第73話 前期試験 1
週が明け、いよいよ前期試験のスタートだ。
まず前半は、筆記試験が目白押しである。2日間にわたって【魔法学 入門】【歴史学】【語学】【魔法薬学】【魔法石学】の試験となる。
私達はようやくその筆記試験の2日目が終わり、教室で力尽きていた。まぁ、主に私とサラがなのだけどね?
「うぅ、疲れたぁ……ここ最近で、1番頭を使ったかもしれない……」
「ふふ、お疲れ様。とりあえず、今日で筆記試験は終了ね」
「さ、皆で見直ししましょ」
そう言いながら、ミレーユが意気揚々に、試験問題を再び開き始めた。
「うぉ……見直し、1番嫌いなんだよな……」
「サラ? こういうのは解いた後すぐにやっておいた方が、自分の為になるのよ?」
至極もっともな事を言うミレーユを、サラは悲しげに見つめていたのだった。……よっぽど解答に自信がないんだろうな……
かく言う私は、ちょっと語学の帝国語は心配だけど、それ以外の教科は手応えありだ。魔法関係はやっぱり学ぶのが楽しいから、スイスイ頭に入ってくるんだよね。
「明日は魔法薬学の実技ね。休暇中、何回かシミュレーションしたけれど、先生の前で作るのは緊張しちゃうかも」
シェリの何気ない一言に、私はピャッとなった。
実は休暇中フライングで、先生のいるところで作業してましたとは言えない私は、思わず顔も強張るものだ。
「ん? アリスは何でそんなへちゃむくれた顔してるんだ?」
「へちゃ!? べ、別に!?」
私はサラに指摘されて、顔をペタペタと触って、慌てて確かめた。そんな変な顔になっていたとは……!
「まぁ確かに、失敗しないか不安になるよな。言うて私は初歩中の初歩の物を作るから、余程の事がない限りは失敗しないと思っているけど」
「えっと、サラは何作るんだっけ?」
「ハーブティーの茶葉だ。ブレンドとかは詳しくないから、ベーシックな1種類の物を作る予定だ」
私は、ほうほうと相槌をうつ。
「となるとサラがハーブティー、アリスがアロマキャンドル、ミレーユが塗布薬、私がポプリって事ね? 皆、見事にバラバラになったわね……」
「そうみたいね。各々で頑張るしかないわ……ひとまず、落ち着いて本番に挑みましょ」
ミレーユの言葉に、私達は頷いたのだった。
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魔法薬学の実技試験は、作業用教室でクラスの人数を3つに分けて、順々に行なわれた。一気にクラス全員を見るのは先生も難しいもんね。
私は3番目の組だったので、クラス内では最後の組だった。教室に入り、指定されたテーブルに1人ずつ並んで立つ。
作業内容は人それぞれなので、完成次第、先生に提出して終了だ。尚、制限時間はあるので、時間内に完成しなかった際は、製作途中で強制終了となってしまう。
焦るのも良くないけれど、ゆっくりやり過ぎるのもダメって中々難しい……!
試験の順番は名前順だったので、隣のテーブルにはラウル君がいた。近くに友達が居てくれると緊張も解れる。私達はお互いによかったね、という思いで顔を合わせたのだった。
先生の声かけがあり、試験がスタートだ。私とラウル君は休暇中にやった手順をおさらいしながら、1つ1つ丁寧に作業に取り組む。
休暇の時に作ったアロマキャンドルと違う所は、蜂蜜の香りを追加する所である。
ただ、蜂蜜の香りは再現が難しいんだよね……
なので私は、普通に売られている蜂蜜を少量使う事をレポートに書き加えた。飾りで入れる予定のベルガモットの果実の皮を、薄く蜂蜜でコーティングしちゃうのだ……! 家でもう一度作った時も、それで失敗しなかったので大丈夫だろう。
工程にひと手間加える形となったけど、無事制限時間内に完成だ。アロマキャンドルの中に入れたカモミールの花や、ベルガモットの皮や葉も綺麗に配置できた。見た目も自分が納得のいく状態に出来て、満足である。ラウル君も問題なく完成していたようなので、よかったよかった。
「お、2人とも早い戻りだねぇ。お疲れ様〜」
早々とラウル君と一緒に教室に戻ると、そこには前のグループだった、サラとルネ様が残っていた。
「お疲れ様。2人は無事出来た?」
「あぁ。火力調整は自分の属性だから、だいぶ慣れていたし、特に問題なかったな」
「俺もいい香りのポプリ作ったよ〜 今度アリスちゃんにも作ってあげるね?」
ルネ様ブレンドのポプリか……何か、決してセンスを疑っている訳じゃないけど、すごい甘い香りで作ってそうで、ちょっと嫌だな……
「えぇ……? いや、私はシェリのポプリ貰う約束してるから、大丈夫。他の子にあげて?」
何なら争奪戦になると思うけど……?
「アリスちゃんにあげたいから作るのに〜 他の子には作んないよ? いちいち大変じゃんか〜」
「ルネ様の大変の基準が、いよいよ分かんなくなってきたんだけど……」と、私は小首を傾げた。
「一女子には作りたくないけど、仲のいいアリスになら、作ってあげたい気持ちがあるって事だろ?」
「あっ! 僕もアリス様に、今度塗布薬を作った時は、差し上げたいですっ!」
ハイッと手を挙げて、ピョンピョンするラウル君、可愛い。はい、優勝。
「うぅ、ラウル君ありがとうっ〜! 私も今度アロマキャンドルを作って渡すからね!」
「ラウル君が許されて、俺が許されないのって、ちょっと差別じゃない?」
ブーブーと口を尖らせて、不満げなルネ様である。
「例えルネがかっこよくても、あの2人の可愛さには敵わないだろ? まっ、そういうことだ」
サラはそんな様子を見て、ケラケラと笑ったのだった。
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