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第78話 魔法実技試験 1

 



「キャッ……!」


 私達の前にいた女子生徒から、小さな悲鳴があがる。防御壁の向こう側に視線を戻すと、そこには狐の魔獣が姿を現していた。


「うぉ、すごいな。今日は魔獣も大盛り上がりだな」


 グレイ先生は、ピュ〜ッと口笛を鳴らして、呑気に感想を述べている。軽くそんな事を言ってるけど、これって結構、危険なんじゃないのか……?


「1人で討伐出来るものなのかしら……」


 シェリも、狐の魔獣と対峙している騎士様を不安そうに見つめていた。そんなシェリにサラが声を掛ける。


「安心しろ、シェリ。王宮魔獣討伐騎士団は、伊達にその名を背負ってないぞ?」



 皆が息を呑んで見守る中、騎士様はスッと手を前に突き出し、魔力をあっという間に身に纏った。



『貫け 水流一閃(フロウ・ライン)



 素早い詠唱で水魔法を発動させたかと思うと、水を噴射させて、狐の目元を狙う。狐が怯んだ隙に、サッと剣を構えて、距離を一気に詰めた。そして躊躇う事なく、剣を振りかざす。


「ハッ!」


 狐の心臓を的確に突き、狐は倒れ、ピクリとも動かなくなったのだった。おぉ……無駄に血を流させないあたりが、すごくプロっぽい。


 そんな騎士様の活躍に、ワァッと歓声が上がり、パチパチと拍手も巻き起こった。


「すごい……これぞ、まさしく魔法と剣の二刀流……」


 私もそう呟きながら、皆とともに溢れんばかりの拍手を送る。


 しかも、この今の一部始終、体感にして1分かかったかな……? と思うくらい、すごく短く感じたのである。


「ほんと、無駄のない綺麗な動作だったねぇ〜」


 騎士様の動きを見つめていたルネ様も、感心した様子だった。


「な? 魔獣討伐騎士団は、腕が立つだろう?」


「そうね。しかも魔法の判断力もある、優秀な方たちで驚いたわ」


 シェリも安心した様子で、サラの問い掛けに微笑みながら答えたのだった。




 ────────────────



 その翌日、ついに魔法実技試験の本番を迎えた。


 チーム表を見た時には気づかなかったのだけど、私達のチームの順番は、まさかの大トリだった。特Aクラス自体の順番も1番最後だったけれど、チームまで最後になるとは。


 これじゃあ試験が終わるまで、本当に全然気が抜けないじゃないか……


 嫌な事は早く済ましてしまいたい派の私は、トホホ……と、落胆したのだった。




「うわぁ……な、何これ……」


 ようやく順番が回ってきた、私達……なのですが。


 スタート地点から少し歩いた所で、第1関門に絶賛対面中であります。


「初っ端からえげつないな」


 サラが呆れた様子で、ため息をついた。


 それもそのはず。私達の目の前には、通路を阻むように、鋭いトゲを持った頑丈そうなツタが蔓延(はびこ)っているのだ。到底、手や足で退かせそうにはない。


「1人1回、魔法を使わないといけないんですよね? そうなると、ここでは誰がやるのがいいんでしょうか……」と、ラウル君が首を傾げた。


「うぅん……ツタってなると、燃やすか、切るか……だよね?」


「はいは〜い。じゃ、ちょっと皆は俺の後ろにいてね?」


 ルネ様がニョキッと、私とラウル君の間に割り込んできたかと思うと、私達の肩に手をポンッと置いて、いい笑顔で颯爽と前に進み出た。


「え? ルネ様?」


 私の前に立ったルネ様に声をかけようとした時には、もう既に魔力を纏っていた。私は慌てて一歩後ろに下がる。は、速いな……



『刹那の如く、切り刻め 風の刃(ウィンドブレード)



 風の攻撃魔法をあっという間に発動させ、ツタを切り刻み、人が余裕で通れる程の通路が出来上がった。……のだけど、ルネ様の魔法はそれだけでは終わらなかった。


「か〜ら〜の〜」


 そう言いながらニコッと微笑んで、再び魔力を纏う。



『巻き起これ 塵旋風(ダスト・デビル)



 発動した風が切り刻んだツタを巻き込んで、渦巻き状に巻き上がる。ルネ様の指の動作に合わせて風が動き、刻んだツタが集まって、通路の端に積み重なったのだった。


 ……まさか片付けまで行うとは。


 魔法を軽々と巧みに使う、ルンルンと楽しげなルネ様である。


「効率的で、尚且つ素早いねぇ……」


「しかも刻んだツタも、キチンとまとめる辺りが、完璧ですね」


 ウンウンと頷きながら、ラウル君も話す。



「いやいや、これ一応試験だからね〜? こー見えて俺、本番はキチンとやるタイプなんだよ?」


 ルネ様はそう言ってため息をつきながら、クルクルと私の髪の毛を、もて遊んでいる。


 ちょ、癖っ毛なんで、余計に絡まるからやめていただきたいんですけど。ジトッとルネ様を見つめて、やんわり拒否をアピールする私である。



「そうよ、アリス、ラウル様。魔法の精密さだったり、必要な魔力量に抑えられているかを、罠を対処してる時に採点されているんだから」


 ミレーユからも解説をいただく。


「それに時間制限もあるから、進める所はどんどん進んだ方がいいわよね?」


「……確かにっ! 折角ルネ様が最速で片付けてくれたんだから、次に行こう!」


 髪の毛いじりの手からようやく抜け出せた私は、元気よく皆に、声をかけたのだった。


 次のエリアへと踏み出す私達。


 まだまだ試験は、始まったばかりだ……!




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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