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第87話 好きの意味合い

 



「ルグダン家にとって、今回の事件は結構な痛手だよね。闇魔法に操られて、尚且つ魔力暴走まで起こしてしまったし。婚約者候補としては、一歩下がった感じかな」


 ふむ、と顎に手を当てて、エヴァン様が分析をする。


「婚約者候補とか、そういった政治的背景を考えると……フィゾー嬢の怪しさが増していくな」


 でもあの時のステファニー様って、明らかに体調悪そうだったけどなぁ……


 嘘をついているようにも思えなかったから、難しいところである。


「とりあえず、ユーグはフィゾー嬢とかいう奴と、ちゃんと面会しとけよ? 俺は念の為、シェリーナ嬢の護衛を普段より気ぃつけるようにするわ。婚約者候補だからあの女(レベッカ)が今回ターゲットになったっていう可能性もあるしな」


「……分かった。気は乗らないが、仕方ないな。面会希望の手紙を出しておこう」


「僕は闇の魔法石の解析結果を聞いてから、ルグダン嬢の証言との擦り合わせをするね。まぁ、闇の魔法に操られていたっていうのなら、自我を保てていたとは到底思えないけど」


 簡単に操られそうだもんね、あの方。と、微笑んで話すエヴァン様は悪気がない分、逆にえげつない。


「えーっと、そうしましたら、私は何をしたらいいでしょうか?」


 私が意気揚々と手を挙げて質問すると、その場にいた4人から「もう充分だから、何もしなくて大丈夫」と、声を揃えて言われてしまったのには、納得いかないのだった。色々知った以上は、お手伝いするのに。


「じゃあニャーさんと同じく、シェリの周辺に気を配っておきます……」


 そう言って、あぅ……と、しょぼくれた私なのだった。



「ちなみにアリスティア嬢はあれだよね? 今回の件では、突拍子もない事はしてないよね?」


 エヴァン様からの問い掛けに、私がしてないですよと言おうとしたところで、フォルト様がそれを遮った。


「あの女の魔力暴走を止める為に、同じ威力の魔法を放って相殺し続けたらしい。その時に、頬に傷を負った」


 スルリと私の頬の、傷があった箇所を触れる。


「ぴゃ」


 フォルト様の指が思ったよりもヒンヤリしていて、ビックリして変な声が出た。


「お前ら、2人でわちゃわちゃイチャイチャやってんなーと思ったら、そんな事になってたのかよ」


 ただイチャついてるだけかと思って達観してたわー、とニャーさんがヘラヘラと呑気に笑う。


「えぇぇ……? 令嬢なのに顔に傷ってまずいでしょ……」


「見た感じだと傷はないようだけれど、もう治ったのか?」


「ニコラが治癒魔法で治した」


 エヴァン様と殿下の言葉に、しれっと答えるフォルト様を、私は思わず凝視してしまった。


 フォ、フォルト様、この件は内緒の話じゃないんですかっ……!?


「えー! アリスティア嬢に光魔法を使ったんだ……!?」


「まさか王家、ごく僅かな側近に次いで、アリスティア嬢がこの事を知るとはな……」


「ひ、ひぇ……」



 殿下の話によると、ニコラ先生は王家公認で、光属性持ちである事を隠しているそうだ。知っての通り、光属性持ちは希少な存在の為、保護目的も兼ねてセキュリティもしっかりしている学園に、先生として所属しているらしい。


 今となって冷静に考えたら、こんな重大な秘密をバラしてまで治癒してもらう程の傷じゃ、絶対なかったですよね!?


 私はサーッと血の気が引いた。


「あわわ……あんなちょっとの傷を貴重な光魔法で治してもらうなんて、やっぱり申し訳なかったですね……!」


 またしても王家の秘密を1つ知ってしまった私は、ガクッと項垂れた。しかも、私が思っていたよりも、事は重大だったようだ。


 ……そもそも怪我を隠そうとなんて、浅はかに考えなければよかったんだよね。うぅ、何だか色んな事が空回りしちゃって、ダメダメな気がする……



「……っほわ!?」


 私が悶々と1人反省会をしていると、勢いよく頭の上に手が置かれた。驚いて見上げると、さっきまでソファーで寝そべっていたニャーさんが、いつの間にか私の真後ろにいたのだった。


「治癒魔法を使うって決めたんはニコラなんだから、あーさんが気にする必要はないっしょ」


 そうだな、とフォルト様も横で頷いた。


「正直俺も、まさかニコラが目の前で光魔法を使うとは思わなかったしな」


「え? そうだったんですか……?」


 あ、あれ? と、キョトンとする私である。


「重傷とかでなければ、傷の治りが早くなるニコラ特製の塗布薬とかでも充分だもんね?」


 軽傷を治す方法なんて、ニコラ位のレベルになれば色々あるもの、と付け足して、エヴァン様は微笑んだ。


「ま、ニコラもなんだかんだで、あーさんの事がお気に入りなんだろーよ」


「……ぅぅ、ニコラ先生大好きですぅ……!」


 私は感極まりつつ、涙声でそう呟いた。保健室への差し入れは、ホールケーキに決定だっ……!



「「「えっ!?」」」


 フォルト様は無言だったけれど空気がピリッとするし、他の3人に至っては、やけに食い気味の反応だ。


「えっ? あ、あの、先生として尊敬するから大好きだなって……」


 言っただけなんですけど……と、皆さんの圧に押されて、後半は尻つぼみになる私である。


「……あぁ、何だ。そっちね?」


 驚かさないでくれよ、と笑う殿下の意図がよく分からない私は、小首を傾げ続けるのだった。


 いや、そっちってどっちですかね……?




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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