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第77話 魔獣討伐訓練、見学します!

 



 合宿施設から出て、私達は森の入り口に足を踏み入れた。サクッと土を踏む足音が、森の中で響く。


 周りを見た感じは、普通の森と何ら変わりはない。太陽の光も葉の間から差し込んでいて明るいので、魔獣が本当にいるのだろうかとさえも疑ってしまう。


 ただ終わりが見えないくらい、森がずっと続いているように漠然と感じるのは何故だろうか。


 まるで、一度迷ったら二度と出られないよと、警告されているようだった。



「こんなに明るいのに、一瞬で闇に変わりそうな森……」


 思わず私は、ポツリと呟いた。


「ここは【深淵の森】と呼ばれているくらいだから、きっと奥に広がっているのよね。道を間違えないように気をつけないとだわ」


 キョロキョロと辺りを見渡して、ミレーユがそう話す。


「こりゃアリスちゃんとラウル君は、はぐれないように気をつけないとだねぇ」


「いやいや。流石にこんな所で、勝手な行動をするつもりはないから大丈夫だって……」


「僕も自ら危険に向かっていくほど、度胸はないので……」


 私とラウル君は、心外だ……と言わんばかりの感情を入り混ぜて、ルネ様にブーブーと反論する。


「まぁまぁ。必ずチームの誰かと一緒に行動していれば……多分、大丈夫よ」


「そうだな。アリスとラウルの2人は……ちょっと心配だから、誰かについてた方がいいと思うぞ?」


「アリスもラウル様も、入学式の時に迷っていたものね……」


 シェリ、サラ、ミレーユまでもが、順々に何とも煮え切らない言葉を漏らす。あれ、フォローかと思いきや、皆もルネ様と同意見なんだね……?



「大変。私達が思っている以上に皆に信用されてないみたいだよ、ラウル君……」


「みたいですね……試験が終わるまで気をつけましょう……」


 私とラウル君ががっくしと項垂れたのは、言うまでもない。




 ────────────────




「生徒の皆さん、遠いところまでご苦労様。私は王宮騎士団の魔獣討伐団長を務めるシモン・ノーヴェルだ。緊張しているだろうが、明日の試験頑張ってな」


 王宮騎士団の施設前に集合した私達生徒に、ノーヴェル団長が優しく声を掛けてくださった。流石団長、拡声の魔法を使わなくとも、よく通る声である。


「先生から話があったと思うが、今日はこれから各クラス毎に分かれて、魔獣討伐訓練の見学をしてもらう。規定の場所からの見学になるから、危険な事はないと思うが、先生達の指示はしっかり仰いでな。騎士団の連中も見学が来ると張り切ってるから、しっかり見ていってやってくれ」


 そう言って、団長はハッハッハと豪快に笑った。


「よーし、特Aクラス集まれ〜」


 皆、担任の先生の声かけで集まり、各々のクラス毎に移動を開始した。私達はグレイ先生の後をテクテクと付いていき、森の中に足を踏み入れる。暫く整備されている小道を歩いていたが、途中で道を逸れていく。


 うわ、道を逸れた途端、一気に森の中って感じだ……


 確かにこれは目印があったとしても、1人じゃ迷うかもしれない。皆とはぐれないように、注意しながら着いていく私なのだった。



 10分程歩いただろうか。少し開け放たれた空間が見える場所に辿り着いた。


「1、2、3…………30、よし、全員いるな?」と、先生が人数確認をする。


「ここから先は防御壁を越える事になるから、これ以上前には出ないように。薄く色付けされた防御壁になっているんだが、明るい所で見ると中々見えづらいから、柱に埋め込まれた魔法石と魔法石の間には、防御壁があると思っておけよ。あと、こっちからは何もせずに防御壁を通り抜けられるが、反対側からは規定の位置からしか出られないようになってるからな」


 よくよく見ると、木に混じって人工的な柱のようなものが立てられており、そこには魔法石がはめ込まれている。


 なるほど、ここから先の範囲が魔獣出現の可能性ありって事なのか。



「魔獣討伐訓練は、魔獣が現れるのと同じ状況下で、こうやって実際に森の中で討伐している。これ自体を魔獣討伐と言ってもいいんだが、訓練ではあくまで1人でも対応できるレベルの魔獣を相手にするってところが、実際の討伐とは異なる点だ。」


「討伐となると、もっと強い魔獣を相手にする時があるって事ですよね?」


 サラが先生に質問を投げかける。先生はその通りだ、と頷いた。


「今ナースズが言ったように、森の深層部に行けば行く程強い魔獣が出現し、魔獣の出現自体も増加する。つまり、危険が増すし、1人では戦えないって事だ。だから騎士団は必ずチームで行動して、森の深層部へ討伐に向かっている」


「先生。深層部にいる魔獣は、やっぱり教科書に載っているような肉食獣が主なんでしょうか」


「そうだな。魔獣の強さの度合いは、普通の動物と比例していると考えていい。聞いた話だと、ライオン、虎、ヒョウや狼の姿をしているのがいるらしいな」



 おぅ……?


 虎って深層部にいるんだ……となると、あの時出現した虎の魔獣って、中々強い個体だったのでは。私は思わず隣にいたシェリと、黙って顔を合わせたのだった。


「さーて、そろそろ訓練が始まりそうだぞ」


 先生の声掛けで私達はハッとなり、防御壁の向こう側をジッと見つめた。


 待機していた1人の騎士様が、ガサッと小さく動いた草むらに向かって、静かに魔法を放つ。



『刹那の如く、切り刻め 風の刃(ウィンドブレード)



 あ、これはフォルト様が特訓の時に見せてくれた、風の攻撃魔法だ。


 そう私が思っている内に、既に騎士様の魔法は発動され、草むらのとある一点を速いスピードで切り刻んでいく。



「ほぉー、蛙だったか。草むらもほとんど荒らさずに、ピンポイントで攻撃できてるな」と、先生が感心した様子で話す。


 放たれた魔法は、草むらを線状にまっさらにしており、その跡の先に残っていたのは、切り刻まれた蛙の魔獣の死骸だった。


 後ろから、ヒッと息を呑む音が聞こえる。ご令嬢方、確かに気持ち悪いかもしれないけど、倒れないように、気を確かに持ってくださいね……!


「距離を取って攻撃出来るという点においては、やっぱり攻撃魔法が便利だな。今のは警戒心の強い魔獣だから、敢えて距離を詰めずに、静かに魔法を発動させていたのが分かったか? ただ、攻撃魔法で致命傷に持っていくのが難しい魔獣もいるから、物理攻撃の方がいい時も勿論あるけどな」


「まぁどっちも使えるようにしておいたら、問題ないよな」


 目をキラキラさせながら、次はまだかと騎士様の動向を追うサラである。


「サラ嬢はビックリするくらい好戦的だよねぇ〜」


 うん、ルネ様。それは私も常々思ってます。




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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