちょっかいかけたのが、弟のシルヴィオ王子。チャラい方が弟。なるほど、ヤンチャというのは女性に対しても、という事なのですね。あ、あと天然タラシが兄っと。



 ふむふむ、と人混みに紛れて観察をしていた私の後ろから、アリスと声が掛かった。


 振り向くと、サラが手を小さく振りながら、私のところにやって来た。


「あれ、サラ。騎士訓練に行ったんじゃなかったの?」


「あー、そうだったんだけど……未来の宰相殿に、シェリが帝国の奴らに絡まれるのを、さり気なく阻止してほしいって、極秘依頼を受けたからな」


 ニカッと笑うと、私の腕を引いて、人混みの中をグングンと抜けていく。


「えっ? えっ、なんで私もっ!?」


「シェリを守るなら、勿論アリスも一緒に、だよな?」


「いや、まぁそう言われるとっ、断る理由なんてないけどもっ」


 おっとっと、と私は足がもつれそうになりながらも、ポンッと人混みを脱出すると、そこには騒ぎの大元である双子の王子様が、目の前にいたのでした。


 きょとんとするフィリップ王子と、何だコイツ?と言わんばかりの顔のシルヴィオ王子。


 近くで見ると、これは流石に、ニコラ先生も目の色変えるレベルのイケメンですな……


 そんな事を思いつつ、気の利いた言葉が出てこない私は、愛想笑いをするしかないのでした。うわん。



 サラ、突然連れてきたからには、ちゃんとフォローしてよね……!?




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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